キリンジ(KIRINJI)の歌詞考察①
例えば、クラスの中でキリンジを知っているかと問うたならば、誰も縦に首を振ることはないだろう。学校中で訊くのならば、せいぜい一人か二人ぐらいだろうか。
ちょっと、数字で見ることにしようか。
2018年8月現在、代表曲『エイリアンズ』のYouTube再生回数は885万回。つまり、街で誰かに尋ねるとしたら、少なくとも885万人は視聴したことがあると答えるであろう。日本人で比べれば、1億分の885だ。
実際には外国人も観ているから誤差はあるけど、かなりの確率で知っていると答えることができるはずだ。
しかし、僕は今までキリンジのファンに会ったことは一度もない。なぜだろうか。ものすごく不思議だ。正直、もっと売れてもいいのに。結局マイナーなのかなあ。
元々キリンジは兄弟でのバンドであり、2013年弟:堀込泰行氏が脱退し、その後を兄:堀込高樹氏が五人でのバンド編成を組んで再スタートした。僕が聴いているほとんどの曲は、脱退前、兄弟で活動をしていた歌ばっかなので、最新のはこすったほどにしか耳にしていない。それだけ、弟さんの存在がものすごく大きかったというわけだ。
もう二人で同じステージに立つことはないのかと思うと、ものすごく寂しい。
キリンジの最大の魅力というのは、やはり歌詞なのではないのか。
例えば、先ほどの『エイリアンズ』は弟さんが書いたものであるのだが、これの解釈が人によって様々に分類されるのだ。
表向きは、兄弟が生まれ育った郊外の街を描いたもの。そこにある愛を語っているぜとなっているが、これが不倫の歌だとか、犯罪の歌だとか、ひどいのは神戸の少年Aの事件を示唆しているとか諸々。
まあ、別に人によって違う解釈が生まれるのは当たり前なので否定する気はさらさらないが、ヤス(弟)の曲でこれである。こんなの、まだかわいいほうだ。実は、もっと歌詞がひどいのは(誉め言葉)兄貴のほうなのである。
むしろ、ヤスが書いた『エイリアンズ』がここまで捻くれた解釈が出てくるのも、兄貴の影響がなかったとはいえないだろう。
そのjPOPとは思えない歌詞の一部がこちら。
ザクロを跳ねたら知らぬ存ぜぬで済むと思うな
逃げろよ、さあ
『Drive me crazy』
親父の通夜で絡まれる
『奴のシャツ』
女の子のヒップは白くて冷たい
『野良の虹』
ここら辺までは有名どころ。こっからさらにヒートアップ。
支店長がここから舞い降りたのか
『ダンボールの宮殿』
『地を這う者に翼はいらぬ』
君とママはどこかでディナー
「友達みたいな親子ね。」なんて言ってさ
笑わせるなっつうの!
『ハピネス』
ホルミウム タンタル ランタン イッテルビウム リチウム インジウム セリウム プロメチウム ビスマス ネオジム セレン ジスプロシウム リチウム ガリウム マンガン ユーロビウム
『都市鉱山』
ご覧の通り、歌詞を一目見誰もが一瞬、「おかしい」と思うであろう。最後のとかは、原子の名称の連呼でしかない。
だが、このままでは「どこに考察する要素があるの?」と訊かれそうだ。安心してください。こっからが肝です。
『ロマンティック街道』という曲を用いて説明しよう。もちろん、作詞は兄貴だ。
この曲の歌詞考察はすでにネットでも有名であり、今さら特筆すべきものではないのかもしれないが、初めてこの曲の裏側を聞いたとき、トンカチで殴られたような強い衝撃を覚えた。
それがこの一節。
ドレスもリングも
普通に考えれば、語り手、つまり主人公の「婚約者」が、共に結婚する「君」に対しての想いのように受けとることができる。
しかし、なぜわざわざ「婚約者」という回りくどいワードを使ったのだろうか。
答えは明白。主人公=婚約者じゃない。
つまり、「主人公(語り手)」「君」の他にもう一人「婚約者」という登場人物がいるってことだ。
登場人物を二人に見せかけて、実は三人いたっていう本格推理小説の技法を歌詞に兄貴は利用したっていうこと。
そうすると、ここの一節の意味が大きく変わってくる。
主人公は「君」に呼び掛ける。「婚約者待ってるよ。行かなくていいの?」と。
主人公=君 君=婚約者という見事な三角関係が成立している。そして、「君」の気持ちは「主人公」にあるのだけれど、「婚約者」と結んで立派な妻にならなければいけないんだと。
……いやー、面白いね。だって、聴く人の人間性が見れるというか、「え、そこ純粋に考えようよ」っていうところでもかなり深読みしてぶっとんだ発想をしてくる人もいるわけで。それが時に論理にかなっていたら滅茶苦茶楽しい。
本人たちからしたら、「お前ら勝手になにやってんだ?」っていう状況だろう。しかし、僕はやる。だって、楽しいんだもん! 特に下ネタを濁してくるような曲は大好物だ! お巡りさん、ここに変態がいます!
止まるんじゃねえよ状態です。
おまけ。
「ロマンティック街道」の中で、「躍りつづけよう 夜明けまでずっと」ていうのがあるんだが、この踊る、つまり「ダンス」を「性交渉」と置き換えるのならば……。
夜明けまでって、どんだけヤったんだよ笑。