この素晴らしき骸骨に祝福を   作:とし3

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この救い無き異世界へ侵略を

 「マジかよ、俺がガツンと言ってやろうか?そのアホ親父に」

 「水神の怒りと悲しみを込めたゴッドブロー!!!相手は死ぬ!を叩き込むべきですかね」

 「いや…流石に殺すのは不味いから、相手は死ぬは流石に不味い」

 

 危険度高い仕事をこなし大金を稼ぎながらアルシェが装備を更新しない理由、

 散々子供に苦労をさせてながら、未だ貴族であるかのように贅沢をし借金を重ねる事を止めないアルシェのダメ親父の話を聞いた〝フォーサイト〟の仲間達は静かに怒りを滲ませていた。

 

 「――待ってほしい、ここまで来た以上は私から言う。場合によっては妹達は連れ出す。」

 

 「妹がいるのか?」

 

 ヘッケランの質問にアルシェはこくりと頷く。

 三人はこの仕事を止めさせた方が良いのではないか?と顔を見合わせた。

 だがワーカーとしての生き方が、ここから先は余計なお世話だろうと皆の心にはあった。

 

 しかし神官であるロバーデイクは水神の教えを解き、優しくアルシェに言い聞かせる。

 

 「自分を抑えて真面目に生きても頑張らないまま生きても明日は何が起こるか分らない。

  なら、分らない明日の事より、確かな今を楽に生きなさい」

 

 「水神は言いました…何かの事で悩むなら、今を楽しく生きなさい。楽な方へと流されなさい。

  自分を抑えず、本能のおもむくままに進みなさい」

 

 もう少し自分の幸せを求めてもいいのだと、アルシェだけが苦悩しなくてもいいのだと、

 頑なに自分一人で全てを背負い込もうとする、不憫な少女に繰り返し繰り返し伝える。

 

 「ねえ、ロバー、前から気になってたんだけどさ?

  四大神に詳しくない私が言うのも何だけど、貴方の信仰って…」

 

 「水神ですが何か?」

 

 真面目な顔でロバーデイクはイミーナに回答する。

 

 「――でもあんな両親でも親は親、せめて最後の親孝行に」

 「…両親との良い思い出があれば教えて貰えますか?」

 

 その言葉を聞いてアルシェは何を言ってるんだろう?と思いつつ考える。

 

 「――?…!?…無い、ろくな思い出が無い」

 

 必死で思い出してもろくな思い出が無い…

 たしかに教育の機会を与えられ、帝国魔法学院に合格できた程度の恩はあっても、

 帝国魔法学院を自主退学させられた今ではそれも無いと言えるだろう。

 

 必死で良い思い出を探すアルシェを〝フォーサイト〟の仲間達は憐憫の目で見る。

 

 覚悟を決めたアルシェは仲間達を見つめて、黙って頷いた。

 引退も悪くないか…と考えていたヘッケランは、潮時かとイミーナに結婚を申し込みワーカーを止める事を決断した。

 

 ◆

 

 その晩、フルト家に強盗が入り込んだ、犯人はクーデリカとウレイリカの2人の姉妹を誘拐し。フルト家の家長を屋根から簀巻きにして吊るすと言う凶悪な事件が起こる。…だが執事や使用人達に目撃が無く、犯人は見つかる事は無かった。

 

 その後の〝フォーサイト〟は王国側に逃走し、ロバーデイクの提案で開拓団を率いて新村を作り、畑仕事をしながら地道に生きた。ミスリル級の腕を持つワーカーが村を守護し、高位の神官が駐在する村は移住者が殺到し順調に拡大していった。…その村で異端信仰が広まる以外は。

 

 水神を信仰するロバーデイクと、その信仰に感染…感化されたアルシェは今日も信仰する神に祈りを捧げる。

 

               「女神アクアの祝福を!」




この素晴らしきワーカーに祝福を!

このSSはこのすばとは関係ない短編集の所に別タイトルで置いてあったものを
移動しただけの物なので前に読まれた方が居るかもしれません、申し訳ないです。

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