この素晴らしき骸骨に祝福を   作:とし3

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あの至高なる仲間達に祝福を!

 …その後は大変だった。

 冷たく軽薄そうな女騎士が「痴漢とは女の敵め、許せぬ!」と乱入してきたかと思えば、

 突然赤面して息を切らしながら「そ、その魔法を私にもかけるがいい!」と言い寄ってきたり。

 

 上位物理無効化Ⅲがちゃんと働いているか試そうと、あえて攻撃を誘ってみたら、激情して斬りかかって来た女騎士の攻撃はダメージを無効化するのではなく、攻撃を避ける効果に変化しているようで、攻撃はモモンガの体に命中するでもなく周囲の机や椅子を破壊するに終わった。

 

 「はぁ…」

 

 更に悲劇は続く‥

 相手の動きを止めるため<恐怖のオーラⅠ>を放つと、女騎士は絶頂したように崩れ落ち。

 

 「くっ‥この邪悪なアンデッドめ…体は穢されようとも精神までは屈さぬぞ…

  さあ、やるがいい、エロ同人みたいに!エロ同人みたいに!!」

 

 と大声で叫んだせいで、周囲の女冒険者達の視線は汚物を見るような目になっていた。

 

 まあ、この手の騒動は日常的なようで、騒動が終わると冒険者達は「面白い見世物だったぜ!」と嫌悪感も敵対心も残さず無事に騒動が終わったのは幸いだったと思う…どんな日常だ!?

 

 

 その後、襲撃者は案内してもらった借りのあるカズマ達のパーティメンバーだと言う事で和解。

 ブチクサ文句を言っていた、自称女神(笑)と言う頭のおかしい青い女性も、世話になったお礼に飯を奢ると言った時点で容易に折れた。…どうやらかなりチョロいようだ。

 

 「あっははははははは、シュワシュワおっかわりー!」

 「あっ、こちらには蛙のから揚げをお願いします、もちろん大盛りで」

 「あの、キャベツの炒め物を…あぁ何か久しぶりにまともな食事な気が」

 

 モモンガのおごりと聞いたアクア達一行は、容赦なく飯を喰らう。

 モモンガは基本倹約家なのだが必要な経費はケチらない、今後を考えて投資と割り切る。

 

 「花鳥風月!もいっちょ花鳥風月!」「まーたそれか、もっと芸は無いのか駄女神!」

 「アクアの花鳥風月は何時見ても見事なものですよ」「うむ、私もそう思う」「そうですね」

 

 カズマ達のメンバーの飲めや歌えの騒動を、一歩離れて見ていたモモンガは感傷に浸っていた。

 

 「…仲間か」

 

 モモンガはボソりと呟く。

 思い出すのはアインズ・ウール・ゴウンの仲間達、そして共に過ごした栄光の日々。

 去って行った仲間達が残したナザリック地下大墳墓も今はもはや存在しない…はずだ。

 …俺は一人ぼっちだ。

 

 「あ、あの…モモンガさんは食事はされないんですか?私たちだけ頂いてしまって」

 「私は骸骨ですので食事は無理っぽいんですよ、お腹も減りませんし…お腹無いですけどね」

 

 ウィズが飲み物を持ってきてくれるが、体の状態を報告して断る…彼女はアンデッドなのに食事ができると言うのは羨ましい。飲食不要は便利だと思う反面、呪いだなとモモンガは感じていた。

 

 「先ほど仲間か…と聞こえたのですが、やはりアンデッドはこんな時、辛いですね。

  かつての仲間達が老いて去って行ってしまい、私だけが取り残されてしまいます」

 

 「…ええ」

 

 モモンガの場合は事情が少し違うのだが、その言葉に対しては激しく共感する。

 自分を置いていって去って行かれるのは、誰もが悲しいことだからだと感じたからだ。

 

 「ウィズさんは…それをどう乗り越えました?」

 

 「私は乗り越えられないから、この街で魔道具屋をやっているんです」

 

 覚悟を決め、同じ思いを過ごした先輩に解決策を聞く。

 すると彼女は少し悲しそうに、それでいてとても優しい笑顔で答えてくれた。

 

★ こ の す ば !

 

 飯を奢るだけのはずが何故か大宴会になり、酔いつぶれてしまったカズマ達を見て優しく笑う。

 手持ちのエリス硬貨全てと、お礼の言葉を書いたメモを残しモモンガは外に飛び出した。

 

 空を見上げると現実世界では見る事の出来ない、透き通った美しい夜空が見えた。

 ブループラネットさんが作り上げた夜空も美しかったが、これこそがブループラネットさんの求めていた本物の美しさなのだろうと実感する。…だが今のモモンガが見たい空はコレではなかった。

 

 スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを取り出し握りしめる。

 この杖がまだあると言うことは、ナザリックはまだ存在しているはずだ…

 だとしたらギルドの長であり、ナザリック地下大墳墓の主である俺は、俺だけは最後までそこで待たないといけない。…いや、そこにあるべきなのだと覚悟を決める。

 

 「仲間の居た所へ帰るのですね…」と声をかけてくれたウィズに黙って頭を下げる。

 

 《フライ/飛行》

 

 モモンガは飛行魔法を唱え空を駆ける、雲を突き抜け更に天を目指す。

 

 「天よ!俺をこの世界に落とした存在よ!俺を友の残した場所へと帰せ!」

 

 手を広げ、天に掲げるモモンガの指には1個の指輪が輝いていた。

 その名を【シューティングスター(流れ星の指輪)】と言う。

 

 これは超位魔法《ウィッシュ・アポン・ア・スター/星に願いを》を経験値の消費も無しで、性能もアップさせて3度も利用できる超々レアな指輪であり、かつてモモンガがボーナスを全部課金ガチャにぶち込んで引き当てた思い出の品だ。

 

 「頼む、指輪よ。I WISH (俺は願う)!」

 「俺を仲間と過ごしたあの場所へと帰してくれ!」

 

―――モモンガは輝く光に包まれ、この世界から姿を消した。

 




あと1話くらい…はなずです。

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