新型コロナウイルスの感染拡大が、世界経済に未曽有の危機をもたらそうとしている。
国際通貨基金(IMF)は、「大恐慌以来最悪の景気後退を経験する可能性は極めて高い」とする見通しを発表した。今年の成長率は、米国がマイナス5・9%、ユーロ圏がマイナス7・5%、日本はマイナス5・2%。世界全体ではマイナス3・0%で、リーマン・ショック翌年のマイナス0・1%を大きく上回る落ち込みになるという。
この予測は、感染の封じ込めが成功し、今年の後半には、外出制限などの経済活動の抑制を解除できるようになることを前提としている。感染拡大が長期化した場合、不況はさらに深まり、多くの国が財政赤字の拡大で、コロナ対策を十分にとれなくなる可能性も指摘した。
各国は先行きに対する楽観を排し、厳しい見通しに立って、対策をとる必要がある。
今回の危機が深刻なのは、不況脱出の牽引(けんいん)役が見当たらないことだ。リーマン後に4兆元の景気対策を打ち出して世界経済を引っ張った中国は、すでに働き手の数が減少に転じており、地方政府や国有企業は過剰債務を抱えている。いまや巨額の対策をとる余力は乏しい。
各国の政府は現在、自国内の感染拡大の防止と、国民の生活を守ることに精いっぱいで、他国のことまでなかなか手が回らないだろう。しかし各国が連携しなければ、この危機を乗り越えることはできない。かりに自国の感染拡大がいったん落ち着き、経済が上向いても、海外から第2波、第3波の感染に襲われる可能性もある。
その意味で、主要20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議が一昨日、途上国の医療態勢の整備を支援するため、債務の返済猶予を決めたことは歓迎できる。先進国だけでなく、大口債権者である中国とも合意したのは前進だ。
ただ、合意の有効性は、中国も含めた各国が債務猶予の状況を隠さずに開示することにかかっている。それには国同士の信頼関係が欠かせない。
感染拡大防止のためにいま、多くの国が外国からの入国を制限している。ロシアやカザフスタンなど、自国の備蓄を確保するために食料の輸出を制限する国も出始めた。
世界恐慌後、各国は関税引き上げやブロック経済化に走り、第2次世界大戦につながった。コロナ禍との闘いで国境管理が厳しくなり、各国の政策が内向きなものになり過ぎれば、国際協調を著しく傷つけてしまう。自由貿易の恩恵を被ってきた日本は、その危うさを率先して訴えるべきだ。
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