PDEMのブログ

新訂版序文の人のブログ

変数係数線型偏微分方程式の弱解の一意存在と正則性

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[弱解の存在証明]

任意のL:L^2(Ω)→D'(Ω), φ∈D(Ω)に対して, これらを固定するとき

L^2(Ω)∋u →〈 L[u], φ 〉∈R

はLに対する仮定とシュワルツの不等式よりL^2(Ω)上の恒等的に0でない連続線型汎関数であるから, リースの表現定理よりa∈L^2(Ω)が一意に存在してa≠0かつ

〈 L[u], φ 〉=〈 a, φ 〉

従ってa=ρが言えれば

∃u∈(L[・]^(−1))(ρ)=(L[・]−ρ)^(−1)(0)=:Ker(u→L[u]−ρ)

である.

〈 L[u], φ 〉=〈 ρ, φ 〉

は, u, ρ∈L^2(Ω) かつ φ∈D(Ω)⊂L^2(Ω) であることより意味を持つ. 上式から〈 L[u]−ρ, φ 〉= 0

任意のρ≠0に対してKer(u→L[u]−ρ)⊂L^2(Ω)の元uは上式を満たす. ゆえに弱解u=u_ρ∈L^2(Ω)⊂D'(Ω)が存在するとしたら, それは少なくともKer(u→L[u]−ρ)の元でなければならない. L≠0, ρ≠0だからKer(u→L[u]−ρ)≠{0}である.

∀φ,〈 L[u], φ 〉=〈 ρ, φ 〉, かつ

∀φ,〈 L[u], φ 〉=〈 a, φ 〉

を仮定すると a=ρ in L^2(Ω)だから以上より元u_ρ∈Ker(u→L[u]−ρ)が存在して, u_ρ≠0, u_ρ∈L^2(Ω),〈 L[u_ρ], φ 〉=〈 ρ, φ 〉を得る. (ρ=0の場合は例えばu_ρ=0とすればよい. )

[Ωが有界な場合の一意性の証明]

L≠0, ρ≠0のときu_ρ, v_ρがそれぞれ上記の方程式の弱解であるとすると

〈 L[u_ρ], φ 〉=〈 ρ, φ 〉,

〈 L[v_ρ], φ 〉=〈 ρ, φ 〉.

上の式から下の式を引いてLの線型性を使うと

〈 L[u_ρ−v_ρ], φ 〉= 0

φは任意ゆえ, 変分法の基本補題とLに対する仮定より

c(x)=0 ⇒ ∃C∈R, u_ρ−v_ρ=C in L^2(Ω),

c(x)≠0 ⇒ u_ρ−v_ρ=0 in L^2(Ω).

前者の場合, 仮定より(u_ρ−v_ρ)|∂Ω=0, 従ってC=0, ゆえにいずれにせよ u_ρ=v_ρ in L^2(Ω)を得る.


[Ωが有界な場合の弱解の正則性の証明]

Ωが有界なときD(Ω)は任意の自然数k≧0に対してソボレフ空間(H^k)_0(Ω)で(H^k)_0の位相について稠密だから, (H^k)_0(Ω)'=(H^k)_0(Ω)は, (H^k)_0関数によって定まる正則超関数全体の成す部分空間(H^k)_0(Ω)'=(H^k)_0(Ω)で(H^k)_0の位相について稠密である. D(Ω)の位相で連続な線型汎関数つまり超関数は(H^k)_0の位相でも連続だから, 弱解u_ρ∈L^2(Ω)は(H^k)_0(Ω)の元の列{u_n}_nでH^kノルム近似される. ゆえにu_ρ∈(H^k)_0(Ω)である. さらに, リース-フィッシャーの定理(L^p関数列がL^p収束すれば, その適当な部分列が殆んど至る所で各点収束すること)・エゴロフの定理(有限値可測関数列が測度有限な可測集合の殆んど至る所で各点収束すれば, 殆んど一様収束すること)・微分積分法における各点収束するC^1級関数列の導関数列の一様収束極限と微分の入れ替えの定理をこの順に(繰り返し)使うと, u_ρがΩで有限値のとき, u_ρを近似するD(Ω)の任意の列{u_n}_nに対して, D(Ω)の位相の定義と関数列がD(Ω)の位相で収束するならL^2の位相でも収束することから, u_ρに殆んど一様収束する部分列を取り出せるので, それを改めて{u_n}_nとすると, Ω上で殆んど一様収束極限

lim_(n→∞) L[u_n]=L[u_ρ]

が存在しΩ上で殆んど u_ρ∈(H^∞)_0(Ω)∩C^∞(Ω) となる. すなわち, 任意のε>0に対して或るΩに含まれる可測集合N_εが存在して, N_εのルベーグ測度<ε, かつu_ρ∈(H^∞)_0(Ω)∩C^∞(Ω−N_ε)

となる.