生命は神秘的な「渦(うず)」から始まることが判明
mathematics 2020/04/01

point
- 受精卵表面で起こる渦の仕組みは外部動力を必要としない自発的な渦だった
- 受精卵は自発的な渦によって、生命活動の第一歩を踏み出す
これまでの研究で、受精が起こると、受精卵の表面に渦のような構造が発生することが知られています。
上の画像は、ヒトデの受精卵の表面の渦を可視化したものです。
これらの渦は、受精のシグナルを受けた数十億ものタンパク質が、一斉に活動を開始することにより生じると考えられています。
またこの渦は受精卵のその後の発達にとって必須であり、渦が形成されなければ、受精卵は細胞分裂を始めることができません。
そのため受精卵から生命へ向けた最初の第一歩は、まさにこの渦によってはじまると言えます。
しかしこれまでは、受精卵上の渦がどのような物理現象に依存して形成されるかは不明でした。
ですが今回、アメリカの研究者たちによって詳細な可視化と数学的なモデリングが行われた結果、渦の仕組みが「位相欠陥」によって生じていることが明らかになりました。
位相欠陥は、ランダムな動きをしていた粒子が、外部的なエネルギーを必要とせず、自発的にパターンのある集団行動を始めるようになることを、数学的な言葉で言い表したものです。
位相欠陥を原理とした自発的な渦には、木星の大気の渦や、量子世界の粒子の渦運動など、様々なものが含まれています。ちなみに洗濯機の作る渦は外部の力によるので、自発的な渦とはいえません。
生命はなぜ自発的な渦を、発生のトリガーにしているのでしょうか?
研究内容はアメリカ、マサチューセッツ工科大学(MIT)のツァーハンタン氏らによってまとめられ、3月23日に権威ある学術雑誌「nature/physics」に掲載されました。
Topological turbulence in the membrane of a living cell
https://www.nature.com/articles/s41567-020-0841-9
https://www.nature.com/articles/s41567-020-0841-9