家賃が払えないどころか
病院にも行けない懐事情

全米最悪の感染者数、死者数を出しているニューヨーク。現地では会員制交流サイト(SNS)などで、「家賃をボイコットしよう」という呼び掛けが急速に広がっている。ニューヨークでは感染拡大防止策として、人の生命維持に関わらない店舗の営業停止や、市民の外出を禁止するロックダウン(都市封鎖)が行われている。ロックダウンで多くの人が仕事を失ったのは言うまでもない。ロックダウン期間が3週間に近づく中、ニューヨークでは生活に困窮する人が増えている。
特にこの地域特有の家賃の高さはネックだ。ある民間調査では「仕事がなくて今月の家賃が払えない」と答えた市民が40%にも達している。市民有志の間では、家賃や光熱費の免除・軽減措置を講じるよう地元政府に訴える署名運動が行われ、実際にニューヨーク州知事は90日間の家賃・光熱費の支払い猶予を決めた。
実は米国庶民の懐事情は、家賃どころか数万円のちょっとした緊急支出にも耐えられない状況にある。米連邦準備制度理事会(FRB)が毎年発表している国民の家計に関するレポートによると、「400ドルの緊急支出にどう対応するか」という問いに対し、「現金・貯蓄などで払える」と答えた人は全体の61%にとどまっている。
では現金も貯金もない人は、どうするのか?取りあえずクレジットカードを使って後日払う、借金する、高金利で悪名高い給料を担保にした小口融資を利用する……。そして「すぐには払えない」と答えた人も決して少なくないのだ。
こういったデータを見れば、仕事を失った人が家賃を払えなくなるのも不思議ではない。それどころか、新型コロナに感染して重症化したとしても、医療機関の診察を受けることすらちゅうちょしかねない。米国では日本と異なり医療保険への加入率が低く、いざというときに医療にかかると数万円、数十万円の高額負担が生じる。失業と健康への不安が広がる今、米国の国民に必要なのは「すぐ使える現金」なのだ。
