3月の米雇用統計の結果を
どう読み解くべきか

 では、4月3日に発表された3月の米雇用統計を、どのように読み解くべきなのか。

 米雇用統計で特に注目度が高い「非農業部門雇用者数」は、前月の27万5000人増からマイナスに転じ、前月比70万1000人減少した。雇用者数が減少に転じるのは9年半ぶりのこと。さらに、市場予想の10万人減を大幅に上回る落ち込みを記録した。また、失業率は前月比で0.9ポイントもの悪化となる4.4%という数字が出た。1カ月での上昇としては1975年以来最大の上昇幅で、こちらも市場予想3.8%を上回る悪化を見せた。

 東短リサーチの社長であり、チーフエコノミストを務める加藤出氏は「米雇用統計の調査期間と発表時期のタイムラグがあったにもかかわらず、悪い結果が出たのはネガティブサプライズ」だと解説する。

 前述の通り、米雇用統計は毎月12日を含む1週間に実施した調査の結果を原則として、翌月の第1金曜日に発表する。そして、その調査期間と重なる3月8~14日における失業保険の新規申請件数は28万2000件。328万件超という空前絶後の数値を記録したのは、その翌週である3月15~21日だったのだ。となれば、失業保険の新規申請件数が桁外れに跳ね上がったタイミングの厳しい雇用環境の実態が、3月の米雇用統計には一部しか反映されていない。それにもかかわらず、市場予想よりを大幅に上回るネガティブな数字が出たことがサプライズというわけだ。

 ただし、本稿執筆時点の4月3日22時時点では、マーケットは比較的冷静な受けとめ方をしているようだ。実は、似たような現象は直近でも起きていた。失業保険の新規申請件数が2週連続で過去最多を大幅に更新した際も株価は上がっていたのだ。2.2兆ドル規模の超大型景気対策法案が成立したことや、サウジアラビアとロシアが原油の減産に動くことを示唆するドナルド・トランプ米大統領のツイートを受けて原油相場が急上昇したことなどを投資家がポジティブに受け止め、より材料視したためとされる。

 今回の米雇用統計の結果についても、「思ったよりは早めに雇用情勢の悪化が織り込まれた数字ではあったものの、『本番はこれから』ということでマーケットはあまり材料視していないようだ」(加藤氏)という。

 つまり、今後も毎週発表される失業保険の新規申請件数をウオッチしながら、5月に発表される4月の米雇用統計まで、真の「雇用崩壊」の衝撃に身構える必要がありそうだ。

 では最後に、米雇用統計を読み解く際に注目すべき4指標と、自らホームページで基データを確認するための方法をお伝えしたい。