米雇用統計が重要視される
三つの理由

 コロナショックが起きる以前から米雇用統計が重要視されてきた三つの理由を知れば、今回いつも以上に米雇用統計が注目されていた理由も分かる。

米雇用統計が重要である理由(1)
世界経済の先行きを把握できる

 世界銀行の資料によると、世界の国内総生産(GDP)は約86兆ドル。その4分の1弱を占めるのが世界第1位の経済大国である米国で、GDPは約20兆ドルだ。そして、その米国のGDPの68.1%を占めるのが、約14兆円に上る個人消費支出となっている。つまり、世界のGDPの16.3%を占めるのが、米国の個人消費というわけだ(データはいずれも2018年)。

 となると、米国の個人消費の動向を占うことができれば、世界経済の先行きを一定程度把握できるといえる。そして、その個人消費と密接な関係にあるのが、雇用者数や失業率、賃金、労働時間などの調査結果を網羅する米雇用統計なのだ。

米雇用統計が重要である理由(2)
他の経済指標よりも速報性が高い

 米雇用統計は、速報性という観点でも優れている。

 経済指標といえばGDPが最も代表的だが、四半期ごとに、期が締まってから約2カ月後の発表となる。一方、米雇用統計は毎月12日を含む1週間に実施した調査の結果を原則として、翌月の第1金曜日という極めて早いタイミングで発表している。

 そのため、景気の変化をタイムリーにつかむのに非常に適しているのだ。

米雇用統計が重要である理由(3)
米政策当局者が結果に注目している

 これまで説明してきた「重要である理由」を背景に、米連邦準備制度理事会(FRB)など米国の政策当局者が米雇用統計の結果に注目している。FRBは連邦準備法で「物価の安定」と「最大の雇用」が使命と定められているからだ。

「物価の安定」を実現するには賃金や労働時間を、「最大の雇用」を実現するには雇用者数や失業率をウオッチすることが必要不可欠となる。

 となれば、米雇用統計の結果によって金融・財政政策のかじ取りが決まると連想されやすくなるため、市場関係者の注目もがぜん集まる。米雇用統計の結果をどう受け止め、今後の金融・財政政策をどう読み解くかが、マーケット参加者の腕の見せどころというわけだ。