感染のリスクをおかしても
働き続けるしかない人々
――ジニ係数が高い都市はあらかじめ、新型コロナで大勢が死ぬかもしれないと警戒して、対策を講じる必要があるというのですね。

そういうことです。経済的な難しさを抱える人は、健康状態が悪いだけではありません。ほかにもいくつも新型コロナに対する弱さを抱えています。
まず、感染の可能性そのものが高い、という悲劇的な事実があります。多くの都市がロックダウン(都市封鎖)しましたが、オフィスで働くホワイトカラーの労働者は在宅勤務が可能です。しかしサービス業や製造業で働く人は、物理的に店や工場に出勤しなければならない。つまり働き続けるためには、感染するリスクを取り続けるしかないのです。
またロックダウンによる経済停滞で、一番失業者を生んでいるのが飲食や小売り、つまりサービス業です。米国では失業は、収入がなくなるというだけでなく、健康保険の喪失をも意味します。3分の2以上の人が勤務先の企業から保険を提供されています。ですから失業すると、自己負担で健康保険に参加するか、または無保険の状態に陥るのが基本です。
――無保険の人は、米国にどれぐらいいますか。
国民の1割程度です。この数はトランプ政権の下で増加しています。高齢者はメディケアというシステムに参加していますが、国民皆保険(国民全員が公的医療保険に加入する制度)がある日本に比べると、医療のセーフティーネットがまったく整備されていない状態です。
「新型コロナみたいだな、ちょっと体がおかしいな」と気づいた場合、外来診療に行くこと自体は無保険でも可能です。しかし現実的にそれを選択できるかというと、なかなかハードルが高い。米国の医療費は、仮に保険に加入していても非常に高額です。例えば歯医者で治療を受けただけでも、300~400ドル(約3万2100~4万2800円)かかります。
一方で米国の家庭では、預金が400ドルに達しないところが多い。病気のような緊急事態で400ドルを支出できるかという質問をすると、多くの人ができると答えられていない。無保険で貯金もないという経済的に困難な人たちが、新型コロナでもぎりぎりまで病院に行くのを我慢し、病状を悪化させることは容易に想像できます。