「どうやったらマスクの需給バランスが安定しますかね。小売りサイドでまっとうに値段を上げてもらえれば、ちょっとは落ち着くんじゃないでしょうか」
コロナの感染拡大が深刻化してからというもの、経済産業省の担当者たちはマスク等の販売状況を探るため、ドラッグストアの幹部の元にヒアリングに回っているのだが、2カ月ほど前には雑談ベースでこんな“提案”が半ば真面目にされていたという。
提案を受けたドラッグストアの担当者が、「そんな恐ろしいことできません。どうしてもやれというならば、経産省主導の価格統制を公式に指示してください」と切り返したところ、くだんの経産官僚が断固拒否したのは言うまでもない。
マスクは全ての事業者を疲弊させる
需給バランス適正化の“処方箋”とは
一方のマスクはなぜ儲からないのか。
実はマスクは、ドラッグストアにとって実入りのいい商品だった。風邪や花粉症患者の必需品であり、値下げの必要がないこともあって、粗利率は数十パーセントを確保できていたとみられる。
ところが、いまやドラッグストアはマスクでも稼げなくなることを覚悟しつつある。仕入れ価格が値上がりしてきているのだ。
「マスクに関わっている事業者は、製造会社も流通事業者もみんな苦しい」(マスク業界幹部)。そもそも、少なくとも今、まともなマスク関連事業者で“マスク特需”の恩恵を全面に受けているところは、まずないといっていい。

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マスク製造に関しては、コロナ感染者が増加した中国で一時、製造・流通が滞り、中国に生産を委託していた日本のマスクメーカーの供給能力が鈍ったことは事実である。ただ、経産省が設備投資に対する補助金を用意し、これに呼応する形でシャープなどの異業種も生産に参入したことで、3月末には国内全体で月産4800万枚の増産にこぎ着けている。
しかし、日本の総人口は1.3億人もいる。月6億枚の供給量を確保したところでマスクはまだ足りず、マスク関連事業者はどこも今なお、24時間・休日返上でせっせと工場を動かし続けている状態だ。