ブランド淘汰が進む中、“勝ち組”とされるのはキリン「本麒麟」だ。3月の販売数量は前年同月比で31%増となり、13カ月連続で前年実績を超えている。本麒麟の牙城を崩すため、各社は相次いで新商品を投入するものの、一筋縄ではいかない状況だ。

 また新ジャンルと同様に各社が注力するのが、RTDカテゴリー。RTDは「Ready to drink」の略で、レモンサワーやハイボールといった、アルコール度数9%以下の缶商品を主に指す。

 RTD市場は、19年まで12年連続で成長しており、20年に入ってからも前年同期比で約1割増の伸びを見せている(インテージ調べ、販売金額ベース)。3月も同1割増と堅調で、コロナで落ち込む業務用市場の“受け皿”としての存在感を発揮したいところだ。

買いだめの恩恵を受けない酒類メーカー
不振からの脱却は飲食店に懸かっている

 スーパーなどの小売店では、食料品や日用品の買いだめが行われ、食品メーカーが“特需”に沸いている。しかしビールメーカーはその恩恵を享受できていない。ビールから安価な新ジャンルやRTDに需要が移ったことで、販売数量を維持できたとしても、販売金額は維持できないのだ。

 インテージの調査によれば、スーパーやコンビニなどの小売店で、3月23~29日の1週間のビール・発泡酒・新ジャンルを含んだビール類全体の売り上げは、前年同期比94%(販売金額ベース)。コロナ騒動前の1月6~12日も同96%と減少傾向だったが、ビール離れと安価な酒類に流れる傾向は加速している。

 ビールメーカーの命綱は業務用ビールだ。気温が上がり稼ぎ時となる夏場まで、現在の状況が続けば、業績への大打撃は避けられない。

 飲食店の営業が正常化し、「取りあえず、ビール!」の掛け声が全国各地から聞こえるまでは、ビールメーカーの苦境は続く。

Key Visual by Kaoru Kurata