更新:2020年3月
日本国籍について国際結婚家庭の子供の国籍が何かは、父母のそれぞれの国の国籍法の規定によります。出生と同時に父母のそれぞれの国の国籍を取得し、重国籍となる場合が多いです。また、出生時に国籍属地主義を採っている国(アメリカやカナダなど)で生まれれば、出生地国の国籍も取得することになります。後者の場合は、国際結婚家庭でなくても取得することができます。ただ、出生と同時に取得した二つの国籍(または三つの国籍を含み、以下「重国籍」という)は、各国の国籍法によりそのまま一生保持することができる場合もあれば、制限を受ける場合もあります。
日台間の国際結婚家庭の子供の場合は、両国とも国籍の取得について、属人主義で父母両系血統主義を採用しているので、親の国籍をそれぞれ取得することができます。即ち、台湾(中華民国)と日本の国籍を出生と同時に取得することができます(戸籍上有効となるためには、出生届けの提出が必要です)。中華民国の国籍は出生届けを提出すれば、たとえ外国籍があったとしても、国籍喪失手続をしない限りは喪失することがありません。日本の国籍については、重国籍について制限があります。以下の説明は重国籍になった子どもの日本国籍の取り扱いについてです。
日本国籍の取得と国籍留保届の提出
出生届で国籍取得:日本では1985年の国籍法改正施行以後、父母両系血統主義を採用し、出生時に父又は母が日本国民であるとき、その子は日本国民とするとしています(国籍法第2条1項)。従って、国際結婚家庭の場合、父あるいは母が日本国民であれば、その子は出生により日本国籍を有することになります。但し、出生届の提出が(日本国内出生者は14日以内、国外出生者は3ヶ月以内)必要です(戸籍法第49条)。
海外出生者は国籍留保届の提出:日本国外で生まれ、国際結婚家庭やアメリカ、カナダなどの属地主義国での出生などにより外国国籍を取得した場合は、国際結婚家庭又は両親とも日本国籍であるかを問わず、出生後3ヶ月以内に「国籍留保届」を提出しなければ、日本国籍を失い日本人の親の戸籍にも記載されません。(国籍法第12条) 「国籍留保届」の提出は、「出生届」のその他の欄に国籍を留保する旨を記載すれば足ります。「出生届」は、出生証明書(日本語訳を添付)と共に日本国民である親の本籍地戸籍課に提出します。郵送で提出できますが、代理人が提出する場合は、委任状が必要です。出生届提出後、戸籍謄本を取寄せ記載事項に誤記がないか確認したほうがよいです。
【注意】「出生届」(国籍留保の届出を含む)を日本の親族が提出したが、委任状がなく、戸籍課の窓口で預かり扱いとなり、受理されていなかったケースでは、気付いた時点で3ヶ月を経過していたため、日本国籍を取得できませんでした。このような場合は、20歳までに日本に住所を有し6ヶ月以上居住すれば、届出により日本国籍を取得することができます(国籍法第17条)。 国籍の選択について国籍の選択:出生時に重国籍となった国際結婚家庭の子供はそのままでは法律上は国籍が保持できません。22歳に達するまでにどちらかの(或いは日本)国籍を選択する必要があります(もう一方の外国籍の国の国籍法により選択すべきかが決まります)。そして選択しない場合は、日本国籍を失う可能性があるというのが、国籍選択制度です。
日本「国籍法」第14条第1項:外国の国籍を有する日本国民は、外国及び日本の国籍を有することとなった時が20歳に達する以前である時22歳に達するまでに、その時が、20歳に達した後である時はその時から2年以内に、いずれかの国籍を選択しなければならない。 同第14条第2項:日本の国籍(の選択)は、外国の国籍を離脱することによるほかは、戸籍法の定めにより、日本の国籍を選択し、かつ外国の国籍を放棄する旨の宣言(「選択の宣言」)をすることによってする。 同第16条1項:選択の宣言をした日本国民は、外国の国籍の離脱に努めなければならない。 国籍を選択しなければならない人とは:(以下法務省のパンフレットより)
①日本国民である母と父兄血統主義を採る国(エジプトなど)の国籍を有する父との間に生まれた子。 ②日本国民である父または母と父母両系血統主義を採る国(台湾、フランスなど)の国籍を有する母または父との間に生まれた子。 ③日本国民である父または母(或いは父母)の子として、生地主義を採る国(アメリカなど)で生まれた子。 ④外国人(カナダなど)父からの認知、外国人(イタリアなど)との養子縁組、外国人(イランなど)との婚姻などによって外国の国籍を取得した日本国民。 ⑤帰化または国籍取得の届出によって日本の国籍を取得した後も引き続き従前の外国の国籍を保有している人。 国籍選択届制度についての参考サイト: 法務省民事局: 国籍を選ぼう~重国籍の方へ~
Q選択は台湾か日本か?: 日台間の国際結婚家庭の子女の場合、「国籍の選択」とは、台湾か日本かのどちらの国籍を選ぶという意味ではありません。台湾の中華民国国籍は自ら喪失の手続きをしない限り自動的に喪失することはないため(未成年者は親の国籍喪失に付随して国籍喪失できるのみ)、日本国籍を選択するかどうかだけ考えればよいということになります。国によっては、日本の国籍を選択することで、自動的にもう一方の外国籍を喪失する場合がありますが、台湾についてはその心配はありません。従って日本国籍の選択により従来どおり台湾と日本の重国籍状態が継続します。 Q選択の宣言とは?: 「国籍選択届」には国籍選択宣言の欄に「日本の国籍を選択し、外国の国籍を放棄します」と記載されていて、外国国籍を記入して署名押印しなければなりません。 そこで外国の国籍を放棄する必要はないのか?という疑問がでます。この外国籍の放棄は、努力義務と考えるべきで、外国籍を放棄しなかったとしても、罰せられる性質のものではありません。実際罰則も有りません。従って国籍選択制度の適応を受ける日本国民は、選択の宣言をしたことにより、外国国籍を同時に喪失しなければならない訳ではありません。従って、「外国国籍放棄証明書」の提出は必要ありません。 Qいつ提出するか?: 期限内であればいつでもできます。すなわち、22歳までであればいつでも選択できます。従って、子供が成人するのを待つ必要はありません。早ければ、出生届(国籍留保届)と同時に提出することも可能です。 Qだれが提出するか?: 子供が15歳以上であれば本人が届出なければなりませんが、15歳未満の場合は、親が提出できます。この場合には、両親のそれぞれの署名押印が必要です。 日本国籍法第18条:…選択又は離脱をしようとする者が15歳未満あるときは、法定代理人が代わってする。 Qどこに提出するか?: 戸籍のある市区町村役所戸籍係に提出します。通常郵送でも受付けてくれますが、「直接窓口」に届けるように指示している所もありますので、ご確認下さい。国籍選択が確かになされたかどうかは、後日戸籍謄本を入手して確認することをお勧めします。 国籍選択届用紙のダウンロード:札幌市のサイト Q日本で出生した場合は?: 重国籍者すべてが国籍選択の対象者です。特に海外出生の重国籍者には、留保届により国籍留保が戸籍上記載されていますので、日本国籍を確保するためには国籍選択が必要です。日本で出生した場合は戸籍上に特別な記載がありませんが、台湾に永住しており、戸籍上では両親のどちらかが外国人であることが明記されているので、重国籍である可能性が高いと推測されます。そこで当会では、日本国籍を失うリスクを避ける為に、戸籍窓口に確認する、或いは選択届を提出するなどをするよう勧めています。日本生まれを理由に選択届を受理されなかったケースもあれば、受理されたケースもあります。 Q「国籍選択届」を提出しなかったら?: 22歳を過ぎても「国籍選択届」を提出しない場合は、法務省から催告が戸籍地住所になされます。催告後1ヶ月以内に届出れば問題ありません。提出しないと日本国籍を喪失するというのが法律上の規定です。但し、政府側の国会での答弁ではこれまでに法務大臣が催告を出したことは無いと述べています。(2004年6月2日現在の答弁) ★もう一つの考え方:当会ではこれまで、日本国籍を確保するという観点から、国籍選択届けの提出について説明してきました。ただ、実際の法務省での取り扱いは、催告が一度も発せられたことがないとのことであり、また22歳を過ぎても国籍選択届けの提出はできるようであり、更に提出していない場合でも日本国籍を喪失していないという現状を見ると、もう一つの考え方が出てきます。即ち、国籍選択届けを提出しないという方法も考量できるということです。いろいろな考え方があることを皆さんに知ってもらうために、国籍選択届けにつき、法務省の取り扱いの現状や国籍法の改正の動きなどもぜひ知って頂いた上で、子供の重国籍につきどのように対応するかを決定して頂きたいと思います。以下の特集記事も併せてご参照下さい。「特集:国籍法改正請願署名活動の現状と国籍選択制度の実態について」(2011年6月20日付け「居留問題を考える会」リポートより) Q「国籍選択届」提出後は、絶対に日本国籍を喪失することはないのか?: 台湾の公務員として重国籍が認められない職位(総統、副総統、立法委員、行政院部長級など)に就任したときなどは日本国籍を喪失することもあります。また、台湾の国籍法第10条には、外国籍を有するものに対して一定の公職の就任禁止が規定されています。 日本国籍法第16条2項:法務大臣は、選択の宣言をした日本国民で外国の国籍を失っていないものが自己の志望によりその外国の公務員の職に就任した場合において、その就任が日本の国籍を選択した趣旨に著しく反すると認められるときは、その者に対し日本の国籍の喪失を宣言することができる。 Q第三国の国籍との関係は?: 選択届提出後に、第三国に移住してその国の国籍を取得した場合、日本の国籍を選択して重国籍になっていたとしても、第三国の国籍取得は自らの意思で取得したことになり、第三国の国籍を取得した時点で日本の国籍を喪失します。日本と台湾に加えて、カナダやアメリカで出生して国籍を有する場合は、日本の国籍選択届けの提出で三重国籍が確実にできますが、移民により取得した場合は、反って日本国籍を喪失することになります。 二つのパスポート
パスポートの使い分け:
二重国籍である子供で二つのパスポートを所持している場合は、そのパスポートの使い分けについては、法務省及び外務省によると、台湾での出入国には台湾のパスポートを使用し、日本での出入国には日本のパスポートを使用するよう指導しています。従って、もし台湾のパスポートで日本へ入国し、日本で日本のパスポートを取得しても、その日本のパスポートで日本を出国することは避けるべきです。
Qパスポート申請書の「外国人(外国)との身分関係」とは?: 日本のパスポート申請書に外国との身分関係を記入する欄がありますが、外務省によると、外国国籍の取得などによって申請者の日本国籍に変動がないかを確認する為のものだとのことです。台湾に帰化した会員によると、該欄に台湾と記載して問題なくパスポート更新ができたとのことです。
国籍法改正請願運動
日本の国籍選択制度は、国籍に関する不公平な制限であるため、廃止を求めて、2001年より日本の「国際結婚を考える会」(AMF)が国籍法改正請願活動を行っています。当会は2003年から支援協力し、議員訪問や法務大臣への要望書の提出などを行ったことがあるほか、毎年署名を集めてAMFに送っています。どうぞ皆様もぜひ署名にご協力お願いいたします。詳細や署名方法については、以下のウェブサイトをご覧下さい。
国際結婚を考える会:国際結婚を考える会/請願運動
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