いやいや、加熱式たばこなら大丈夫なのでは――。そう期待をかけても残念ながら無駄である。加熱式たばこは発売から日がたっていないため、がんとそれを吸った人間の直接の関連を示すデータはないが、加熱式たばこは有害である可能性が高い。「加熱式たばこには複数の発がん性物質が含まれており、動物実験では加熱式たばこで肺がんが増えたという研究結果があります」(津川氏)。
米国では電子たばこの使用による肺障害であるEVALI(たばこ製品の使用に関連する肺傷害)について、19年の12月までに入院を要した症例が2291人、死亡症例が48人報告されているという。日本で発売されている加熱式たばこは、この電子たばこよりも有害だといわれており、今後同じような被害が日本でも報告される可能性があるのだ。
【運動】
全身を使った運動で
がんになりにくくなる
運動はやはりした方がいいのだろうか。21の研究をまとめたメタアナリシスによると、最も運動していたグループは、最も運動していなかったグループに比べて大腸がんになるリスクが27%低いことが判明しており、別の研究でも、大腸がんになる前の大腸ポリープができるリスクを15%下げることが分かっている。

津川友介、勝俣範之、大須賀 覚 著
本体価格1500円
また、米国カリフォルニア州の女性教師を対象にした研究では、運動している人ほどエストロゲン受容体陰性というタイプの乳がんになるリスクが低いことも判明している。日本人8万人を対象にした調査では、運動をしている人はしていない人に比べ、男性では大腸がん、肝臓がん、膵臓がんになるリスクが低く、女性では胃がんになるリスクが低いというデータも出ている。
では、どういう運動が良いのか。良いといわれているのは「有酸素運動と筋肉トレーニングの併用」だ。米国保健福祉省のガイドライン(18年)によると、健康維持のために必要なのは、「週に150~300分間の中強度の運動、もしくは週75~150分間の高強度の有酸素運動」と「週2回、身体中の主な筋肉を使うトレーニングをする」ことだという。
食事に気を付け、飲酒、喫煙を慎み、適度な運動をする――。なんとも味気ない話かもしれないが、これががんになりにくい体をつくる最高の処方箋なのだ。
津川友介(つがわ・ゆうすけ)/カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)助教授、日本医療政策機構理事、医師。東北大学医学部卒業、ハーバード大学博士(PhD)。著書に『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』ほか。
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