
最後に成分についても解説しておこう。緑黄色野菜や果物をたくさん摂取する人に胃がんや大腸がんが少ないことから、一時βカロテンがブームになった。しかし、現在では、βカロテンだけをサプリメントとして服用すると、むしろ有害だということがエビデンスにより判明している(実際の研究ではβカロテンとビタミンAのサプリメントを併用していた)。
例えば、ぼうこうがんの発症率を約50%高め、肺がんや胃がんのリスクを10~20%増加させるというメタアナリシスがあるのだ。また別の研究では、死亡率も7%増加したと報告されている。特定の成分だけを摂取するのではなく、体に良いものを丸ごと食べることが大事なのである。
【たばこ】
禁煙に手遅れなし!
明確な肺がんリスク低下
スモーカーが肺がんになりやすいということは、よく知られているだろう。たばこを吸うことで発がん性物質が体内に取り込まれ、遺伝子異常を起こし、それが蓄積され、やがてがんになる。信頼性の高いエビデンスでも、ヘビースモーカーが肺がんになるリスクは30%であるのに対し、非喫煙者の肺がんリスクは1%に満たないことが分かっている。
しかし、だからといって「今さらたばこをやめても手遅れだ」と諦めてはいけない。喫煙者だった人も15年間禁煙すると、肺がんになるリスクが80~90%も下がったという報告がある。また、20万人のデータ解析によると、喫煙者が禁煙した結果、余命が6~10年延びると推定されている。
さらに複数の研究を統合したメタアナリシスでは、すでに肺がんを発症した喫煙者についても、喫煙を続けた人とそうでない人を比べると、喫煙し続けた人は死亡率が約3倍になり、再発率も2倍高かったという。喫煙者であっても遅くはない。できるだけ早くやめた方がよいのだ。