日本食は健康にいい――。何となくそんなイメージを持っている人は多い。だが、実はその科学的根拠は弱く、「日本人の長寿の理由が食であるかどうか、はっきりしたことは言えない」と津川氏は言う。長寿の理由は遺伝子、運動習慣、行き届いた公衆衛生、高い教育水準などが考えられるからだ。

 なお、40年には日本の平均寿命は、地中海食を食べるスペインに抜かれると推定されており、分が悪い雲行きである。

 そうはいっても、ヨーロッパの人々とは人種や遺伝子が違う。日本人には古来の食べ物がある。「日本人が地中海食を食べても、効果はあまりないのでは?」と思われるかもしれない。

 だが、津川氏によれば「食事の健康に対する影響が、人種や遺伝子などによって異なるというエビデンスはありません。各国の専門機関はそろって“遺伝子を根拠にした食事療法にはエビデンスがないため推奨しない”という声明を出しています」。

 日本人は農耕民族であり、腸の長さが違うといった諸説にも、科学的根拠はないというわけだ。オリーブオイルやナッツ類などは日本古来の食品ではないが、やはり健康にいいと考えていい。

 ただし、注意点がある。野菜や果物は、加工されたピューレやジュースでは意味がない。果物としてのオレンジを取っても糖尿病のリスクは上がらないと考えられる一方で、オレンジジュースの方は糖尿病のリスクを上げるというデータがある。糖質の含有量は同じであるにもかかわらずだ。

 野菜ジュースについては、いいか悪いかというエビデンスそのものがない。野菜や果物に含まれる栄養素や繊維を成分として取ればいいのではない。「あくまでも食品で丸ごとを食べることが大切」というのが、データの示すホントであることを改めて心しよう。