ところが、「低脂肪食を食べていた人と高脂肪食を食べていた人をランダムに比較した研究では、どちらも体重の変化に差がないことが明らかになりました」(津川氏)。低脂肪食は必ずしも痩せる食事ではなかったのだ。
では、炭水化物はどうだろう? 「アトキンスダイエット」「糖質制限ダイエット」「ケトン式ダイエット」「低炭水化物ダイエット」などいろいろあるが、今、はやりの炭水化物の量を減らす食事法は、本当に痩せられるのだろうか。

11年に発表された米ハーバード大学の研究では、米国人約12万人を12~20年間追跡調査。その結果、パンやパスタなど、精白した小麦粉のような「白い炭水化物」を取っている人は体重が増えているのに対し、精白しない全粒粉のパンや玄米、そばなど「茶色い炭水化物」を取っている人は体重が減っていることが分かった。
同じ調査では、野菜や果物、ヨーグルトを食べた人も体重が減っていた。その逆に、ジャガイモ、牛や豚などの肉、炭酸飲料など糖分を含む飲料、フルーツジュースなどを取っていた人は体重が増えていた。なお、正確には、この研究ではこれらを食べると体重が増える(あるいは減る)とはいえない。いえるのは「体重が増えた(減った)人はこれらの食品を食べていた」というところまでだ。
ちなみに別の研究で、バナナやリンゴなどの「糖質の多い果物」であっても、摂取量の多い人ほど体重が減っていることが分かっている。また、ジャガイモは野菜ではなく白い炭水化物に分類されるのでその点も注意したい。
ちまたで定着したかのような炭水化物を減らすダイエットについて、津川氏は「炭水化物を減らした代わりに何を食べるか。そこの指導が往々にして間違っている」と指摘する。炭水化物さえ減らせば、ステーキでも焼き肉でも何でも食べてよい、などというのは大間違い。体重の増加はもちろん、動脈硬化のリスクも高める。
なお、人工甘味料のダイエット飲料は体への悪影響の可能性が否定できないため、できるだけ控えるのが無難のようだ。