詰め替え用で急場をしのごうという向きが増えているのか、いまやタンク等に付けるコック(流路の開閉等を行う活栓)も足りなくなってきている状態だ。どんな形態で消毒液を供給するにしても、容器関連製品は奪い合いだと考えていい。

 だからこそ本来、消毒液メーカーは、消毒液の需要が爆発する前の1月ごろには、部品を輸入に頼る容器が不足することを見越して容器の地道な確保に動いていなければならなかった。

 しかし、「消毒薬メーカーは、新型インフルエンザのときの痛い経験があった上、コロナを甘く見ていた節があり、今回は初動が遅れたところが多かった。あまりにも容器の発注が少ないから、容器メーカー側が『本当にそれだけでいいのか』と“進言”していたくらいだ。それでもしばらくはどこも大量発注に及び腰で、結局、『需要に供給が追い付かない。容器をどんどん回してくれ』と一斉に騒ぎ出したのは3月に入ってからだった」(消毒液業界幹部)。

 新型インフルエンザのときに続いて、消毒液業界はまたも感染症に振り回されている。

 問題は、ポストコロナの対応だ。新型インフルエンザやコロナのような深刻な感染症は、毎年流行するわけではない。しかし、いつかは必ず流行する。その都度、慌てふためき、消毒液の確保に大騒ぎするのか。

 コロナが終息した暁には、今回の消毒液の急激な増産や補助金支出、消毒液確保に奔走する人的コストなどについて、消毒液関連企業や政府はもちろん、医療機関や介護施設もきちんと算出し、最適解に向けて真剣に対応策を考えなければならない。一般家庭もまた、“適正な備蓄”とは何なのかを改めて見直す必要があるだろう。

Key Visual by Kaoru Kurata