消毒液不足という一大事は政府も重々承知しており、経産省が関連設備の投資向けに補助金を用意するなど、国を挙げて生産増強を図っている。花王も「4月公募分の補助金を利用するとみられている」(政府筋)というが、もはやどこも供給量の増加に必死だ。

 ただし今、消毒液が不足しているのは、消毒液メーカーの生産能力ばかりに問題があるからではない。むしろ、増産に当たってより懸念されているのは、消毒液の容器不足の方だ。

増産の前に立ちはだかる
新型インフル流行時の“教訓”

 まず、消毒液を含む医薬品や医薬部外品の容器を手掛けるメーカーは数が少ない。同じプラスチックの容器を作るなら、市場が大きいシャンプーやコンディショナーの容器を作った方が割の良い商売だからだ。

 かといって、シャンプーなどの容器を手掛けているメーカーには、消毒液の容器製造への切り替えに慎重なところが少なくない。09年に流行した新型インフルエンザの“教訓”があるためだ。

 当時の消毒液メーカーの増産意欲は今の比ではなかった。新型インフルエンザに流行の兆しが表れた瞬間、一気に数十万本単位で容器の発注を掛けたメーカーがあったほどで、それまで消毒液用を手掛けていなかった容器メーカーもこぞって生産に乗り出した。

 しかし、新型インフルエンザが終息すると瞬く間に消毒液は売れなくなり、行き場を失った容器は最後、インターネットで1円で投げ売りされるに至ったという。感染症の流行特需に左右される消毒液の容器製造はもうからないと身をもって実感した容器メーカーは、安易な“再参入”に今も慎重なのだ。