新型コロナウイルスの感染者数が国内で7000人を超える中、岩手県は13日午後9時現在、全国47都道府県で唯一の感染者ゼロを継続している。
人口密度(1平方キロ当たりの人口)83・8人が北海道に次いで全国2番目の低さで、県内自治体の最多人口は盛岡市の約30万人。「3密」が生じにくいことが理由として挙げられるが、隣県の青森や秋田も同様の特徴がありながらも感染者が発生し、増え続けている。
踏みとどまっている背景には、達増拓也知事(55)が指揮を執る感染予防対策もあるとみられる。外務省在職時に公衆衛生学の世界的権威であるジョンズ・ホプキンズ大の高等国際問題研究大学院を修了した達増知事は、2月7日時点で感染症専門医による「県新型コロナウイルス感染症対策専門委員会」を設置。3月30日には、首都圏からの来県者に対して往来自粛を求めるだけでなく、2週間の外出自粛要請を出すなど踏み込んだ対策を取っている。
県医療対策室の感染症対策課長は「無症状の患者がいる可能性はもちろんありますが」と前置きした上で「的確な指示を頂き、やるべきことをやっているということは言えると思います」とする。PCR検査数が136件(12日現在)と全国最少にとどまっていることを指摘する声もあるが「専門委の皆さんで1件ずつ検査の必要性を判断しています。時間はかかりますが、見過ごしはないと言えます」(対策課長)と自負する。いつまで「ゼロ県」のまま持ちこたえるか。県外からも視線を集めている。(北野 新太)
◆ジョンズ・ホプキンズ大 1876年、実業家ジョンズ・ホプキンズの遺産をもとに設立された米国の私大。世界最高水準の医学や公衆衛生学で知られ、卒業生や教授など関係者のノーベル賞受賞者は約30人になる。新渡戸稲造の留学先としても知られる。1月下旬、ローレン・ガードナー准教授が開始した新型コロナウイルスに関する集計は現在、各国の政府やメディアが準拠し、注目を集めている。