おせきがコンコンとまらない
冬。
それは風邪の季節。
帝丹小学校も例に洩れず、校内には風邪予防のポスターと同じくらいのカゼ菌がはびこっていた。
そしてそんなカゼ菌の餌食となった哀れな小学生が1年B組にも約一名。
「ひっくしゅん! げほっ! ごほっ!」
「大丈夫? 光彦君」
「は、はい、ありがとうございます、歩美ちゃん…げほげほ、ごほっ!」
「すげーセキだな、光彦。お前ホントに大丈夫かよ?」
「は、はい、の、喉が少し痛いだけですから…っ」
光彦がそう言ってマスクを直したところで、コナンと哀が登校してきた。
「はよー」
「おはよう」
「あ、コナン君、哀ちゃん、おはよう!」
「うっす、コナン! 灰原!」
「お、おはようございま…ゲホゲホっ!」
「おい、大丈夫かよ光彦。まさかオメー、腹出して寝てたんじゃねーだろーなー?」
「相変わらずデリカシーのない探偵さんね…。円谷君、辛そうだけど、熱とかはないの?」
「あ、はい、大丈夫で――って、灰原さん!?」
「あら? 少し顔が赤くなってきたんじゃない? 熱が出てきたのかも…」
「や、そ、それは――」
――それは灰原さんが僕の額に手を当てているからですよ!
光彦はそう叫びたかったが、すんでのところで言葉を飲み込んだ。
その代わりにまた咳が出てきた。
「ゲッホゲホゲホッ! ゴホッ!」
「お、おい!」
「ちょっと!?」
「光彦、大丈夫かよ!?」
「しっかりして、光彦君!」
いきなり咳を連発した光彦を心配して、コナン、哀、元太、歩美が一斉に声を上げる。
光彦はなんとか、大丈夫と言いたかったが、それもできない。
しかも息苦しくなってきた。
コナンが持ってきてくれた水を飲んで、なんとか落着いた。
「あ、ありがとうございます、コナン君…」
「ああ。それよりもオメー、大丈夫かよ。風邪じゃなくて、喘息じゃねーのか?」
「何言ってんだよコナン。二年生になるまではねーだろ?」
「それは遠足だよ! お約束のボケかましてんじゃねーよ元太」
「哀ちゃん、ゼンソクってなーに?」
「円谷君みたいに咳が止まらなくなる病気のことよ」
稀に命にかかわることもあるけどね、とまでは言わないでおく。
しかし、それだけでも歩美と元太の反応は大変なものだった。
「ええええ!? 光彦君、病気なの!?」
「み、光彦、お前死んだりしねーよな!?」
「大丈夫よ。よっぽど重いのでなければ、そこまで深刻になることはないわ。
今日学校まで来られたんなら、大丈夫だとは思うけど…」
確かめてみなきゃね。
哀は一言そう呟いて、身をかがめ、自分の耳を光彦の胸におしあてた。
当然、光彦の顔は真っ赤である。
「そのまま深呼吸してくれる?」
「え? えええ!?」
「いいから早く!」
「は、はい!」
哀に怒鳴られてスーハーと深呼吸をする光彦。
哀は真剣な顔で呼吸音を聞いていたがやがて耳を離した。
「ちょっとヒューヒューいってるから、お家に帰ったら病院に…って、円谷君!?」
「光彦君!」
「おい、光彦!」
哀に密着されたおかげでいろいろとキャパオーバーになった光彦は、その場に倒れてしまった。
「み、光彦、やっぱりゼンソクで…」
「う、うそぉ、死んじゃやだよ、光彦君!」
「死にゃしねーよ。せいぜい知恵熱ってところだろ」
「ち、チエネツ?」
「なんで分かるの、コナン君」
「あー? それは灰原が光彦に…ムグッ!?」
くっついたからだ、と言おうとしたコナンの口は、いつの間にか傍に来ていた小林先生によって塞がれてしまった。
「江戸川君? そういうことは、黙っといてあげようね?」
「は、はい…」
コナンの口から手を離した小林先生は、光彦をひょいっと抱きあげた。
「よしと。じゃあ、先生は保健室に行って、円谷君のお家に電話してくるから。
チャイム鳴るまでに戻らなかったら、灰原さんと吉田さんで授業参観の出席の紙、集めておいてね。
小嶋君は悪いんだけど、円谷君の荷物持って、一緒に来てくれる?
江戸川君は、お口にチャックして待っててね」
「「「「はーい」」」」
こうして寒い中頑張って登校した光彦は、登校後30分で再び家に送り返されることとなったのだった。
ちなみに症状はただの風邪で、喉から来るものだったらしい。
【おまけ】
――その夜の探偵事務所
「げほっ、ごほっ!」
「あら? どうしたのコナン君。風邪?」
「う、うん、なんか咳が止まらなくって…げほっ、げほっ! 蘭姉ちゃん、喘息だったらどうしよう…?」
「ええっ!? だ、大丈夫よ!
とりあえず、今晩はあったかくして寝て、様子を見ましょ。
それで明日になってもそのおせきコンコンが続くようなら、お医者さんに診てもらおうね。
大丈夫! コナン君が喘息でも、お姉ちゃんとお医者さんで絶対に治してあげるから!
だから今日はもう寝ようね、コナン君?」
「う、うん…」
「あ、寝る前にのど飴なめとこうか。
なめ終わったら、歯磨きはしなくていいけど、お口ぶくぶくして寝るんだよ?」
「は、はーい」
「はい、のど飴。じゃ、あったかくして寝るんだよ? 後でもう一枚毛布、持ってってあげるから。
おやすみ、コナン君」
「お、お休みなさい、蘭姉ちゃん…」
――チッ。
【あとがき的なsomething】
おまけのコナン君はもちろん、仮病です。
蘭ちゃんに呼吸音聴いてもらうという名目でくっつきたかっただけのしょーもないガキです。
私も小さい頃はぜんそく持ちだったので、咳をすると必ず母が胸に耳を当ててくれました。
ちなみに、コナンのアニメの次回予告の後のショートコント(?)で、
「風邪予防!」
「うがい!」
「手洗い!」
「マスク!」
「人にうつさない…」←by コナン君
がめっちゃツボに入りました(笑)
松本警視役の加藤精三さんと、鈴木次郎吉役の永井一郎さんがお亡くなりになったとネットのニュースで知りました。
ご冥福をお祈りいたします。(1月28日)
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