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【社会】<新型コロナ>休館図書館の試み 休校学生に無料で宅配 職員が自宅に資料届け
新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言を受け、対象地域の公共図書館はほとんどが休館している。館内での閲覧は三月からできないところが多かったが、宣言後は予約資料の貸し出し休止も一気に増えた。国民の知る自由を守る図書館は、生活に必要ではないのか。その役割を果たそうと、知恵を絞って貸し出しを試みる図書館もある。 (神谷円香) 「せめて数日前に分かっていたら、たくさん借りておいたのに」 三人の子を育てる東京都あきる野市の主婦東奏子(あずまかなこ)さん(40)は、市立図書館の休館を入り口の張り紙で知った。七日までは予約資料の受け取りができたが、八日から完全に休館となった。「読書の楽しみも奪われて、我慢ばかりの子どもがかわいそう」と残念がる。 無線LANが充実し、テレワークの人も多い千代田区立図書館も、八日から緊急事態宣言の解除まで閉館。新宿区立図書館は十日、翌十一日~五月十日の休館を決めた。職員は十日、利用者に電話やメールで、取り置き資料の受け取りを促した。十日中に受け取れない人は、本を借りられるのが一カ月ほど先になる。 国内最大の図書館検索サイトを運営する民間会社「カーリル」(岐阜県中津川市)の調べでは、緊急事態宣言が出た七都府県のほぼ全自治体が、九日時点で休館やサービスの制限を決めていた。全国では46%の六百五十自治体に及び、このうち予約資料の受け取りができるのは百八十一、調べ物や相談に電話やメールで応じるのは六十一自治体だった。 何とか本を届けようと試みる図書館もある。休校中の都立産業技術高等専門学校の図書館は「自宅学習を支援し有意義な時間を過ごせるように」と、学生に蔵書を無料で宅配する。神奈川県立図書館は、以前から行っている有料の宅配サービスを続ける。 大阪府の松原市民松原図書館は臨時休館中、職員が市民の自宅に資料を渡しに行くサービスを始めた。市いきがい学習課長の手束(てづか)元信さんは「何かできないかと皆で考えて始めた。感染予防策はしっかり行う」と話す。 カーリル代表の吉本龍司(りゅうじ)さん(37)は、日本の図書館サービスは来館が前提になっていると指摘。「電子書籍の取り扱いも停滞している。デジタルコンテンツを進めてこなかったのがうちも含めての反省点」と言う。新刊の購入に予算を使うだけでなく、デジタルアーカイブを充実させるなど、今回の閉館を反省材料に「図書館の本質的な役割とは何か」を考える機会にと望んでいる。 PR情報
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