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【社会】

辺野古設計見直し 専門家「名ばかり検討会」 委員とコンサルなれ合い

防衛省の技術検討会で審議に使った資料の正誤表。護岸設計での計算違いや地盤強度のグラフの記載漏れなどミスは20カ所に上った

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 沖縄・辺野古(へのこ)の米軍新基地建設の設計見直しに当たり、新たな計画を評価する防衛省の有識者委員が、設計変更を手がける建設コンサルタント大手「日本工営」の社内委員を務めていた。評価する側とされる側が、以前は共同で辺野古の設計を検討していたことになる。なれ合いの建設計画に一部の専門家からは「名ばかりの検討会」との批判が出ている。

 今月三日の衆院安全保障委員会。沖縄選出の赤嶺政賢衆院議員(共産)が防衛省の有識者会議「技術検討会」を追及した。その二日前、技術検討会の第六回会合で、防衛省が二十カ所に及ぶ過去の配布資料のミスを報告していた。

 「素人でさえ指摘したような過ち」「工事ありきで進めている検討会だから、ずさんになる」

 ミスのうち二つの工程表の食い違いは、赤嶺議員が二月末から防衛省に指摘していたものだった。

 ミスのあった資料の作成に関わっていたのが現在、辺野古の設計変更業務を行う日本工営。技術検討会の二人の委員は就任前、同社の検討会議のメンバーとして辺野古工事について指南していた。

 「受注業者が自ら精査してミスが判明した」と説明する防衛省。専門的な知見を買われたはずの各委員は、配布資料を基に議論しながらミスを見逃していた。防衛省からミスの報告を受けた委員らは「議論への影響はない」と見なしたが、かえって技術検討会の信頼性が揺らぐ格好となった。

 防衛省が「海面下七十メートルより深い海底地盤は非常に固い粘土層」とする基地建設の根拠も、日本工営が作成に関わった報告書に基づく。設計変更を巡り、評価する側とされる側に分かれる技術検討会委員と日本工営の関係は密接だ。

 防衛省は技術検討会の第六回会合をもって「技術的な議論を一通り終えた」として、近く沖縄県に設計変更を申請する構えだ。

 建設予定地の海底では、防衛省の設計の根拠を覆す軟弱な地盤データの存在が明らかになり、護岸崩壊の恐れを指摘する専門家の調査チームは技術検討会に疑義を示し、地盤の再調査を求めている。

 調査チームの代表で、立石雅昭・新潟大名誉教授は「設計業者と利害関係にある人を委員に選ぶこと自体、客観性に欠ける。防衛省にお墨付きを与える名ばかりの検討会といわれても仕方ない。これで工事の安全性や妥当性が担保できるのか」と批判した。 (中沢誠)

 

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