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バラタナゴ類の雑種を簡易に判別するツールを開発

 
九州の希少淡水魚の保全・保護の進展に期待

公開日:2020.04.14

 

研究成果 農学

 九州大学大学院生物資源環境科学府博士課程1年の梅村啓太郎大学院生、同農学研究院の栗田喜久助教および鬼倉徳雄教授の研究チームは、バラタナゴ類の雑種判別を簡易に行うツールを開発しました。
 絶滅危惧IA類に指定される在来希少魚のニッポンバラタナゴ(ニチバラ)は、大陸由来の外来近縁亜種タイリクバラタナゴ(タイバラ)と容易に交雑してしまうため、ニチバラ純系集団の保全・保護が急務とされています。これまで、河川や水路でバラタナゴ類が採集された際には、ニチバラかタイバラかの確認のためにミトコンドリアDNA(mtDNA)の塩基配列が読まれていましたが、mtDNAは母系遺伝であるため、両亜種間の交雑個体を判別できず、タイバラの侵入を過小評価・誤判別する可能性がありました。今回開発した手法は、mtDNAだけでなく核DNAも分析するため、母系だけでなく両親からの情報も読み取ることができ、個体レベルでの雑種判別を可能としました。それぞれの亜種に特異的なDNA断片を増幅させ、電気泳動を行う方法であり、簡便で安価に行うことができ、また先の過小評価や誤判別の問題も解決できます。
 本成果は、英国のJournal of Fish Biologyに4月2日(木)(英国夏時間)付けで掲載されました(2019年10月2日付で特許出願:特願2019-181946;西日本技術開発株式会社とライセンス契約締結)。

本手法を使ったニチバラ・タイバラ雑種判別に関する事例および九州内のバラタナゴ類の分布の現状

研究者からひとこと

九州には、純系のニチバラの生息地が多く残されています。市民団体等でも分析依頼できる価格となるように契約企業と調整しました。解析受託サービスも始まりました。本手法で雑種判別が積極的に行われ、九州内のニチバラの広域的な保全と保護に貢献できれば幸いです。

研究に関するお問い合わせ先