世界の主要産油国が原油減産で合意した。コロナ禍による需要減が協調をもたらした。ただ産油国は自国の利益を優先する傾向が強く、日本など非産油国は減産が実現するか監視する必要がある。
減産合意の表向きの主役は、石油輸出国機構(OPEC)の実質的なリーダーであるサウジアラビアと非OPECのロシアだ。
原油価格は新型コロナウイルスの感染拡大による世界的な経済危機で需要が激減し急落している。
ロシアは価格安定化により国内経済の悪化を食い止めたかった。
ただ米国のシェールオイルを強く警戒するサウジが三月末、突然増産する姿勢に転じた。この結果、市場が動揺し下落に拍車がかかってしまった。
この間、米国を含む主要産油国は水面下で交渉を続けたが、国益ばかりを意識した綱引きを続けて時間を無駄に費やし、状況を悪化させたと指摘せざるを得ない。
OPECやロシアは原油生産が国を支える基幹産業になっているといえるだろう。国の収入の多くを原油輸出に頼っており、国家予算の編成にも影響が及ぶケースがほとんどだ。
このまま価格低迷が続けば各国の原油関連企業の財務は逼迫(ひっぱく)し、経済の根幹が揺らぐはずだ。特に中東では大量の外国人労働者の生活を直撃し、社会不安を誘発する恐れさえある。
米国でも大手シェールオイル企業が倒産した。シェール価格は原油と連動しており、関連企業の経営状態も軒並み悪化している。
エネルギー価格の下落は日本など消費国にとって一見朗報に見えるが、景気悪化で需要そのものが極端に減っており恩恵は少ない。
むしろ中東や米国、ロシアの不安定化がさらなる足かせ要因としてのしかかり、一層の株価下落などを引き起こしかねない。
今回の減産は日量九百七十万バレルと過去最大だ。しかし市場の反応は鈍い。市場が減産実現の行方を見極めようとしているためだ。
産油国は合意破りを繰り返し、市場の信頼は低いとみていい。さらに、トランプ米大統領が依然、シェール拡大と関連企業救済を前面に押し出しており、市場の不信感を増幅させている。
世界は今、共通の敵と闘っている。米国も含めたエネルギー輸出国がこの危機感を共有すべきなのはいうまでもない。自国優先の意識を直ちに捨て市場安定化に全力を注ぐよう強く要望したい。
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