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【社説】

コロナ疎開 動かぬ勇気が人を守る

 緊急事態宣言の対象地域から地方へ帰省や旅行で避難する「コロナ疎開」が、感染拡大への不安を広げている。人の移動は原則自由だが、大切な人を守るためにも、動かない勇気を持ちたい。

 新型コロナウイルス感染症が増える大都市から、少しでも安全と思われる地方へ動く人が目立ち始めた。

 東京などで休校となった大学生が帰省したり、沖縄や離島、別荘地に避難する旅行者らもいる。

 各地の首長たちが、来訪を控えるよう声を上げている。全国知事会も、対象地域からの人の移動について国が主導して自粛を呼び掛けるよう求めた。

 これまでも首都圏からの帰省などで感染が広がったケースが、山形や佐賀、富山県などで確認されている。帰省先で周囲に感染させるリスクが増えている。

 別の懸念もある。都市部に比べ医療態勢に不安を抱える地方は多い。例えば、沖縄県石垣市によると今年二月に空路で石垣島を訪れた人は前年同月比で約千五百人増えたが、島内の感染症病床は数が少ない。患者が集中すれば、医療崩壊の恐れがある、という。

 宣言で感染が全国に広がるとしたら逆効果である。感染の拡大は何としても防がねばならない。政府も自治体も移動のリスクを繰り返し説明すべきだ。

 ただ、地方へ行かざるを得ない人もいるだろう。働き続けるために子どもを地方の実家に預ける人や、休業が広がる都市部から仕事を求めて動く人もいるようだ。

 休業要請を行う自治体は増える見通しで、職を求めての移動に拍車をかけかねない。移動を抑えるためにも休業補償は必要だ。政府は自治体向けに創設する臨時交付金の拡充も検討すべきだ。

 不要不急の移動は避けたいが、対象地域での滞在に不安を感じ地方を選ぶ決断も否定できない。

 そうだとしても感染リスクを考え、滞在先では二週間程度は外出を控えたり、外出の際は人混みを避けるなど地元住民に配慮してほしい。

 都市部と地方の住民が対立しては感染拡大を防げなくなる。自治体は来訪者に地域の状況や守ってもらいたい要望などの情報提供をこまめに行う必要がある。

 政府の専門家は、屋内での人との接触を八割減らすと対策を早期に終結でき、社会のダメージも少なくできると指摘している。

 どこにいても正確な情報を得て感染を防ぐ行動が周囲を救う。 

 

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