週刊2分でわかるNYダウNYダウ平均株価の情報をタイムリーに、より分かりやすくお伝えするレポート
試されるベア相場の上昇局面
2020/04/13 11:01
「1974年以来の週間上昇率」
イースター(復活祭)前の「グッドフライデー」で10日が休場となったため、先週のアメリカの株式市場は4日間の取引。大きく上昇しました。
ダウ工業株30種平均は前週比で13%上昇し、2万3719ドル37セントで取引を終えました。S&P500種株価平均は12%高の2789.82。S&P500の週間上昇率は1974年以来の大きさでした。ナスダック総合指数は10.6%上昇して引けました。
新型コロナウイルスのイタリアなどヨーロッパの主要国の感染増加ペースが鈍化傾向にあること、アメリカで突出して感染者と死者が多いニューヨーク州の入院患者数と集中治療室(ICU)使用率が減少したこと、そして連邦準備理事会(FRB)が一般企業への支援を含めた2.3兆米ドル規模の緊急措置を発表したことで投資家の心理が改善しました。
ダウの直近安値からの上昇率は27.8%。S&P500は25%、ナスダックは安値から23%上昇しました。株価が直近安値から20%上昇するとブル(強気)相場入りと定義されます。定義に基づけば、いずれの株価指数もブル相場に戻ったことになります。
しかし、ウォール街では楽観的な見方は少なく、過去の下げ相場で何度も確認された「ベア(弱気)相場における一時的な反発」との指摘があります。金融危機が発生した2008年と同様に、今年の安値を再度試す下落トレンドが加速することに投資家は備えた方が良いとバロンズは解説しました。2008年秋のリーマンショック後、同じ年の12月に株価は大幅に反発しました。しかし、再び大きく売られ、株価が底をつけたのは2009年3月でした。
ウルフ・リサーチのアナリストは、「先週の上昇は典型的な景気後退時の反発であり、経済が昏睡状態にあることを市場は消化し始めるので警戒が必要だ」とバロンズにコメントしました。また、アルファン・キャピタル・パートナーズのアナリストは「ベア相場の中での上昇は終わると考え、ポジションを変えた」とCNBCのインタビューで述べました。
「決算シーズン」
今週のアメリカの株式市場は引き続き新型コロナウイルスをめぐるニュースが相場を動かしそうです。現地時間13日の午前11時からのニューヨーク州のクオモ知事による記者ブリーフィング、午後5時ごろのトランプ大統領とホワイトハウスの新型コロナウイルス対策本部によるブリーフィング、その他、米国を含めた各国政府や中央銀行の動きが投資家心理に影響しそうです。特に13日の取引では、イースター期間中の感染者数増加に反応することが予想されます。
ウォール街が注目しているのは、主要企業の第1四半期(1~3月)の決算。今週から決算発表が本格化します。14日は銀行大手のウェルズ・ファーゴとJPモルガン・チェース、そしてジョンソン&ジョンソンが四半期決算を発表。15日はバンク・オブ・アメリカ、ゴールドマン・サックス、シティグループ、そして医療保険大手のユナイテッド・ヘルス。16日は新型コロナウイルスの検査キットを提供しているアボット・ラボラトリーズ、17日は油田探査大手のシュルンベルジェが四半期決算を発表します。特に第2四半期(4~6月)以降の業績見通しを各企業がどうみているかが焦点になりそうです。
経済指標では、16日発表の新規失業保険申請件数が注目されています。
「試される株式市場」
ウォール・ストリート・ジャーナルは、決算シーズンが株価反発の次の試練になると伝えました。ストラテジストは「新型コロナウイルスが企業業績にどれほどの打撃を与えたのか市場は完全にはわかっていない」と話しているとしています。
ファクトセットのまとめでは、去年末時点でS&P500企業は第1四半期に前年同期比で9.2%の増益になるとの見通しでした。それが今は9%の減益見通し。ただ、大手金融機関のアナリストはそれ以上の減益を予想しています。ゴードルマン・サックスは平均で33%の減益、最悪の場合は57%の減益になるとみています。バンク・オブ・アメリカのアナリストも一株当たり利益の平均は29%になると予想。特に、旅行、レストラン、ソーシャル・ディスタンシング(他人との距離を約2メートル確保すること)の影響を直接受ける企業の業績は深刻化するとみています。
ニューヨーク州のクオモ知事は12日の記者会見で「一日も早く経済活動を再開したい」と述べました。しかし、医療関係者、公共機関従事者などを検査する必要があり、また死者数は恐ろしいほど多いと述べました。
[April 12, 2020 NY198]
※本文中に記載する内容は主に現物株をベースとしています。
筆者プロフィール
松島 新(まつしま あらた)
昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。 ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。 平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。 現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。
- ※当レポートは、情報提供を目的としたものであり、特定の商品の推奨あるいは特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。
- ※当レポートに記載する相場見通しや売買戦略は、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析などを用いた執筆者個人の判断に基づくものであり、予告なく変更になる場合があります。また、相場の行方を保証するものではありません。お取引はご自身で判断いただきますようお願いいたします。
- ※当レポートのデータ情報等は信頼できると思われる各種情報源から入手したものですが、当社はその正確性・安全性等を保証するものではありません。
- ※相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。
バックナンバー
-
2020/04/13 11:01
試されるベア相場の上昇局面
「1974年以来の週間上昇率」イースター(復活祭)前の「グッドフライデー」で10日が休場となったため、先週のアメリカの株式市場は4日間の取引。大きく上昇しま…
-
2020/03/30 10:18
ベア相場の「フェイク反発」!? 荒れた展開続きそう
「1938年以来の週間上昇率」財政と金融の両輪が景気悪化を救う。アメリカの中央銀行である連邦準備理事会(FRB)は政策金利をゼロ近くに引き下げると同時に、国…
-
2020/03/23 10:06
「世界株安の最悪期はまだ」
「経済活動停止」ニューヨーク州、隣接するコネチカット州およびニュージャージー州が外出禁止令。それに先立ちシリコンバレーがあるカリフォルニア州でも自宅待…
-
2020/03/16 11:53
米国株、さらに荒れそう
「波乱の1週間」先週のアメリカの株式相場はジェットコースターのような展開でした。ダウ工業株30種平均は2000ドルを超える過去最大の下げ幅、1987年10月のブラ…
-
2020/03/09 13:31
米国株、不安定な展開続くか
「週間ベースは小幅高」ジェットコースターのようでした。先週のアメリカの株式相場は、急上昇と急落を繰り返す目まぐるしい展開。新型コロナウイルスの感染拡大…