[PR]

 震度7の激しい揺れが2度続いた熊本地震から4年。

 関連死を含めて275人が命を落とし、約20万棟の家屋が被災した。避難者は一時18万人を超え、3月末時点でなお3100人が仮住まいを続けている。

 先月に4選を果たした蒲島郁夫知事は「被災者の痛みを最小化する」と強調してきた。地域の復興は住民の生活再建なしには達成できない。そのことを肝に銘じて取り組んでほしい。

 熊本の被災地では、全国各地の災害時の教訓を踏まえ、新たな試みが見られる。生活の再建を支える住宅について、仮設住宅をそのまま恒久的な住まいとし、被災者が住み続けることでコミュニティーの維持を目指したこともその一例だろう。

 災害に見舞われた時、住民はまず避難所に移る。短期間で自宅に戻れない人は仮設住宅に入る。自宅の再建が難しい場合、行政が用意する災害公営住宅に転居する。これが被災から復興への基本的な流れである。

 東日本大震災などを契機に、プレハブが中心の建設型仮設住宅に温かみのある木造を採り入れる動きが活発になり、既存の空き家・空き室を利用して素早く住まいを提供する「みなし仮設」も増えた。一方で、引っ越しのたびに住民同士のつながりが失われていく問題が繰り返し指摘されてきた。

 熊本地震では、仮設住宅の2割強、4300戸余の建設型仮設のうち、約16%にあたる683戸を県産材などによる木造にした。さらに、そのうち300戸近くは仮設住宅の役目を終えた後、所在地の市町村が被災者らの住宅として使えるようにした。言わば災害時の住宅政策の多様化、複線化である。

 西原村では、転用にあたり一部の住宅をリフォームしたが、新築と比べて経費が約10分の1ですみ、家賃も抑えられた。負担増を避けながら慣れた所で暮らし続けられるため、被災者に歓迎されたという。

 益城(ましき)町では、当初は集落の外れに予定されていた災害公営住宅を集落の中に建てた。地域社会を守りたい地元住民の要望を受けての対応だった。

 コミュニティーを維持するには、自宅に戻ってもらうことが最良なのは言うまでもない。熊本地震でも借入金に伴う利子負担の軽減策などが実施されたが、給付金をもっと手厚くすることを国全体で考えたい。

 熊本県が計画した1715戸の災害公営住宅は既に完成したが、3月末までの入居者を見ると半数以上が高齢者世帯で、一人暮らしのお年寄りも全体の3割を超える。孤独死に象徴される被災者の孤立を防ぐことも忘れてはならない課題である。

連載社説

この連載の一覧を見る
こんなニュースも