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 発熱や息苦しさを訴えても受診できない。新型コロナウイルスの検査をしてもらうまで何日も待たされる。結果が出るのにさらに時間がかかる――。

 都市部を中心にこんな状況が続いている。受け入れた患者が後になって感染しているとわかり、そこから院内にウイルスが拡散する事態も起きている。

 広がる不満や不安を解消するために、検査態勢の整備・充実は喫緊の課題だ。

 検査強化の必要性は、いまになって浮上したわけではない。

 安倍首相は2月29日の会見で「身近な医師が必要と考える場合は、全ての患者がPCR検査を受けることができる十分な能力を確保する」と明言した。だがこれまでの検査件数は最も多い日で7千件程度にとどまる。日本医師会は今月上旬、「医師が必要としたもの全てが、速やかに検査される状況にはなっていない」と訴えた。

 首相の言葉はどこまで信用できるのか。政府は頼りになるのか。そんな疑念が生じている。政治が信頼できないとなれば、その政治から発せられる様々な自粛要請も市民の胸に届かず、実効あるものになり得ない。

 政府も危機感をもち、1日あたりの検査能力を1万2千件から2万件に増やす方針を示し、緊急経済対策に機材導入のための支援を盛り込んだ。

 機器や物資の手当てはもちろん必須だが、あわせて、検査の妨げになっている原因を洗い出し、一つひとつ改善していかなければならない。

 防護服やマスクの不足、採取した検体を検査機関に送るのに要する時間の長さに加え、よく指摘されるのが、鼻やのどから検体を安全に採取できる医療関係者や検査技師の不足だ。開業医や家庭の事情などで職場を離れている有資格者にも協力を仰いでいるが、こうした取り組みをさらに加速させ、人材を確保していく必要がある。

 効率的な手法も求められる。車に乗ったまま検査を受けるドライブスルー方式は、院内感染の危険を減らしながら多くの件数をこなせるため、一部の自治体が採り入れた。韓国では院外に設けたテントで検体を採取するウォークスルー方式も行われている。また、いま検査できるのは、原則として指定された医療機関に限られるが、そうでない病院でも検査や診察にあたれるようにしていくべきだろう。

 血液を採取して感染の有無や履歴を調べる「抗体検査」の準備も進めたい。知らないうちに感染したケースを含め、すでに抗体をもっている人を把握するために、海外では積極的に導入する動きもある。日本も活用方法を検討してはどうか。

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