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 東京電力福島第一原発の事故処理費用を、再生可能エネルギー省エネなどの財源から流用する。そんな異例の方針を安倍政権が決め、特別会計法の改正案を国会に提出した。

 原子力政策の失敗を、別の施策に使うはずのお金で穴埋めするものである。あしき前例にならないか、慎重に検討しなければならない。

 事故処理の費用は東電が負担するのが基本だが、汚染土などの中間貯蔵事業費は2014年度から国が肩代わりしている。エネルギー対策特別会計(エネ特)のうち、原発の立地対策などに使う電源開発促進勘定から支払われてきた。

 当初の支出額は年間350億円だったが、事業費の膨張にともなって現在は120億円ほど増えている。今後、さらに費用がかさんだとしても、この勘定からの支出を増やし続けるのは難しい。財源の電源開発促進税は電気料金に上乗せされており、増税すれば国民の反発が予想されるからだ。

 このため政府は、同じエネ特のエネルギー需給勘定の目的外使用に道をひらくことにした。こちらは石油備蓄・資源開発、再エネ支援、省エネ対策などに使う目的で、石油や石炭を輸入する事業者などから集めた石油石炭税を財源としている。

 エネ特でこうした目的外の使用は例がない。ただ、使ったお金は将来的に元に戻すと改正法案で定めており、いわば一時的な借金なので問題ないというのが政府の考え方だ。

 とはいえ、いったん認められれば安易な流用が増え、返済できなくなるのではないか。そんな不安がぬぐえない。

 福島の廃炉は先行き不透明で、費用が膨らむ恐れが大きい。今後は高速増殖原型炉もんじゅの廃止措置などにも費用がかかる。今回が前例となって目的外使用が増えれば、本来の使い道である再エネや省エネのための予算が圧迫され、地球温暖化対策が滞りかねない。気候危機が差し迫るいま、再エネ拡大や省エネ対策が待ったなしの課題であるにもかかわらずだ。

 そうした懸念がある法改正なのに、安倍政権は、復興庁の設置期間延長などほかの四つの法案と一くくりにして国会に提出した。問題に正面から向き合うことを避けたいのだろうか。

 求められるのは、原子力政策にかかる費用を丁寧に説明し、だれがどう負担すべきなのか、透明な議論をすることだ。その場しのぎでやり過ごしても、国民の理解は得られない。

 流用する以外に方法はないのか、流用するとしても歯止めは十分なのかなど、論点は多い。しっかりとした審議が必要だ。

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