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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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探索

「気をつけろよ」

「はい」


 ラフタリアが魔法で光の玉を作り出して洞窟内を照らす。

 俺が先頭を歩き、ラフタリア、フィーロ、リーシアと続き、連合軍が付いて来る。

 洞窟内の壁から設置型の目玉の使い魔や芋虫のような使い魔が現れるが戦えない事は無かった。

 問題はこの洞窟……どうも迷路みたいに複雑な構造をしているみたいなんだよな……。

 壁は生き物ではなく石や土壁だ。


「道はわかるか?」

「一応、過去に洞窟を調査した時の物の控えを仰せつかっております」

「それは助かる」


 一からマッピングしていたら時間が掛かりすぎるからな。

 地図を広げて確認する。

 やはり洞窟内は迷路のように複雑な構造をしているようだ。

 後、皮肉な事に入り口はもう一つ、町の方にもあるっぽい。

 くそ……。


 まあ、知らなかったんだからしょうがない。そもそも俺とフィーロだけで行ってどうするんだ。

 心臓を封印する為の護衛なんだから合流しなきゃ意味がない。

 問題は……心臓のある場所までの道が描かれていない所か。

 途中までというか、霊亀が蘇らないと進めなくなっているとかそういうものだったんだろうな。

 あんまり頼りには出来ないか……。


「お?」


 地図を確認していると若干広い場所を発見。ここに待機してもらって探索班を出すのが良さそうだ。

 正直、人数が多過ぎて逆に身動きが取りづらい。

 これがラフタリアやフィーロと同じ位実力がある奴等なら問題無いんだが、二人と同じレベルを求めるのは酷だろう。

 ともあれ、休憩と称して連合軍を待機させるのは良い手だ。これで行こう。


 俺はそう決めると洞窟内の広い場所を目標に定めて連合軍を進ませる。

 やがて見えてきたのは地図通り、開けた広場。

 元は何に使っていたのか皆目見当も付かないが地図は信用できると見て良いだろう。

 しかし、目的の場所に到着したのは良いんだが……。


「なんかデカイ魔物がいるな」


 広い所にはそれ相応の霊亀の使い魔が幅を利かせている。

 無駄にいる使い魔と比べて全長が大きい。

 広場で侵入者を排除する為だけに配置された様な陣取り方だ。


 RPGなんかでいう所の中ボスって感じだな。

 霊亀がアレだからな。雑魚よりも強いと相場が決まっている。

 問題は数か。

 一匹位なら俺達だけでも余裕だろうが、あの数だと連合軍がやばそうだ。


「そうですね。どうしましょう?」


 倒しても次々と出現したら困るのだが……やってみるしかないか。


「よし、幸いそこまで数は居ないから、俺達が仕留めて様子を見よう。連合軍の奴等は待機、後方に注意しろ」

「了解!」

「はーい」

「ふぇ……頑張ります」

「はぁ……」


 相変わらず、注意した言葉をリーシアは言いそうになった。

 まあ、途中でやめたからここで注意はしないでおこう。

 今リーシアに必要なのは経験と自信だ。

 女王の所に置いていっても良かったが、強くなるにはLvだけでなく実戦経験も積ませておきたい。

 その上で霊亀は絶好の相手と言える。

 ……少々荒療治な気もするが。


「よし、突撃!」


 俺達は広場を占拠している使い魔たちに向って突撃した。

 外に居るゴリラや雪男とは異なる……亀男タイプ? 全長4メートルの化け物だ。


「でりゃあああ!」


 フィーロが使い魔の甲羅を思いっきり蹴り飛ばす。

 バキッと音がして甲羅が陥没し、壁にぶつかって動かなくなる。


「やあああああああ!」


 ラフタリアは使い魔の首を一閃して跳ね飛ばす。

 頼りになるな。

 リーシアは、弱い攻撃魔法で注意を引いてラフタリア達の援護をしている。

 自らがターゲットになった場合は俺の流星盾の範囲入って身を守る。

 一応連携は理解しているな。及第点だ。


 というか、連携自体は問題無い。後は実力が身に付けば伸びていくはずだ。

 問題はその実力であるステータスの方なんだがな。

 ……今は前に集中するか。


「呆気ないものですね」


 剣に付いた血を薙ぎ払って飛ばしたラフタリアが使い魔の殲滅を確認した。

 確かに予想より遥かに弱かった。

 霊亀がアレだったからな。警戒し過ぎたか?

 いや、連合軍を後ろに連れているんだ。警戒し過ぎる位が丁度良い。


「うん。ちょっと硬いけど」

「フィーロはあえて硬いところを蹴っているではないですか」

「だって、他が柔らかいだもん」

「無駄な動作ですよ」


 二人は他愛無い会話をしている。

 天才と秀才って感じの会話だな。


「お二人はとても強いですね」

「リーシア」

「ふぇ――目標にします!」


 むう……言わないように努力しているのだけは評価するしかないか。

 完全に癖だな。コレは。


「増援は……今のところ無いか」

「ですね」


 倒したその場から無限に湧いてくるとか可能性としてはあったが、どうやらそういうトラップでは無い様だ。


「すごい……」


 連合軍の連中が俺たちにポツリと漏らす。

 俺から言わせて貰えばお前等が弱いと思うのだが……。

 平均Lvはどれくらいなんだ?

 これで60Lvとかだったら泣けるぞ。


「盾の勇者殿」


 影が現れた。というか居たのか。

 手に持っている短刀は使い魔の返り血が付いている所を見るに戦ってはいたみたいだな。


「どうした?」

「作戦通りここを拠点に調査をするでごじゃるな」

「ああ……というか付いてきていたのか」

「今回の作戦では連合軍の護衛を仰せつかったでごじゃる。他、盾の勇者殿の指示を仰ぐようにと女王からの命令を受けているでごじゃるよ」

「そうだな」


 影に連合軍の護衛って……コイツ等も一応戦う為の部隊のはずなんだがな。

 霊亀の使い魔はそこまで強い魔物だったか?

 まあ……連合軍は霊亀を封印する為の特殊部隊の様な物と考えれば良いんだろう。

 戦闘能力よりもそちらに能力を割り振ったと計算しておこう。


「よし! 連合軍の諸君、ここを拠点に霊亀の心臓を捜そうと思う。諸君はここを守る事を重視してくれ。俺達は探索を始める」

「りょ、了解!」


 連合軍は緊張を解いて、洞窟内の広場で各々警戒しつつ休む。

 極度の緊張と連戦で大分疲労していた様で、疲労困憊って感じだ。

 そんなに疲れる程戦ったつもりは無いんだが……。

 盾の影響なのか?

 それともラフタリアやフィーロがおかしいのか。

 どちらにしても霊亀を再封印したら色々と考えないとダメそうだな。


「影……ついでに知っているなら、連合軍の平均Lvはどれくらいだ?」

「霊亀の心臓封印の部隊の平均は65でごじゃる」


 ……予想より悪いじゃねえか。

 何? 成長補正ってこんなにも差が開くのか!?

 リーシアのステータスが低いんじゃなくて、補正が無いとこの程度とか?

 イヤイヤ、さすがにそれは無いだろう。

 樹はリーシアが弱いから理由を作って解雇した訳だし。


 ……そのリーシアもフィーロきぐるみのお陰で多少は戦力になっているんだからなぁ。

 親父に頼んでフィーロきぐるみを増産させるか? 材料が後2着しかないけど。

 量産型フィーロきぐるみか……。

 フィーロの毛をむしったら出来るかな。


「!?」


 フィーロが羽毛を波のように逆立たせてキョロキョロとする。


「どうしたんですか?」

「なんか変な気がしたの!」


 口に出してもいないのに気付かれた。

 ……勘が良い奴だ。むしるのは無理そうだな。


「影はアイツ等よりは強いよな」


 カルミラ島で少しだけ一緒に戦ったから分かる。

 あのレベルの影が一部隊もいれば便利に使えるはず。


「一応、暗殺や戦闘も視野に入れた専門部隊でごじゃるから、Lvと武術の心得はあるでごじゃる」

「じゃあ影部隊の半分を護衛、残り半分を探索に回してくれ」

「分かったでごじゃる。とは言っても、今回の件で影もかなり損耗しているでごじゃるから、そこまで期待しないでほしいでごじゃる」

「わかっている」


 勇者に付けた影が消息不明……おそらくは動けない状況にいるか、最悪死んでいる。

 その分を含めても連合軍よりは頼りに出来る。


 ともあれ、作戦は決まったな。

 まだまだ先は長い。心臓部は俺達が見つけ、それまで連合軍を休憩させる。


「リーシア、お前は連合軍と一緒にここで待機、魔物が出てきたら戦え」

「わ、わかりました!」

「ラフタリアとフィーロは俺と一緒に探索だ。フィーロ、鼻を使え。頼りにしているぞ」

「はーい! がんばるー!」

「了解です」


 リーシアに後を任せ、俺達は複数に分岐した洞窟内の先を進むのだった。

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