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ビタミンDの基礎知識(がんとの関連)第2版



内容一覧

1.はじめに 2.ビタミンD栄養強化
3.ビタミンD摂取 4.ビタミンDの骨への効用
5.骨以外部位でのビタミンDの効用 6.血液中カルシウムの調節
7.PTH(副甲状腺ホルモン) 8.カルシトニン(甲状腺ホルモンの一種)
9.高カルシウム血症の症状 10.ビタミンD過剰による健康被害
11.低カルシウム血症の症状 12.ビタミンDの基準値(正常値)
13.ビタミンD正常者の比率 14.ビタミンD推奨摂取量
15.ビタミンDの基礎知識 16.ビタミンD3の体内代謝
17.参考文献 18.ビタミンの父、高木兼寛
19.後藤喜代子・ポールブルダリ科学賞受賞(秋葉直志) 20.肺がんに対するビタミンDサプリメント
21.受賞論文紹介 22.最近のがんとビタミンD論文
23.最近のビタミンD論文

1.はじめに


ビタミンDは骨を丈夫にするために必要なホルモンである。しかし、日本人の8割でビタミンDは不足しており、4割で欠乏していると言われている。ビタミンDが不足すると血中カルシウム濃度を維持するために副甲状腺ホルモンが増加する。副甲状腺ホルモンは骨からカルシウムを放出してカルシウム濃度を維持する。
ビタミンDを食事からは十分に摂取することは困難で、日光に当たることにより皮膚で合成されるが、現代社会で日光を十分当たることは危険でもある。病院で処方できるビタミンDは活性型であり、医師の管理下に内服しないと副作用の危険がある。ビタミンDサプリメントは天然型のビタミンDなので補充する危険は少ない。
ここでは私の調べたビタミンDの基礎知識を述べる(秋葉直志)。



2.ビタミンD栄養強化


ビタミンD不足に対処するために、米国、カナダ、インド、フィンランドなどの国で、国民のビタミンD濃度を高めるために、食品にビタミンDを入れる政策が行われている。


Pilzらによると、政策としてのビタミンDの栄養強化は、住民のビタミンDの状態を改善するための効果的なアプローチであり、これは既に米国、カナダ、インド、フィンランドなどの国で導入されている。フィンランドなどの国におけるビタミンD治療の安全性、ビタミンD摂取量と25(OH)Dレベルの用量反応関係、およびビタミンD強化の有効性に関するデータに関する知識の最近の蓄積は、同様の費用対効果の高いアプローチで、公衆衛生を改善するためにビタミンDの栄養強化を導入および変更する、強固な根拠を提供している。
Pilz et al. Rationale and Plan for Vitamin D Food Fortification: A Review and Guidance Paper. Front. Endocrinol., 17 July 2018 | https://doi.org/10.3389/fendo.2018.00373.


Pilzら(2018年)は「ビタミンDの栄養強化に関する合理性と計画:レビューとガイドライン論文」を報告した。
ビタミンD欠乏はくる病と骨軟化症のような筋骨格疾患に関連する可能性がある。しかし、ビタミンDサプリメントは骨外性疾患(例えば気道感染症、喘息悪化、妊娠合併症と早死に)を防止もするかもしれない。ビタミンDは実際には独特の代謝で、主に日光(すなわち、紫外線B放射線)の影響を受けて皮膚で合成から得ており、栄養による摂取が比較的小さな役割を伝統的に演ずる。ビタミンDの食事のガイドラインは、血清25-ヒドロキシビタミンD(25[OH]D)濃度がビタミンDの状況を評価するのに用いられるコンセンサスに基づく。目標濃度で≥25から≥50nmol/L(≥10-≥20ng/mL)にわたっていて、1日ビタミンD摂取量10~20μg(400-800国際単位)と一致して推薦された。大部分の住民は、これらの推薦された食事のビタミンDの必要量を満たすことができない。ヨーロッパでは、それぞれ、25(OH)D濃度<30nmol/L(12ng/mL)と<50nmol/L(20ng/mL)は一般住民の13.0と40.4%に存在する。ビタミンDの公式に推薦された食事の参照摂取量と一般住民のビタミンD不足の高い確率間のこの相当なギャップは、保健当局からの行動を必要とする。更なる屋外活動によるより健康的なライフスタイルの普及と最適栄養は、明らかに正当化されるが、ビタミンD欠乏はなくならないし、日光露出の場合、皮膚がんのような潜在的副作用に関してバランスがとれていなければならない。ビタミンD補助剤の摂取は、比較的きちんと摂取しないと制限される(特に低社会経済地位の個人)、過量服用する可能性がある。系統的ビタミンD食物強化は一般住民でビタミンD状況を改善する効果的アプローチである、そして、これは国、例えば米国、カナダ、インドとフィンランドですでに導入された。ビタミンD治療の安全性の我々の知識の最近の進歩は、ビタミンD摂取量と25(OH)Dレベルの用量反応関係ならびにフィンランドのような国でのビタミンD強化の効果に関するデータは、この様に費用効果がよいアプローチで公衆衛生を改善するためにビタミンD食物強化を導入し、修正するためのしっかりした根拠を提供する。
Pilz S. et al. Rationale and Plan for Vitamin D Food Fortification: A Review and Guidance Paper. Front. Endocrinol., 17 July 2018 | https://doi.org/10.3389/fendo.2018.00373


ビタミンD血中濃度が25(OH)D=20ng/mlより低下すると、死亡危険性が急速に増加する。
Gaksch M et al. PLoS One. 2017 16;12(2):e0170791.


3.ビタミンD摂取


米国国立がん研究所(NCI)によると、自然界ではごくわずかな食品にビタミンDが含まれている。脂肪の多い魚(サケ、マグロ、サバなど)と魚の肝油の肉は最高の供給源である。少量のビタミンDは、牛の肝臓、チーズ、卵黄に含まれている。これらの食品に含まれるビタミンDは、主にビタミンD3とその代謝物25(OH)D3の形である。いくつかのキノコは、さまざまな量のビタミンD2を提供する。制御された条件下で紫外線にさらされることからビタミンD2のレベルが高められたキノコも利用できる。
強化食品は、アメリカの食事でビタミンDのほとんどを提供する。たとえば、米国のほとんどすべての牛乳は、100 IU /カップ(2.5μg/カップ)で自発的に強化されている。カナダでは、牛乳は法律によって、530 IU / 100 g以上(13.25μg/100g)のマーガリンと同様に、35~40 IU / 100 mL(0.875-1ng/100ml)で強化されている。1930年代には、くる病と戦うために米国でミルク強化プログラムが実施され、その後主要な公衆衛生問題となった。チーズやアイスクリームなど、牛乳から作られた他の乳製品は、通常強化されていない。すぐに食べられる朝食用シリアルには、多くのブランドのオレンジジュース、ヨーグルト、マーガリン、その他の食品と同様に、ビタミンDが含まれていることがよくある。植物乳の代替品(大豆、アーモンド、またはオート麦から作られた飲料など)は、多くの場合、ビタミンDで強化牛乳に含まれる量(約100 IU(2.5μg)/カップ)まで強化されている。 栄養表示ラベルに実際の量がリストされている。
米国とカナダの両方で、ビタミンDを含む粉ミルクの強化が義務付けられている。米国では40~100 IU (1~2.5μg)/ 100 kcal、カナダでは40~80 IU (1~2μg)/ 100 kcalである。
NCI/Office of dietary suppliments/ Fact Sheet for Health Professionals/Vitamin D https://ods.od.nih.gov/factsheets/VitaminD-HealthProfessional/  Nov. 9. 2019。
5/35 Sources of vitamin D


4.ビタミンDの骨への効用

米国国立がん研究所(NCI)によると、ビタミンDは脂溶性ビタミンである。幾つかの食品に含まれており、サプリメントでも摂取できる。ビタミンDは日光に当たることにより皮膚で作られる。日光や食事やサプリメントで摂取するビタミンDは生物学的に不活性型であり、体内で2回の作り替え(水酸化)を経て活性型となる。
十分なビタミンDがないと骨は細く、脆く、いびつになる。十分なビタミンDは小児でくる病を予防し、成人で骨軟化症を予防し、カルシウムとビタミンDは高齢者の骨粗鬆症を予防する。
NCI/Office of dietary suppliments/ Fact Sheet for Health Professionals/Vitamin D https://ods.od.nih.gov/factsheets/VitaminD-HealthProfessional/ Nov. 9. 2019.
Introduction. 1/33. 


米国国立がん研究所(NCI)によると、骨および一般的な健康のための25(OH)D(ビタミンD)の最適な血清濃度は確立されていない。これらは、選択された生理学的意義に応じて、人生の各段階で異なる可能性がある。また、血清25(OH)DはビタミンDへの暴露のバイオマーカー(太陽、食物、および栄養補助食品から)として機能するが、どのレベルが健康への影響のバイオマーカーとして機能する範囲かは明確に確立されていない。
NCI/Office of dietary suppliments/ Fact Sheet for Health Professionals/Vitamin D https://ods.od.nih.gov/factsheets/VitaminD-HealthProfessional/  Nov. 9. 2019.
Vitamin D and Health.14/33.


津川尚子によると、血中25(OH)D(ビタミンD)濃度が低下する、または血中カルシウム濃度が低下すると、副甲状腺ホルモン(PTH:パラソルモン)が分泌され、小腸からのカルシウムの吸収促進、腎臓からのカルシウム再吸収、骨からのカルシウム動員(放出)を行い、血中カルシウム濃度を上昇させる。また、副甲状腺ホルモン(PTH)は腎臓に作用し、25(OH)Dから1,25(OH)2Dの産生を促進する。
1.25(OH)2Dや血中カルシウム濃度の上昇は、副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌を抑制する。
津川尚子。ビタミンDの構造・代謝・作用。平田結喜緒監修。竹内靖博、杉本利嗣、成瀬光栄編集。甲状腺・骨代謝疾患診療マニュアル。p7-11。改訂第2版。診断と治療社。東京。2015.1.5。

  1. ビタミンDは、脂溶性ビタミンであり、たんぱく質と結合して、ビタミンD、ビタミンD( 25(OH)D )、ビタミンD( 1,25(OH)2D)として血液中に存在する。
  2. ビタミンDは血液中のカルシウムとリンの濃度を調整する。
  3. ビタミンDは重要なホルモンである。
  4. 骨は常にリフォームを繰り返している。つまり、骨は常に骨吸収(破骨)と骨形成(造骨)を繰り返し、新しい骨に作り替えられているので、材料となる血液中のカルシウム量は重要である。
  5. ビタミンD(1,25(OH)2D)は腸管よりカルシウムとリンの吸収を促進する。
  6. ビタミンD(1,25(OH)2D)は骨に作用して、カルシウムやリンを効率良く骨に蓄積する。
  7. ビタミンDは食品として摂取するか、日光に当たり皮膚で合成するか、サプリメントとして摂取される。
  8. 1,25(OH)2Dは活性型ビタミンDと呼ばれ、25(OH) Dから作られる。また、薬物として処方される。
  9. 1,25(OH)2Dの血中濃度は、25(OH) Dの約千分の1、20-70pg/mlである。
  10. 25(OH) D(ビタミンD)の血中半減期は約3週間から30日、活性型ビタミンD(1,25(OH)2D)の血中半減期は約1日である。
  11. 25(OH) Dの血中濃度測定は骨粗鬆症に対し2018年9月に保険収載された。

5.骨以外部位でのビタミンDの効用

Pitzらは報告した。ビタミンDは骨の成長や再生だけでなく、細胞増殖、神経筋、免疫機能、炎症を変化させている。最近の多くの研究では、ビタミンDの欠乏は、呼吸器感染症や呼吸器疾患、自己免疫疾患、各種がん、糖尿病、痴ほう症、うつ病、妊娠結果に関連する可能性がある。
Pilz et al. Rationale and Plan for Vitamin D Food Fortification: A Review and Guidance Paper. Front. Endocrinol., 17 July 2018 | https://doi.org/10.3389/fendo.2018.00373.


秋葉直志、浦島充佳らは報告した。肺がんに対する二重盲検ランダム化試験を実施し、非小細胞肺がん患者において、ビタミンDサプリメントは、低25(OH)Dレベル<20ng/mLで、初期肺腺がん患者の生存を改善した。
秋葉直志、浦島充佳ら.ビタミンDサプリメントと非小細胞肺がん患者の生存:無作為二重盲検プラセボ対照試験。Clin Cancer Res. 2018 Sep 1;24(17):4089-4097.


津川尚子によると、主なビタミンDの作用は、ビタミンD受容体(VDR)を介した1,25(OH)2Dの作用である。VDRは全身の組織にあり、小腸、腎臓、骨においてカルシウム代謝調節を行っている他、細胞増殖、分化調節作用、免疫調節作用、骨格筋機能、血圧調節作用、心血管系疾患関与などを行う。
25(OH)Dは活性型ビタミンDではないが、PTH分泌抑制作用、骨折転倒予防、心血管系、免疫系疾患との関係が疫学研究で数多く報告されている。
津川尚子。ビタミンDの構造・代謝・作用。平田結喜緒監修。竹内靖博、杉本利嗣、成瀬光栄編集。甲状腺・骨代謝疾患診療マニュアル。p7-11。改訂第2版。診断と治療社。東京。2015.1.5


井上大輔によると、多くの疾患と25(OH)D濃度低値との関連が示されている。その中には、癌、心血管イベント、結核、認知症、うつ病、高血圧、メタボリックシンドローム、肥満、2型糖尿病などがある。しかし、ビタミンD介入により改善効果が示されたものはほとんどない。ビタミンD不足や欠乏は原因ではなく、疾患に随伴する結果に過ぎないという考え方が一般化しつつある。
井上大輔。ビタミンD不足・欠乏の臨床的意義。平田結喜緒監修。竹内靖博、杉本利嗣、成瀬光栄編集。甲状腺・骨代謝疾患診療マニュアル。p202-6。改訂第2版。診断と治療社。東京。2015.1.5。


6.血液中カルシウムの調節


  1. PTH (副甲状腺ホルモン)
  2. ビタミンD
  3. カルシトニン(甲状腺ホルモンの一種)

7.PTH(副甲状腺ホルモン)


  1. PTH(パラソルモン)は副甲状腺から分泌される副甲状腺ホルモンである。
  2. カルシウムが低下するとPTHの分泌が促進される。
  3. PTHの作用
    1. 骨からカルシウムを放出する。
    2. 腎臓でのカルシウムの排出を抑制する。
    3. 腎臓でのビタミンDの活性化を促進する。
  4. 岡崎 亮。日老医誌 2009:46;125-7.
    1. 血清カルシウムが低下するとPTH分泌が亢進する。
    2. 持続的にPTHが分泌されると、骨吸収が骨形成より強く、骨量は低下する。
    3. PTHの上昇は一般的に骨密度減少速度の増加と骨折危険度上昇をもたらす。
    4. 薬剤として間欠的にPTHを投与すると、骨形成が骨吸収を上回り、骨量は増加する。

8.カルシトニン(甲状腺ホルモンの一種)


  1. Ca2+ 低下作用
  2. 食後の血中Ca増加によって分泌され、血中Ca濃度を下げる
  3. 骨へCa2+沈着:骨へのリン酸Caの沈着を促進させ、血中Caイオンを低下
  4. 尿へCa2+排出

9.高カルシウム血症の症状

悪心、嘔吐、食欲低下、口渇感、多飲、多尿、脱力、意識障害。


10.ビタミンD過剰による健康被害

ビタミンDの過剰により、高カルシウム血症が起こり、食欲不振、体重減少、多尿、不整脈などの症状がある。
より重症なものでは、血管や組織の石灰化が起こり、心血管や腎臓に障害が起こる。腎結石の頻度が増す可能性がある。


過剰ビタミンDによる健康被害
米国国立がん研究所(NCI)によると、ビタミンDの毒性としては、食欲不振、体重減少、多尿、不整脈などの非特異的な症状を引き起こす可能性がある。さらに深刻なことに、カルシウムの血中濃度を上昇させ、血管や組織の石灰化を引き起こし、その後、心臓、血管、腎臓に損傷を与える。閉経後の女性によるカルシウム(1,000 mg /日)とビタミンD(400 IU、または10μg)の両方のサプリメントの使用は、7年間で腎結石のリスクが17%増加した。一貫して500 nmol / L(> 200 ng / mL)を超える血清ビタミンD(25(OH)D)濃度は、潜在的に毒性があると考えられている。
過剰の日光暴露は、体が作成するビタミンDの量を制限するので、ビタミンD中毒の原因にはならない。
上限を超える長期摂取(9歳以上で4,000IU/日、または100μg/日)は、健康への悪影響のリスクを高める。ほとんどの報告では、ビタミンD濃度の毒性閾値は10,000~40,000 IU /日(250~1,000μg/日)であり、血清25(OH)D濃度は500~600 nmol / L(200~240 ng / mL)であることが示唆されている。10,000 IU /日未満(250μg/日未満)の1日摂取量では毒性の症状は起こりにくいが、FNB(米国食事栄養委員会)は、全国調査データ、観察研究、およびビタミンD摂取量と血清25(OH)Dレベルがさらに低いと有害である可能性があることを示唆する新しい経時的な健康への影響を指摘した。FNB(米国食事栄養委員会)は、さらに低い血清レベル(約75~120 nmol / Lまたは30~48 ng / mL)はすべての原因による死亡率の増加、膵臓などの一部の部位でのがんのリスクの増加、心血管イベントのリスクの増加、高齢者の転倒や骨折の増加に関連しているのと同様に、約125~150 nmol / L(50~60 ng / mL)を超える血清25(OH)Dレベルは避けるべきであると結論付けた。FNB委員会は、5,000 IU /日(125μg/日)のビタミンD摂取が100~150 nmol / L(40~60 ng / mL)の血清25(OH)D濃度を達成したが、それ以上にはならない研究を引用した。この摂取値に20%の不確実性係数を適用すると、4,000 IU(100μg)の上限が得られ、FNBが9歳以上の子供と大人に適用した。
NCI/Office of dietary suppliments/ Fact Sheet for Health Professionals/Vitamin D https://ods.od.nih.gov/factsheets/VitaminD-HealthProfessional/  Nov. 9. 2019。
20/35 Health risks from excessive vitamin D.


11.低カルシウム血症の症状

テタニー(筋肉のけいれん(痙攣))


12.ビタミンDの基準値(正常値)

ビタミンDの基準値(正常値) 
ビタミンDとして25(OH)Dを測定している。1ng/mL=2.5nmol/L

 

25(OH)D

ng/ml

nmol/L

日本
BML

基準値

30~100

75~250

不足状態

20以上~30未満

50以上~75未満

欠乏症

20未満

50未満

米国
NCI

基準値

20以上~50未満

50以上~125未満

不十分

12以上~20未満

30以上~50未満

不足

12未満

30未満

Holick

推奨値

30~60

75~150

基準値

20~100

30~250

欠乏

20未満

50未満

中毒

150を超える

375を超える

Holick. Vitamin D Deficiency. N Engl J Med 2007;357:266-81.


13.ビタミンD正常者の比率

ビタミンD正常者はMiyamotoらによると 20%台しか存在しない。ビタミンDの不足・欠乏は決して稀ではない。

日本人のビタミンD値
ビタミンDとして25(OH)Dを測定している。1ng/mL=2.5nmol/L

 

正常

不十分

不足

25(OH)D
ng/ml

30~100

20以上~30未満

20未満

39―49歳 女性

21.0%

47.4%

31.6%

50-59歳 女性

24.7%

48.3%

27.0%

60-64歳 女性

27.7%

57.4%

14.9%

Miyamoto T. et al. Keio J Med 65 (2) : 33–38, 2016


14.ビタミンD推奨摂取量

ビタミンD推奨摂取量

1μg=40IU

 

対象

目安

上限

日本

18歳以上

5.5μg

220IU

100μg

4,000IU

妊婦

7μg

280IU

 

 

授乳

8μg

320IU

 

 

米国NCI

9~70歳

15μg

600IU

100μg

4000IU

71歳以上

20μg

800IU

 

 

厚生労働省によると日本人ビタミンD摂取量は:平均値:7.5μg、標準偏差:8.0μg、中央値:3.8μgである。

注)国民のビタミンDの平均摂取量は目安には足りているが、これでは、現実的には多くの人、特に日に当たらない人や高齢者で不足する可能性が高い。
日本のビタミンD推奨摂取量は1日5.5μgだが、上限は1日100μgとしている。海外はもとより国内で多くの住民がビタミンD欠乏や不足に陥っている現状を考えると、1日5.5μgの摂取は不十分であろう。市販されている多くのサプリメントのビタミンD含有量を見ると、1日5.5μgと記載してあり、必要量の100%を充足していると記載している。
自分のビタミンD濃度がどの程度か知らずに、不足か欠乏か充足かを判断することはできない。また摂取するなら、1日何μgを摂取するかによってビタミンDが充足できるかが決まってくるだろう。

岡崎 亮.日老医誌 2009:46;125-7.

  1. ビタミンDを含む食品は限られており、補給するには日光に当たることが重要である。
    (注:日光に当たるマイナス面では、皮膚の老化、皮膚がんの増加、熱中症などの問題がある)
  2. ビタミンD不足の予防には、高齢者では少なくとも1日10μg、ビタミンD不足があれば20μg程度は必要であろう。


秋葉直志、浦島充佳ら.Clin Cancer Res. 2018 Sep 1;24(17):4089-97.

  1. 毎日30μg、1年間のビタミンD内服群では、 血液中のビタミンD(25-ハイドロキシビタミンD)濃度は平均21ng/mLから平均39ng/mLと統計的に有意に上昇した。
    (注:日光に当たるマイナス面では、皮膚の老化、皮膚がんの増加、熱中症などの問題がある)
  2. ビタミンDのプラセボ内服群では、22から24ng/mLと統計的には不変であった。
  3. 血清カルシウム濃度は両群で不変であった。
    (日本)ビタミンDの18歳以上の摂取の上限は、100μg(4,000IU)である。



ビタミンDと健康:米国国立がん研究所(NCI)によると、ビタミンD摂取量の増加に応じて血清25(OH)Dレベルが増加するが、その関係は明らかではない理由により非線形である。増加は、例えば、ベースラインの血清レベルとサプリメントの持続時間によって異なる。血清25(OH)Dを> 50 nmol / L(20ng/ml)に増やすには、ベースライン<50 nmol / L(20ng/ml)からレベルを上げるよりも多くのビタミンDが必要である。ビタミンDの投与量が1日あたり1,000 IU未満(25μg未満)の場合、血清25(OH)Dが急激に増加する。より高い、より平坦な反応は、より高い1日用量で見られる。用量が≥1,000IU /日(25μg/日以上)である場合、血清25(OH)Dの上昇は、摂取量40 IU(1μg)ごとに約1 nmol / Lである。600 IU /日以下(15μg/日以下)の用量での研究では、血清25(OH)Dの上昇は、ビタミンDを40 IU(1μg)摂取するごとに約2.3 nmol / L(0.92ng/ml)であった。
2011年、米国内分泌学会は、ビタミンDの臨床実践ガイドラインを発行し、カルシウム、骨、筋肉代謝に対するこのビタミンの効果を最大化するために、25(OH)Dの望ましい血清濃度は> 75 nmol / L(> 30 ng / ml)であると述べた。また、25(OH)Dの血清レベルを75 nmol / L(30 ng / ml)を超えて一貫して上昇させるには、成人では少なくとも1,500-2,000 IU /日(37.5-50μg/日)子供と青少年ではビタミン1,000 IU/日が必要であろう。
NCI/Office of dietary suppliments/ Fact Sheet for Health Professionals/Vitamin D https://ods.od.nih.gov/factsheets/VitaminD-HealthProfessional/  Nov. 9. 2019.
14/35 Vitamin D and health.


15.ビタミンDの基礎知識

  1. ビタミンDはビタミンD2からビタミンD7まである。
  2. ビタミンD1は誤った化合物に命名していたので、その後取り消しになり、存在しない。
  3. 生理学的に重要なのは、ビタミンD2(エルゴカルシフェロール)とビタミンD3(コレカルシフェロール)のみである。ビタミンD2とビタミンD3は同等の作用と考えられている。
  4. ビタミンDの作用は腸管からのカルシウムの吸収を促進し、適切な血清カルシウムとリンの濃度を維持する。骨の石灰化(カルシウム沈着)を起こし、骨の成長や再構築に必要である。
  5. ビタミンDはカツオ、アンコウ肝、サケなどの魚類、キクラゲ、シイタケなどのシイタケ類に含まれている。
  6. ビタミンDは子供のクル病予防や骨軟化症を予防し、老人の骨粗しょう症を防ぐ。
  7. 春から夏にかけて、紫外線が多い正午頃に30分程、顔や手足を日光にさらすことで、十分なビタミンDが皮膚で生成される。
  8. ビタミンD3の投与量や摂取量の単位:1μg=40IU
    1. (μg=マイクログラム:100万分の1グラム)
    2. (IU=国際単位:international unit)
  9. ビタミンDの血液中の濃度の代わりに、ビタミンDの測定は25位水酸化ビタミンD3(25(OH)D3)の濃度を使用する:1ng/mL=2.5nmol/L
    1. (nmol/L=1リットル中に1ナノモル(10億分の1モル))
    2. (ng/mL=1cc当たりのナノグラム(10億分の1グラム))
  10. 以下は同じものである:
    1. 25位水酸化ビタミンD3
    2. 25-ヒドロキシビタミンD3
    3. 25(OH)D3
    4. カルシディオール(calcidiol)
  11. 25(OH)D3血中濃度の基準値
    • (ア)日本の基準値は30-100ng/mL
    • (イ)不足は、子供はくる病、骨軟化症、大人は骨粗しょう症の危険あり。
    • (ウ)過剰は、副作用の危険あり。
      1. 25-ヒドロキシビタミンD3または25(OH)D3は、ビタミンDの25位に水酸基(ヒドロキシ基、-OH)が付着した物質。
  12. 脂溶性ビタミンには、ビタミンA、 D、 E、 Kがある。脂溶性ビタミンは多すぎると過剰症を引き起こす。
  13. ビタミンD摂取は日本では成人で、目安5.5μg、上限100μg、または目安220IU、上限4,000IUを勧めている。
  14. ビタミンD摂取は米国では成人に15μg 、600IUを勧めている。
  15. ビタミンD2は植物由来
  16. ビタミンD2は酵母から得られるエルゴステロールが紫外線照射と熱異化反応で合成される。
  17. 日本人ビタミンD摂取量:平均値:7.5μg、標準偏差:8.0μg、中央値:3.8μg


16.ビタミンD3の体内代謝

  1. ビタミンD3は人の皮膚で作られ、体中を循環する。
  2. 7-デヒドロコレステロール(7-dehydrocholesterol)はビタミンD3の前駆体(プロビタミンD3)である。
  3. アセチル CoA(アセチルコエンザイムA:アセチル補酵素A)から7-デヒドロコレステロールができる。7-デヒドロコレステロールは還元されるとコレステロールになり、ステロイドホルモンになる。
  4. (皮膚での代謝)7-デヒドロコレステロールは表皮に多く含まれ、太陽光の照射でプレビタミンD3に変化する。プレビタミンD3は体温でビタミンD3(コレカルシフェロール:cholecalciferol)に変化する。
  5. (血管内の移動)ビタミンD3は水には溶けないので、血液を循環するビタミンD結合たんぱく質(DBP: vitamin D binding protein)に結合し、ビタミンD3―ビタミンD結合たんぱく質となり、血管内の血流を流れる。
  6. (肝臓での代謝)ビタミンD3は肝臓に行くと、ビタミンD3の25の位置に水酸基(ヒドロキシ基、-OH)が付着し、25-ヒドロキシビタミンD3(25(OH)D3、カルシディオール、calcidiol)に代謝され、血中に出る。
  7. (血管内の移動)25-ヒドロキシビタミンD3(25(OH)D3)は水には溶けないので、血液を循環するビタミンD結合たんぱく質(DBP: vitamin D binding protein)に結合し、25-ヒドロキシビタミンD3―ビタミンD結合たんぱく質となり、血管内の血流を流れる。。
  8. (腎臓での代謝)25-ヒドロキシビタミンD3は腎臓に行くと、25-ヒドロキシビタミンD3に、さらに1αの位置に水酸基(ヒドロキシ基、-OH)が付着し、1α,25-ジヒドロキシビタミンD3(1,25(OH)2D3、カルシトリオール、calcitriol)に代謝される。
  9. (血管内の移動)1α,25-ジヒドロキシビタミンD3(1,25(OH)2D3)は体内で最も働くビタミンDであり、活性型ビタミンDとも言われている。1α,25-ジヒドロキシビタミンD3は水には溶けないので、血液を循環するビタミンD結合たんぱく質(DBP: vitamin D binding protein)に結合し、1α,25-ジヒドロキシビタミンD3―ビタミンD結合たんぱく質となり、血管内を流れる。。
  10. 1α,25-ジヒドロキシビタミンD3(1,25(OH)2D3)は腸管のカルシウムやリンの吸収を促進する。また副甲状腺ホルモンPTHの合成を阻害する。
  11. 副甲状腺ホルモンPTHは1α水酸化酵素を促進し1α,25-ジヒドロキシビタミンD3(1,25(OH)2D3)を作成する。1α水酸化酵素は低カルシウム血症や低リン血症によっても促進される。
  12. (体内)ビタミンD受容体は体内のすべての組織や細胞の核内に存在する。
  13. 1α,25-ジヒドロキシビタミンD3は標的細胞の細胞核内に存在するビタミンD受容体(VDR:vitamin D receptor)に特異的に結合し、ビタミンD依存性たんぱく質の遺伝子発現を制御し、必要な仕事を行う。体の全ての細胞が標的細胞で、全ての細胞に対する普遍的な仕事をしている可能性がある。
動物

7-デヒドロコレステロール
(ビタミンD3の前駆体)
(プロビタミンD3

紫外線と体温

ビタミンD3
(コレカルシフェロール)

植物

エルゴステロール

紫外線と熱

ビタミンD2


17.参考文献

  1. NCI/Office of dietary suppliments/ Fact Sheet for Health Professionals/Vitamin D https://ods.od.nih.gov/factsheets/VitaminD-HealthProfessional/ Nov.9,2018
  2. Vuolo L1, Di Somma C, Faggiano A, Colao A. Vitamin D and cancer. Front Endocrinol (Lausanne). 2012 Apr 23;3:58.
  3. ビタミンD。ビタミン総合辞典。pp44-81。日本ビタミン学会編集。第3刷、朝倉書店。東京2016年。 
  4. 榊 利行。代謝研究に基づくビタミンD作用メカニズムの再考。生化学 87:4;438-444、2015.
  5. ビタミンD。「統合医療」情報発信サイト。厚生労働省「統合医療」に係る情報発信等推進事業。http://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c03/17.html 
  6. 「健康食品」の安全性・有効性情報。 https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail221.html 2019.6.23
  7. ビタミンDの働きと1日の摂取量。健康長寿ネット。https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/vitamin-d.html 2019.2.1 
  8. Holick. Vitamin D Deficiency. N Engl J Med 2007;357:266-81.
  9. 内科学。黒川 清ら編集。東京、文光堂。1999年。
  10. Miyamoto T et al. Vitamin D Deficiency with High Intact PTH Levels is More Common in Younger than in Older Women: A Study of Women Aged 39-64 Years. Keio J Med 65 (2) : 33-38, 2016
  11. Pilz et al. Rationale and Plan for Vitamin D Food Fortification: A Review and Guidance Paper. Front. Endocrinol., 17 July 2018 | https://doi.org/10.3389/fendo.2018.00373.
  12. 平田結喜緒監修。竹内靖博、杉本利嗣、成瀬光栄編集。甲状腺・骨代謝疾患診療マニュアル。改訂第2版。診断と治療社。東京。2015.1.5。

18.ビタミンの父、高木兼寛

1853年、ペリーが来航し、その後に雄藩で近代的海軍が始まった。
1868年に王政復古の大号令が発せられ明治新政府が樹立した。日本ではビタミンB1欠乏により発症する脚気が猛威を振るっていたが、原因も治療も当時は不明であった。
1884年、髙木兼寛の進言で全海軍の食事大改革が行われ、海軍における脚気が克服された。
1906年、エイクマン(オランダ)が、この栄養欠陥説を発展させ、ようやくビタミン学説に辿り着いたのは22年後であった。
1929年、エイクマンは抗脚気ビタミン、つまりビタミンB1発見の功を以てノーベル医学生理学賞を受けた。


1872年24歳 髙木兼寛、海軍省九等出仕。
1875歳27歳 髙木兼寛ロンドンのセント・トーマス病院医学校に留学する。
1975年 軍艦「筑波」がホノルル、サンフランシスコでは問題なかったが、帰りに脚気が頻発した。
1976年 脚気の細菌説がドイツのベルツにより唱えられた。
1978年 軍艦「筑波」がシドニーでは問題なかったが、帰りに脚気が頻発した。
1880年11月 32歳 髙木兼寛はロンドンのセント・トーマス病院医学校から帰国した。
1881年5月 33歳 髙木兼寛は松山棟庵らと銀座4 丁目に成医会講習所(東京慈恵会医科大学前身)設立、所長になる。
1882年6月 海軍軍医大監に任ぜられる。34歳 8月、有志共立東京病院(我が国初の私立施療病院を設立。
1883年 1882.12.19から1883.9.16の航海 ニュージーランド、チリー、ペルー、ハワイ 軍艦「龍驤(りゅうじょう)」、乗務員378人、脚気169人、死亡23人。
1883年 高木兼寛は食物中のタンパク不足が脚気の原因説を唱えた。軍艦「筑波」の海軍生徒訓練航海の予定あり。高木は食事を金銭でなく現物支給、龍驤(りゅうじょう)」と同じ航路で実施したいと主張した。
1883年11月 35歳 海軍将兵の脚気予防策として、兵食改善の要を明治天皇に奏上する。
1884年2月 全海軍の食事大改革。食費給付を現物支給に改革。内容も変更。
1884.2.3―1884.11.16ニュージーランド、チリー、ペルー、ハワイ 軍艦「筑波」、乗務員333人、脚気15人、死亡0人。脚気にかかった15名中、8名は肉を食べず、4名はコンデンスミルク飲まず。食事が脚気発症に重要な役割を果たすことを証明した。
1885年4月 37歳、海軍軍医総監に任じられた。

参考文献
ビタミンの父 高木兼寛。パンフレット。高木兼寛顕彰会。宮崎。
吉村 昭著。白い航跡(上)(下)。講談社。東京。1994.5.15。
山崎震一(しんいち)著。ウイリアム・ウイルス伝。書籍工房早山。東京。2019.1.25


19.後藤喜代子・ポールブルダリ科学賞受賞(秋葉直志)

慈恵大学附属柏病院の秋葉直志院長と附属病院の浦島充佳教授との共同研究で、ビタミンDサプリメントが、がんの再発・死亡予防に有効なことがわかり、世界有数雑誌である、「Clinical Cancer Research(臨床癌研究誌)」に論文が掲載された。

公益財団法人 後藤喜代子・ポールブルダリ癌基金協会は日本人の愛妻を肺がんで亡くしたフランス人 Paul Bourdarie 氏の浄財5億円を基金とした協会である。ここが主催する「癌撲滅に寄与する基礎医学及び臨床医学に関する優秀な学術論文を著した日本人医学者を顕彰する事業」において、この度2018年度「第7回 後藤喜代子・ポールブルダリ科学賞」を当院(慈恵医大柏病院)の秋葉直志院長が受賞した。
本科学賞はフランス人科学者を含む7名の諮問委員会で、23編の論文の中から秋葉院長が第一著者の原著論文が最も高い評価を受け、科学賞に選ばれた。
授賞式は、令和元年6月4日、港区南麻布の広大な緑の敷地に在るフランス大使公邸で駐日フランス大使ローラン・ピック氏臨席の元で盛大に開催された。
秋葉院長より、「肺がんのオプジーボ治療は年間約1,000万円の治療費がかかるが、ビタミンDはサプリメントで年間約1万円程度、日光浴であれば無料で補給できること、慈恵大学学祖高木兼寛先生はビタミンが発見される前に脚気を食事で克服し多くの命を救ったこと、顕彰金350万円を活用し研究を拡大していきたい」との挨拶があった。


20.肺がんに対するビタミンDサプリメント

肺がんの治療は手術、放射線、抗がん剤、免疫療法の4つの柱で成り立っており、サプリメントによる治療は標準治療として顧みられていない。ビタミンDの血中濃度が低いと発がんや再発のリスクが高いとの報告はあった。本論文は呼吸器外科と分子疫学研究部の8年の研究で、肺がんの治療におけるビタミンDサプリメントの有効性を検証した。
結果は、ビタミンDが不足していた早期の肺腺がんでは、ビタミンDを内服すると、プラセボ内服より成績がよかった。この結果は画期的である。過剰に摂取しなければビタミンD服用には副作用がほとんどない。再発予防だけでなく、新たな治療法となる可能性もある。高騰するがん治療と異なり、ビタミンDは安価であり、日光浴で補給することも可能である。
多くの日本人や各国でビタミンDは不足や欠乏している。これは日光に当たらないことや、高齢者では皮膚での合成能力の低下していることが原因である。通常の食事で不足していたら、肺がん治療の観点でだけでなく、健康を維持するためにも補給が必要である。


21.受賞論文紹介

ビタミンDサプリメントと非小細胞肺がん患者の生存:無作為二重盲検プラセボ対照試験」 著者:秋葉直志、浦島充佳ら.雑誌:Clin Cancer Res. 2018 Sep 1;24(17):4089-4097.

要約
目的:高血清25(OH)Dレベルは、早期非小細胞肺がんで、良い予後と関係している。そこで、ビタミンDサプリメントが非小細胞肺がん患者の予後を改善することができるかどうかを調べた。
患者と方法:術後1年の間ビタミンDサプリメント内服(30㎍、または1,200IU/日)とプラセボ内服を比較した無作為(ランダム化)二重盲検研究を行った。一次および二次評価目標は、無再発生存(RFS)と生存率(OS)である。事前特定したサブグループ解析は、ステージ(早期 対 進行)、病理組織(腺がん 対 他)と25(OH)Dレベル(<20ng/mL 対 ≥20ng/mL)で層別化して実行した。ビタミンD受容体(VDR)とビタミンD-結合タンパク質(DBP)の遺伝子多型型と予後の関係も調べた。
結果:非小細胞肺がん(n = 155)患者は、ビタミンD群(n = 77)またはプラセボ群(n = 78)に無作為割付けして、3.3年の中央値の経過を見た。それぞれ、再発と死亡は40人(28%)と24人(17%)に起きた。全体で、無再発生存(RFS)か生存率(OS)に関する有意差は、プラセボ群とビタミンD群を比較して見られなかった。しかし、分析を25(OH)D<20ng/mLで初期腺がんのサブグループに制限することによって、ビタミンD群はプラセボ群より、かなり良い5年の無再発生存(RFS)(86%対50%(P = 0.04))と生存率(OS)(91%対48%(P = 0.02))を示した。調べられた遺伝子多型、DBP1 TTとCDX2  AA/AG遺伝子型は、多変量解析でさえ、より良い予後の指標であった。
結論:非小細胞肺がん患者において、ビタミンDサプリメントは、低25(OH)Dレベル<20ng/mLで、初期肺腺がん患者の生存を改善するかもしれない。


22.最近のがんとビタミンD論文

ここ数年、がんとビタミンDに関する英文論文はPubMedによると毎年500本以上ある。


Arazら(2019年)は、トルコで肺がんと診断された247人の患者の分析をした。153人の患者のビタミンD濃度は15ng/mL以下(欠乏)であった。65人の患者は15-30ng/mL(欠乏または不充分)のレベルで、29人の患者はビタミンDが30ng/mLを超えた。32人のビタミンD補充が300.000IU以上で、215人は300.000IU以下であった。研究において、診断の時点のビタミンDと補充量は、化学療法治療効果を変えなかった。
Araz M, et al. Does Vitamin D Replacement Alter the Chemotherapy Outcome in Lung Cancer. EJMO 2019;3(2):112-115.


Degirmenciogluら(2019年)は462人の肺がん患者のコホート研究を報告した。肺がん患者と対照者を比較すると、血清25(OH)D濃度(ビタミンD濃度)、カルシウム、LDH、マグネシウム濃度は有意に患者群で低い。血清25(OH)D濃度は、腺がんと扁平上皮がんを比較すると、腺がんで有意に低い。血清25(OH)D濃度は、病期が進行すると、有意に低い。LDH濃度は、病期が進行すると、有意に高い。
Degirmencioglu S, et al. Clinical Significance of Serum 25-Hydroxyvitamin D Levels in Non-Small Cell Lung Cancer. EJMO 2019;3(2):139-143


Wuら(2019年)は、ビタミンDの疫学的研究と臨床試験における現在の知識を概説した。特に、がんにおけるビタミンDの役割をより良く理解するために、がん細胞、がん幹細胞と腫瘍微小環境である基質におけるビタミンDの抗がん作用を要約し議論した。前立腺がん、乳がん、大腸がん、上部消化管がん、その他のがん疫学的研究について論じた。がん治療のためのビタミンDとその類似化合物による14の臨床研究の論文を紹介した。その結果、ここにビタミンDを新しいそして経済的な抗がん剤であるとして再提案した。
Wu X1, et al. Repurposing vitamin D for treatment of human malignancies via targeting tumor microenvironment. Acta Pharm Sin B. 2019;9(2):203-219.

Cusutoら(2019年)は、ビタミンD不足は、がん患者でしばしば観察されると述べている。幾つかの研究で、ビタミンD3(25-VD)血清レベルが低いことと肺がんの予後が悪いことが関連していると報告した。
45人の患者で研究を行った。肺癌免疫療法のニボルマブ(オプジーボ:Nivolumab)血液中濃度は、ビタミンD代謝経路関連の遺伝子(一塩基遺伝子多型:single nucleotide polymorphisms:SNP)に影響を受けた。ビタミンD結合タンパク質VDBP AC/CC遺伝子型とニボルマブ治療15日目の基本的なビタミン濃度低下(25-VD<10ng/mL)は、腫瘍進行と関係するニボルマブ濃度低下(<18.7ug/mL)を予測した。これは、非小細胞肺がん治療の現実でニボルマブ(オプジーボ:Nivolumab)濃度をビタミンDマーカーが予測することを示した最初の研究である。本研究において、ビタミンD3(25-VD)はニボルマブ(オプジーボ:Nivolumab)濃度に影響した、ビタミンD3(活性型:1、25-VD)ではない。ここでは、ニボルマブ(オプジーボ:Nivolumab)とVD濃度を評価しただけである、免疫細胞に対する影響ではない。ビタミンD欠乏は免疫系に関与し再発があるかもしれないし、それは治療に直接関連がある。
今回の分析は予備的で、いくつかの限界があることは重要である。45人の患者だけで分析され、そして、遺伝子VDBP SNPは境界線上の影響だった。
ビタミンDは、免疫系を管理することができる。その合成は、皮膚組織の紫外線光の作用から始まる。ビタミンD3(コレカルシフェロール:Cholecalciferol)は、チトクロムP-450(CYP、27A1、2R1)を介して、肝臓で25-ヒドロキシビタミンD3(カルシフェデロール:calcifediol:25-VD)に水酸化される。腎臓において、1α、25-ジヒドロキシビタミンD3(カルシトリオール:calcitriol :1、25-VD、活性型)は、CYP27B1を通して合成されて、ビタミンD結合タンパク質(VDBP:vitamin D binding protein)を通して、血流で輸送される。25-VDのcalcitroic酸(24、25-VD)への不活化は、CYP24A1によって続けられる。
我々の研究は臨床医に、治療を始める前に、25-VDレベルとVDBP rs7041遺伝子型を評価することにより、15日のニボルマブ(オプジーボ:Nivolumab)濃度を定量化し、投薬量の加減やVDサプリメント追加を考える腫瘍進行の危険性を減らすことを勧める。そして、これらの分析には予備的で、いくつかの限界があることは重要である。
Cusato J1, et al. Influence of Vitamin D in Advanced Non-Small Cell Lung Cancer Patients Treated with Nivolumab. Cancers (Basel). 2019;11(1). 125


Ngら(2019年)は139人のmFOLFOX6+ベバシズマブ化学療法を行った転移性進行大腸がん患者に対し、高容量ビタミンD投与と標準投与、2重盲検、2相試験、くじ引き研究を行った。25ハイドロキシビタミンD濃度が、研究を始めた時点で十分な濃度に達していたのはわずか9%であった。全体生存率では有意な差はなかったが、無再発生存率は高容量ビタミンD群が有意に良好であった。
Ng K, et al. Effect of High-Dose vs Standard-Dose Vitamin D3 Supplementation on Progression-Free Survival Among Patients With Advanced or Metastatic Colorectal Cancer: The SUNSHINE Randomized Clinical Trial. JAMA. 2019;321(14):1370-1379


Liら(2019年)はメタアナリシス(複数研究統合解析)を行い、ビタミンD受容体(VDR)におけるBsm1、Apal、Taq1、Cdx-2の遺伝子多型が、肺がん罹患に関係するかを調べた。6つの論文を使用した。Bsm1、Taq1、Cdx-2の遺伝子多型は肺がん罹病しやすいことを示唆した。
Li M, et al. Association between Polymorphisms of Vitamin D Receptor and Lung Cancer Susceptibility: Evidence from an Updated Meta-analysis. J Cancer. 2019 Jun 9;10(16):3639-3649.


Scraggら(2019年)のビタミンD評価(ViDA)試験は、毎月のビタミンD補給の有効性を評価するための無作為化二重盲検プラセボ対照試験である。この研究は、ニュージーランドのオークランドで、50歳から84歳の5,110人の成人の間で行われ、介入はビタミンD 3(2.5 mg=100,000 IU)またはプラセボで、毎月参加者の家に郵送した。心血管疾患、転倒、非脊椎骨折、すべての癌の発生率に対するビタミンD補給の有益な効果を示さなかった。しかし、ビタミンD補給による以下の有益な効果が見られた。長期スタチン療法(高脂血症)を受けている参加者にスタチン服用の持続。また、25-ハイドロキシビタミン Dレベルが低い参加者の骨密度、動脈機能、喫煙者の肺機能(特にビタミンD欠乏症)にも見られた。月1回の高用量ビタミンD補給はさまざまな疾患を予防するわけではないが、ビタミンD欠乏症の人々の中間転帰には有益かもしれない。
Scragg RKR. Overview of results from the Vitamin D Assessment (ViDA) study. J Endocrinol Invest. 2019 May 23. [Epub ahead of print]


Zhuら(2019年)はオーストラリアで血清25(OH)D(ビタミン D)の皮膚がん以外のがんの発生率と死亡率の関係を調べた。血清25(OH)Dは、25~84歳の1994―1995年に3,818人の参加者(2,166人の女性)で測定した。全体的ながんの危険でなく、結腸直腸がんおよび乳がんの増加と関係していた。
Zhu K, et al. Lower serum 25-hydroxyvitamin D is associated with colorectal and breast cancer, but not overall cancer risk: a 20-year cohort study. Nutr Res. 2019;67:100-107.


Cehreliら(2019年)は非小細胞肺がんと診断した25人の患者を前向き研究に登録した。治療前の血清アルブミン、プレアルブミン、ビタミンD、亜鉛(Zn)、C反応性タンパク質(CRP)、IL-6、IL-1β、TNF-α、リポタンパク質リパーゼ(LPL)、およびグラスゴー予後スコア (GPS)を測定した。栄養不良および悪液質は、非小細胞肺がん患者の腫瘍学的転帰に悪影響を及ぼす。これらの栄養/炎症マーカーは、補助化学療法を受けている非小細胞肺がん患者における高リスクおよび生存率の低下の評価に有用であり得る。
Cehreli R, et al. Can Inflammatory and Nutritional Serum Markers Predict Chemotherapy Outcomes and Survival in Advanced Stage Nonsmall Cell Lung Cancer Patients? Biomed Res Int. 2019;2019:1648072.


Alsharairi(2019年)は成人の喫煙者と非喫煙者における栄養補助食品と肺がんリスクの前向き研究とランダム化比較試験(RCT)を行い、一貫性のない結果を得た。いくつかの前向き研究では、レチノール、β-カロチン、ビタミンB、ビタミンEなどのサプリメントを長期間大量に使用すると、現在および以前の喫煙者の肺がんリスクが高まることが示された。 RCTからの限られた証拠は、ビタミンDの補給が現在/以前の喫煙者における肺機能の改善と喘息リスクの軽減に効果的であることを示唆した。
ランダム化比較試験からの限られた証拠は、ビタミンDサプリメントが肺機能を向上させて、現在/元喫煙者で喘息危険を減らすことに、効果的なことを示唆した。栄養補助食品と肺がん危険の関係は、喘息にかかった喫煙者と非喫煙者でこれまで調べられなかった。
Alsharairi NA. The Effects of Dietary Supplements on Asthma and Lung Cancer Risk in Smokers and Non-Smokers: A Review of the Literature. Nutrients. 2019;11(4). pii: E725.


Câmaraら(2019年)は報告した。日光の少ない国々で、膀胱がん、乳がん、直腸がん、肺がん、食道がん、口腔がん、卵巣がん、膵臓がん、皮膚がん、胃がんの死亡率が増加した。アミロイド前駆体タンパク質、リアノジン受容体、ラパマイシン複合体1の哺乳動物標的、および最終糖化産物受容体が癌の予後不良に関連することもまた観察された。クロトータンパク質とビタミンD受容体は病気の予後の改善に関連していたが。 Nfr2は、癌におけるより悪い予後とより良い予後の両方に関連した。文献は、ビタミンD欠乏症が癌の進行に関与している可能性があることを示唆した。平均日光が低い国はがんによる死亡率が高いと結論付けることができる。
Câmara AB, et al. The Role of Vitamin D and Sunlight Incidence in Cancer. Anticancer Agents Med Chem. 2019 Mar 12. [Epub ahead of print]


Vojdemanら(2019年)は報告した。デンマークの首都圏における217,244人の癌の発生率との関連性を調べた。10 nmol / L(4ng/ml)のビタミンDの増分と、乳がん、結腸直腸がん、尿路がん、卵巣がん、子宮体がんの発生率との間に関連性は見られなかった。しかし、より高いレベルのビタミンDは、前立腺および血液癌と同様に非黒色腫と黒色腫皮膚癌のより高い発生率と関連していた。しかし肺癌の発生率は低かった。我々の研究では、ビタミンD濃度はいくつかの主要な癌の発生率とは関連がないが、より高い濃度は皮膚癌、前立腺癌、血液癌の発生率の上昇と肺癌の発生率の低下と有意に関連した。これらの結果は、ビタミンDによる癌に対する全体的な保護効果を裏付けるものではない。
Vojdeman FJ. et al. Vitamin D levels and cancer incidence in 217,244 individuals from primary health care in Denmark. Int J Cancer. 2019 Jul 15;145(2):338-346.


Zhang Yら(2019年)はビタミンDサプリメントが大人で低い死亡率と関係しているかどうか調査した。無作為対照化試験の系統的評価とメタアナリシス(多施設統合分析)。データ・ソースはメドライン、Embaseと2018年12月26日までのコクラン本部登録。無作為試験を選ぶための適格基準はビタミンDサプリメントを偽薬または無治療と比較している研究である。
合計52研究で75,454人の参加者である。ビタミンDサプリメントが、すべての原因死亡率(危険率0.98、95%の信頼区間0.95~1.02、I2=0%)、心血管死亡率(0.98、0.88~1.08、0%)または非-ガン(非心血管死亡率(1.05、0.93~1.18、0%))と関係しているというわけではない。ビタミンDサプリメントは、ガン死(0.84、0.74~0.95、0%)の危険性を統計学的にかなり減らした。ビタミンD3もビタミンD2も、すべての原因死亡率の統計的に有意な縮小と関係しているというわけではない。
ビタミンDサプリメントだけが、偽薬または無処置と比較して大人ですべての原因死亡率と関係しているというわけではありませんでした。ビタミンDサプリメントは、16%ガン死の危険性を減らしました。サプリメントが関係しているビタミンD3がすべての原因死亡率を下げるかどうか確定するために、更なる大規模な臨床試験は必要です。
Zhang Y, et al. Association between vitamin D supplementation and mortality: systematic review and meta-analysis. BMJ 2019; 366.


Zhang J ら(2019年)は報告した。p62は大腸癌で有意に上方制御されており、高p62レベルは大腸がん患者の予後不良の独立した危険因子であった。 P62は、試験管内でアポトーシスを阻害し細胞増殖を促進することによって大腸がんの移動および浸潤を促進し、そしてp62は生体内で腫瘍の増殖および転移を悪化させた。 Co-IPアッセイは、p62がビタミンD受容体と相互作用し、NRF 2 -NQO 1軸を標的にし得ることを示した。結論:我々の研究は、p62がアポトーシスを抑制し、ビタミンD受容体と相互作用して細胞増殖を促進することにより、大腸がんの癌遺伝子として機能することを示唆した。
Zhang J. et al. p62 functions as an oncogene in colorectal cancer through inhibiting apoptosis and promoting cell proliferation by interacting with the vitamin D receptor. Cell Prolif. 2019 May;52(3):e12585.


Zhang Xら(2018年10月投稿)は「ビタミDサプリメントによるがんの発生と死亡率に関する最新の無作為対照化試験の分析」を発表した。
目的:我々は発表された無作為対照化試験の結果を総合した。そして、低ビタミンDがガン発生率と死亡率の増加リスクと関係しているという仮説を検証しようとした。一方、我々は研究間の潜在的異質性も調査した。
方法:PubMedとEMBASEデータベースを調べることによって、ビタミンDとガン発生率または死亡率の間の関係を調査した無作為対照化試験を確認した。文献検索、良質な評価とデータ抽出は、二重に、そして独立して実行しました。
結果:9件の無作為対照化試験は、55,491人の試験参加者を対象とした。それぞれ、ガンの発症率はビタミンD群とプラセボ群の10.56%と10.65%でした。そして、95%の信頼区間[CI]0.99(0.93~1.05)(P=0.733)の有意でない相対危険度(RR)でした。それぞれ、ガンの死亡率はビタミンD群とプラセボ群は2.61%と2.92%でした。そして、危険予測は有意な減少でした(RR=0.88、95%のCI:0.80~0.98(P=0.016))。観察可能な異質性または偏りはありませんでした。ガンの既往、ビタミンDサプリメント使用とカルシウム補助剤が潜在的異質的なことが、サブグループ分析で分かりました。
結論:我々の調査結果は、特にガンの既往のない部分母集団において、ビタミンサプリメント使用またはカルシウム補助剤が、ガン関連の死亡率を下げる有益な作用をもつことを支持する。
Zhang X. et al. An Updated Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials on Vitamin D Supplement and Cancer Incidence and Mortality. Lancet Posted: 28 Oct 2018


Scraggら(2018年)は報告した。高用量ビタミンDサプリメントが毎月受けたかどうかについて調べることが、カルシウムなしで、一般集団でガン発生率とガン死亡率の縮小と関係しているか調査した。
デザイン、セッティングと参加者:これは、Assessment(ViDA)が調査するビタミンDからのデータ、参加者を家庭医療とコミュニティ・グループから補充した無作為二重盲検プラセボ対照試験で、2011年4月5日から2012年11月6日までのオークランド(ニュージーランド)の事後の分析である。2015年12月31日に完了した
参加者は、50~84歳の成人、5,110人の参加者はランダム化されビタミンD3(n = 2,558)または偽薬(n = 2,552)を受けた。
干渉: 経口ビタミンD3は、最初の大量瞬時投与において200 000 IU(5,000μg)の薬を飲んで、100 000 IU(2,500μg)の毎月の服用または偽薬によって、3.3年(範囲、2.5-4.2年)の中央値まで続けた。
主要な結果と処置: 試験投薬が2015年7月31日に中止されるまで、事後の主要な結果はランダム化から診断されるすべての局所がんか浸潤性悪性新生物(非黒色腫皮膚がんを除外する)の数である。
結果: 分析に含まれる5,108人の参加者のうち、平均(SD)は65.9 (8.3)歳でした、58.1%は男性でした、4,253人(83.3%)はヨーロッパ人またはポリネシアであるか、サウス・アジア人である。平均(SD)ベースラインの25-ヒドロキシビタミンD濃度は、26.5 (9.0)ng/mLでした。438人の参加者の無作為標本に、平均経過観察の25-ヒドロキシビタミンD濃度は、プラセボ群よりビタミンDグループで、一貫して20ng/mLを超える高さであった。
ガンの主要な結果は、259の浸潤がんと69の局所悪性新生物の328人の症例から成り、ビタミンDグループの2,558人の参加者(6.5%)のうちの165人とプラセボ群の2550(6.4%)のうちの163人に起こりました。
結論と関連: カルシウムなしで毎月最高4年間の規定された高用量ビタミンDサプリメントは、ガンを防止しないかもしれません。より長い期間の間の毎日や毎週の投与が更なる研究を必要とするかもしれないことを、この研究は示唆する。
Scragg R. et al. Monthly High-Dose Vitamin D Supplementation and Cancer Risk: A Post Hoc Analysis of the Vitamin D Assessment Randomized Clinical Trial. JAMA Oncol. 2018 Nov 1;4(11):e182178.


Timermanら(2016年)は報告した。転移性ステージIV黒色腫においてより悪い結果とビタミンD欠乏の有意な関係が示めしたが、非転移性黒色腫患者ではガンに対してビタミンDの抗原依存的な免疫学的影響の仮説を支持しなかった。
さらに、同じ研究から、最初の測定でビタミンD不足であった転移性黒色腫患者は、ビタミンD不足の患者と比較し有意に悪い結果でした。
サプリメントの強い有効性は、最初にビタミンDが不足していて(≤20ng/ml)、そして、以降の25(OH)Dの不十分な増加または減少で、十分な患者≥20 ng/mlより悪い結果でした
結論としては、LDH(すでにこの病気の強い予後因子として有名)より前兆の重要性で、最初のビタミンD欠乏と不十分な充足は転移性黒色腫患者で、より悪い結果を予測する。
Timerman D, et al. Vitamin D deficiency is associated with a worse prognosis in metastatic melanoma. Oncotarget 8(4), 6873-6882 (2016).Google Scholar


Pommergaardら(2016年)は報告した。背景と狙い:化学的予防戦略は、結腸直腸腺腫の再発と結腸直腸がんの発病率を減らすのに用いられるかもしれない。
アセチルサルチル酸(アスピリン)、カルシトリオール(活性型ビタミンD3製剤)と炭酸カルシウムの組合せが結腸直腸腺腫再発を防止することができるかどうか決定するために、我々は無作為二重盲検プラセボ対照試験を行った。
方法:2004年から2010年まで、我々は、1,107人のヨーロッパ、ロシア、アメリカ合衆国のセンターで結腸または直腸から取り除かれる1つ以上の散発的な腺腫患者を含めた。
包含基準は、直径1cmより大きい1つの腺腫、そして結腸直腸がんを含むどんなサイズの1つ以上の腺腫。3年間の毎日、0.5μgカルシトリオール、75mgのアセチルサルチル酸と1,250mgの炭酸カルシウム(n = 209人)を与えられるグループまたは偽薬(n = 218人)にランダムに割り当てられた。
主要な結果は、3年後に結腸鏡検査によって評価される腺腫再発だった。第二の結果は、進行した腺腫(結腸直腸腺腫の総数)と腺腫サイズと特徴の一部の患者だった。
結果は、無効のため、2010年10月に止めた。
この分析法では、我々は再発の率で、グループの違いを見つけませんでした(オッズ比[OR]、0.95;95%の信頼区間[CI]、0.61-1.48)。サブグループ分析は、処置が喫煙によって影響されるかもしれないことを示した。
結論:前向き研究において、カルシトリオール、アスピリンと炭酸カルシウムの組合せは、3年の期間の間結腸直腸腺腫の再発を防止しなかった。否定的な結果は、喫煙の影響またはテストされた薬剤の低用量のためかもしれない。
Pommergaard H., et al. Aspirin, Calcitriol, and Calcium Do Not Prevent Adenoma Recurrence in a Randomized Controlled Trial. January 2016Volume 150, Issue1, Pages 114-122.e4


Baronら(2015年)は報告した。背景:疫学的で臨床前データはビタミンDの血清レベルとカルシウムのより高い摂取量は結腸直腸腫瘍形成の危険性を減らすことを暗示した。さらにこれらの栄養分の化学的予防可能性を調査するために、我々は結腸直腸腺腫の予防のために、ビタミンD、カルシウムまたは両方ともでサプリメントの無作為二重盲検プラセボ対照試験を行いました。
方法: ランダムに毎日のビタミンD3(1,000IU、25μg)を受ける2,259人の参加者、炭酸塩(1200mg)としてのカルシウム、両方ともまたはどちらも割り当てられるというわけではない。女性は、ビタミンDまたは偽薬に無作為割当てをプラスしてカルシウムを受けることに決めることができた。内視鏡検査専門医が、基本的な試験の3または5年後に結腸鏡検査を行った。主要な目標は、ランダム化から予想された結腸鏡検査までに診断される腺腫でした。
結果: 偽薬を与えられる参加者と比較して、ビタミンDを受けるよう無作為割付けされた参加者は、血清25-ヒドロキシビタミンDレベルが7.83ng/ml増加しました。全体として、参加者の43%は、一つ以上の腺腫をフォローアップの間、診断されました。
再発する腺腫の調節されたリスク比は、ビタミンD対ビタミンDなし0.99(95%の信頼区間[CI](0.89~1.09))、カルシウム対カルシウムなし0.95(95%のCI(0.85~1.06))、両方のエージェント対どちらのエージェントもない0.93(95%のCI(0.80~1.08))でした。進行した腺腫のための調査結果は、類似していました。ほとんど重篤な有害事象がありません。
結論: 結腸直腸腺腫の除去の後のビタミンD3(1000IU)、カルシウム(1200mg)または両方ともによる毎日のサプリメントが、3~5年間にわたって、再発する結腸直腸腺腫の危険性をかなり減らすというわけではありません。
Baron JA et al. A Trial of Calcium and Vitamin D for the Prevention of Colorectal Adenomas. N Engl J Med. 2015 Oct 15;373(16):1519-30.


Mohrら(2015年)は、より高い25(OH)Dは結腸直腸癌患者の癌死亡が減少することをメタアナリシスは示しました。これはビタミンD不足患者で、ビタミンDを正常レベルに回復することは結腸直腸癌患者のより良い予後に繋がるかもしれない。
Mohr S.B.,et al. Could vitamin D sufficiency improve the survival of colorectal cancer patients? J Steroid Biochem Mol Biol. 2015;148:239-244.


Anicら(2014年)は、扁平上皮癌患者でなく、高25(OH)Dの肺腺癌患者が低25(OH)Dによるより良い生存傾向があることを示しました(20)。そして、それは現在の研究の結果と一致しています。
Anic GM, Serum vitamin D, vitamin D binding protein, and lung cancer survival. Lung Cancer 2014;86:297-303.


Chengら(2013年)は、ビタミンDの摂取量毎日(≥400IU(10μg))は、禁煙患者の間で肺がんの危険性をかなり減少させた。
Cheng TY. et al. Vitamin D intake and lung cancer risk in the Women s Health Initiative. Am J Clin Nutr. 2013;98:1002-1011.


23.最近のビタミンD論文

ここ数年、ビタミンDに関する英文論文はPubMedによると毎年4,000本以上ある。


Gaksch ら(2017年)は報告した。背景:ビタミンD欠乏は死亡率の危険因子である場合がある。しかし、前のメタアナリシスは25-ヒドロキシビタミンD(25[OH]D)濃度の検査方法の標準化がなく、個々の参加者データ(IPD)の代わりに総計データを使った。そこで、我々は標準化された血清25(OH)Dと死亡率の間の関係で、IPDメタアナリシスを行った。
方法:7つの一般的人口を含む8つの前向きヨーロッパ研究。25(OH)Dデータを標準化するために、 VDSP (ビタミンD Standardization Program)プロトコルを使った。主要な結果としての全原因死亡率、そして、第二の結果としての心血管およびガン死亡率で25(OH)Dを調査した。
調査結果:53.8nmol/L(21.52ng/ml)の中央値25(OH)D濃度で、26,916人の試験参加者(年齢の中央値61.6年、58%の女性)を分析した。10.5年の追跡期間中央値時間の間、6,802人の人が亡くなった。75~99.99nmol/L(30-40ng/ml)の25(OH)D濃度をもつ参加者と比較して、それぞれ、40~49.99(16-20)、30~39.99(12-16)、<30nmol/L(12)の25(OH)Dグループの死亡率の補正ハザード比(95%の信頼区間)は、1.15(1.00-1.29)、1.33(1.16-1.51)と1.67(1.44-1.89)だった。心血管死亡率も類似の結果を観察した、しかし、25(OH)Dとガン死亡率の間の有意な線形関係がなかった。かなり増加した死亡率リスクが、125nmol/L(50ng/ml)まで高い25(OH)Dレベルにもなかった。
解釈:25(OH)Dの標準化された最初のIPDメタアナリシスにおいて、低25(OH)Dは、全原因死亡率の危険性を増した。ビタミンD欠乏の治療が早死にを防止するかどうか評価することは公衆衛生として重要だ。
Gaksch et al. Vitamin D and mortality: Individual participant data meta-analysis of standardized 25hydroxyvitamin D in 26916 individuals from a European consortium. PLoS ONE 12(2): e0170791,2017.


Autierら(2017年)は、「ビタミンDサプリメントの非骨格疾患に対する効果:メタアナリシスとランダム化研究の系統的チェック」報告した。
ビタミンDサプリメントが大人に影響を及ぼしている非骨格の健康を保護することができることを、2012年12月31日まで報告されるランダム化研究では確認できなかった。そして、そのことは観察研究からデータに基づいて予想された。より最近発表されたメタアナリシス研究(多施設統合研究)が過去の結論を変えるかどうか調べるために、我々はビタミンDサプリメントのメタアナリシスを系統的に見直した、そして、非骨格疾患は2013年1月1日から2017年5月31日の間に、それは妊婦を含むあらゆる年齢の試験参加者を含んだ。メタアナリシスに含まれないランダム化された研究も調べた。87のメタアナリシス(最近でない論文を含んだか、最適に及ばない品質だったので、52は除外した)を研究した。我々は、メタアナリシスに含まれなかった研究に関する202の論文を検索した。ビタミンD1日10-20μgが中高年の人々で全体原因死亡率とガン死亡率を減らすことができる知見を、最近のメタアナリシスは支持する。ビタミンD服用が過去に研究されるより大きかったが、心血管疾患、肥満症、糖代謝、気分障害、筋肉の機能、結核と結腸直腸腺腫、母や周産期を含む、大部分の非骨格疾患に関して、サプリメントが影響を及ぼすことができたという新しい知見はなかった。ガン結果に関する新しいデータは、不足していた。ビタミンDサプリメントが全身性炎症のバイオマーカーに重要な影響を及ぼさないことを、83の研究からの結果は示した。この系統的チェックによって注目される主要な新しい発見は、ビタミンD補給が普通の上気道感染症と喘息悪化を防止するのを助けるかもしれない。ビタミンDサプリメントがビタミンDの増加した量の使用にもかかわらず大部分の状況(慢性炎症を含む)に影響を及ぼすことを示唆するほとんど証拠はなかった。そして、低いビタミンD状況がその原因よりもむしろ不健康の結果であるという仮説を支持する。ビタミンDサプリメントが急性感染症に対する抵抗を強化する免疫調節性効果を及ぼすことができたと、我々はさらに仮定する。そして、それは衰弱する個人で死の危険性を減らす。我々は最適状態に及ばない品質の多くのメタアナリシスを確認した。そして、これは重要である。より強い証拠を生み出すために、同様に判断される同じ結果をもつ参加者のためのデータが必要で、ビタミンDの将来の系統的評価はデータ共有に基づかなければならない。
Autier P. et al. Effect of vitamin D supplementation on non-skeletal disorders: a systematic review of meta-analyses and randomised trials. Lancet Diabetes Endocrinol. 2017 Dec;5(12):986-1004.


Theodoratou E.ら(2014年)は、「ビタミンDと複数の健康結果:系統的評価のアンブレラ評価と観察研究とランダム化研究のメタアナリシス」を報告した。
目的:多様な結果を元にビタミンDに関連する、偏りの幅、有効性、バイアスの存在を評価すること。
デザイン:血清25-ヒドロキシビタミンDまたは1、25-ジヒドロキシビタミンD濃度、そしてビタミンDサプリメントの無作為対照化試験の観察研究の、系統的評価やメタアナリシスのアンブレラ評価。
データ・ソース:メドライン、Embaseと引用の拾い上げ。
適格基準:3種類の研究は、アンブレラ評価の資格があった:循環するビタミンD濃度と臨床結果の間の観察関係を調べた系統的評価とメタアナリシス:そして、ビタミンDまたは活性化合物(ビタミンDのより新しい化合物)でサプリメントを評価している無作為対照化試験のメタアナリシス。
結果:血清ビタミンD濃度の観察研究とビタミンDサプリメントの無作為対照化試験の87のメタアナリシスの107の系統的文献レビューと74のメタアナリシスを検索した。ビタミンDと137の結果の関係を調査した。そして、広範囲にわたる骨格、悪性、心血管、自己免疫、伝染性、代謝性、その他の病気をカバーした。10の結果は観察研究のメタアナリシスと無作為対照化試験のメタアナリシスにより調べた。利用できる証拠に基づいて、ビタミンD濃度と出生体重、子供たちの虫歯、満期の母のビタミンD濃度と透析を必要としている慢性腎臓病患者の副甲状腺ホルモン濃度の間の関係はありえる。しかし、更なる研究とより上手に設計された研究はより断固たる結論を出すために必要だ。以前のレポートと対照的に、ビタミンDのみのサプリメントが骨塩密度を上昇させる、老人の骨折や転倒の危険性を減らすという議論を支持しない。
結論:数百の系統的評価とメタアナリシスにもかかわらず、ビタミンDのはっきりした役割の納得のいく証拠が少なく存在しなかった。しかし、結果の選択との関係はありえる。
Theodoratou E. et al. Vitamin D and multiple health outcomes: umbrella review of systematic reviews and meta-analyses of observational studies and randomised trials. BMJ. 2014 Apr 1;348:g2035.


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