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【社会】

コロナ休校めぐり先生も混乱 計画二転三転、成績評価はどうする?

入学式の準備を進める教諭ら=4月2日、名古屋市内の小学校で

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 新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急事態宣言は、入学式や始業式の時期と重なった。各地の小学校などは式を開くか、授業を再開するか、休校するかで混乱した。そのとき、何が起きていたのか。休校の今、どんな心配があるのか。現場の先生が語る。 (大野孝志)

◆再開への対策練り上げたのに…

 今月初め、世田谷区立小の三十代の男性教諭は、会議と準備に振り回された。式をどう開くか、授業をどう進めるか―。「地域の状況に合わせてと言われたので、子どもたちの感染を防ごうと、必死に考えてあれこれ準備したのですが…」と語る。

 当初の計画は、こうだ。六日の始業式には全児童が登校し、校庭で校長のあいさつを聴く。教室には入らず、クラスごとに校庭に集まり、あいさつや翌日以降の連絡をして四十分ほどで下校。その後、新入生一人につき保護者を一人に限り、体育館で入学式を開く。

 七日以降は午前と午後の「分散登校」に。午前の部の児童は授業の後に給食を食べて下校し、午後の部は給食後に授業をする。授業といっても復習のプリントが中心。休校の扱いとし、出欠は問わない。

 席は隣り合わないよう、ジグザグに配置し、教室に机を並べて確認した。音楽の授業では歌わず、リコーダーもなし。国語では一斉の音読をしない。体育は複数の児童が一つのボールなどを触らないよう、球技や鉄棒はやらない。「体育は個人の縄跳びくらいですかね」と男性教諭は考えていた。

 しかし、区教委からの通知で三日夕に式の延期と大型連休明けまでの休校が決まった後、七日に緊急事態宣言が出た。学級担任の名前は郵送で各家庭に伝えた。教科書は指定した日に、保護者が学校に取りに来ることになった。

◆児童の心理が気がかり

 男性教諭は自宅で娘二人の世話をしながら、再開後の授業計画を練る。算数と国語を中心にプリントを作り、学校のホームページにアップしている。家庭にパソコンとプリンターがあるのが前提で、家庭環境で学力に差が出ることを心配する。延期した行事や授業の制約がどうなるのか、また混乱するのではないか、不安が尽きない。なにより、児童の心理状態が気掛かりだ。

 「うちの子を見ても、家で勉強なんかしない。学校を楽しみにしている。各世帯にマスクを配る何百億ものお金があるなら、児童がつまらない一年にならないよう、行事などに柔軟に使える予算を学校に振り分けてほしい」

 都内の市立小に勤務する新一年生の担任の五十代の女性教諭も、未習分を取り戻すために学習計画を立て直し、宿題のプリント作りに追われる。最大の懸念は、子どもと保護者が安心して過ごせているかどうか。「だから、仕事を休まざるを得ない保護者への休業補償を、確実にしてもらいたい」

◆家庭学習で評価「あり得ない」

 文部科学省は十日、休校中のプリントなどの家庭学習も、評価に反映できるとの通知を都道府県教委などに出した。教育評論家の尾木直樹氏は「あり得ない」と批判する。

 「評価は授業と一体で、教えていないことは評価できない。子どもに『成績つけるぞ』と圧力をかけるようなもの。求められるのは、家庭へのタブレット貸し出しの支援や、学年を九月スタートにするなどの柔軟で具体的な施策。トップがぐらぐらで現場任せにすれば、また混乱する」

 

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