投稿日:2020年2月16日|カテゴリ:ブログ

前回書いたように私は臨床医として、研究もしていたこともあり、新型肺炎2019-nCoVは治せればいいと思いいろいろな記事を読んでいます。詳しくは省略しますが、2019-nCoV肺炎に至るまでの攻撃目標としてウイルスそのもの、ウイルスの侵入、免疫過剰反応、さらに個人の免疫能について可能性のある治療がインターネットのメディカルジャーナルに寄稿されていましたので紹介します。英語がオリジナルでカタカナは日本の商品名の代表的なものです。
1.個人の免疫能に関連して;可能性があるもの
metformin, メトフォルミンglitazones, アクトスfibrates, リポクリンsartans, and atorvastin, リピトールなどスタチン (普通に手に入るものとして、ウイルスに対する免疫力を上げるということです。糖尿の薬、高脂血症の薬ですね)nutrient supplements 亜鉛がいいかもと書いてありました。
2.ウイルスを標的にした場合
lopinavir–ritonavir, カレトラ (エイズウイルス) remdesivir, ギリアド (エボラウイルス)ribavirin,  リバビリン レベトール (C型肝炎) interferon beta 1b, インターフェロン
monoclonal antibodiesモノクローン抗体 (エボラでは成功しましたが作るのに時間がかかります)
anti-viral peptides targeting 2019-nCoV. (2019-nCoVの作るたんぱく質の一部、ペプチドを標的にして抗体を作る。これも時間がかかります)
3.ウイルスの侵入を防ぐ
2019-nCoVはACE2という肺の細胞の表面タンパクにくっついて、肺細胞内に入ってきます。入るときに細胞が提供するたんぱく質を阻害する薬があり、防げるのではないかという考え方で、
sunitinib and erlotinib, スーテント タルセバ (これらは腎がんなどに使う抗がん剤で副作用があります)janus kinase inhibitor baricitinib, アクテムラ ゼルヤンツ(リウマチや潰瘍性大腸炎で効果があり、ウイルス侵入時に使うたんぱく質を阻害します)
4.サイトカインストームを止める
SARSなどでも起こっていたことですが、肺炎が重症化するのはたくさんのサイトカインが作られることにより、自分自身の肺細胞が攻撃されるためです。アレルギー反応や自己免疫疾患に全体像は似ていますが、作られるサイトカインは沢山あります。
Tocilizumab, アクテムラ a monoclonal antibody (インターロイキン6に対するもので、炎症を抑えられるかもしれません。)助かった人のリンパ球を移植する。(iPS細胞などで、肺細胞を再成させる治療も重症肺炎ではじまっているようです) インターロイキン17 を止めるセクキヌマブ (乾癬という皮膚病の薬) cyclosporine,  シクロスポリン (免疫抑制剤) corticosteroid (最も一般的な免疫抑制剤ですが、無効であることが、証明されてしまっていました)
5.その他
最後に経験によるサイトカインストームの治療ですが、血漿交換でサイトカインを根こそぎ正常血清に取り換えるのも手です。リンパ球がおかしければリンパ球だけ吸着する方法もあります。 あくまで補助療法ですが、これだけでも重症肺炎は回復する場合もあります。

追加 新しく論文にもなってますが韓国の重症肺炎だった患者さんがカレトアで良くなったようです。エイズウイルスのプロテアーゼの阻害薬です。コロナウイルスもプロテアーゼを持っていて、その構造もわかったようです。構造が分かると薬も作りやすくなります。