トップページ > 共通部門のご案内 > 医療安全管理部門 > 感染制御室 > 新型コロナウイルス感染症について
新型コロナウイルス感染症について
【東病院からの重要なお知らせ】
- 新型コロナウイルス感染症等の病院内伝播を防ぐためご協力をお願いします(2020年1月30日)
- 新型コロナウイルス感染症への対策について(2020年2月18日)
新型コロナウイルス感染症に関してはまだ不明な点が多い状況ですが、2020年3月5日時点において判明している点を記します。
厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ & A(一般の方向け)」も併せてご参照ください。
現在までの情報では、新型コロナウイルス感染症は季節性インフルエンザよりも広がりやすく、亡くなる方も多い可能性が示されています。また、がん患者さんは重症化するリスクが高いことも分かってきています。現在までのところ、明らかな治療効果を示す薬剤やワクチンはありません。このため、感染症にかからないように予防対策を心がけることがより重要です。
- がん患者さんを新型コロナウイルス感染症から守るためには
- もし、発熱や呼吸器症状がでたら…
- 新型コロナウイルス感染症の特徴
- 現在までに報告されている主な症状
- 重症例となるリスク因子
- 新型コロナウイルス感染症の広がりやすさ
- 新型コロナウイルス感染症をインフルエンザと比較すると
がん患者さんを新型コロナウイルス感染症から守るためには
以下のような点を心がけてください。
- 外出や人混みを避ける
特に長時間換気の悪い場所に不特定の人々が集まるような場所(ライブハウス、スポーツジム、屋形船、ビュッフェスタイルの会食、雀荘、スキーのゲストハウス、密閉された仮設テントなど) - 手洗いを心がける(手指消毒用アルコールもしくは流水と石鹸を使った手指衛生)
- 顔(特に眼、鼻、口)はできるだけ触れない
- 家庭内でよく触れる部分の清掃、消毒(ドアノブ、スイッチ、手すり、リモコン、電話、携帯電話など)
- 睡眠や食事をしっかりとり体調を整える
もし、同居家族が風邪症状を呈する場合には以下の点に注意しましょう。
- 部屋を分け、がん患者さんとできるだけ接触しないようにする
- マスクをつける、マスクがなければ咳の時にティッシュや肘で覆うなど、咳エチケットを守る
- よりこまめに手を洗う
- 定期的に家の中の換気を行う
- 家庭内でよく触れる部分の清掃、消毒回数を増やす
- 外出をできるだけ控える
手の洗い方やマスクの着用方法は、以下の厚生労働省のウェブサイトなどをご参照ください。
マスクはあくまで発症者が感染症を伝播させないようにするためのものです。家族が発症した場合は、発症した家族に優先的にマスクを着けてもらうようにしましょう。
マスクは適切な使用方法が重要です。鼻やあごを覆った適切な装着のほか、一度装着したマスクの表面には触れない、外す時は耳にかかるゴムを触って外し、そのあと手を洗うなど取扱いに注意しましょう。
もし、発熱や呼吸器症状がでたら…
かかりつけの担当医との間で決まりごと(電話で相談、受診するなど)があれば、その指示に従ってください。また、抗がん剤治療や手術後1か月以内であったり、血液腫瘍の患者さん、移植後の患者さんなども早めに担当医に相談しましょう。
特に決まりごとがない場合、通常の軽度の感冒様症状(発熱や咳など)であれば2日ほど様子を見てください。症状が重い場合や、症状が続く場合(2日経過しても体調が改善傾向とならない場合)はかかりつけの担当医へ電話で相談しましょう。
なお、病院は新型コロナウイルス感染症にかかるリスクの高い場所ですので、軽い症状のみでのむやみな受診は避ける必要があります。
新型コロナウイルス感染症の特徴
- 呼吸器症状が中心で、多くは軽症だが一部重症化することもある
- 初期は風邪との区別が困難な症状(発熱や咳など)だが、改善なく持続・悪化する場合は注意
感染した際の症状は発熱や咳が中心で、下痢や嘔吐などの消化器症状の頻度は低いと報告されています。ただし、入院時は発熱症状を伴う症例が半数以下だったという報告もあります。
5万例を超える中国からの報告(参考文献(4))によると、多くの症例は軽症で自然に改善し、約80%の症例は軽症から中等症、13.8%が重症(呼吸苦、呼吸数の増加、血中酸素濃度の低下など)、6.1%が重篤(呼吸不全、敗血症性ショック、多臓器不全など)で、3.8%の方が亡くなられています(武漢5.8%、それ以外0.7%)。ただし、これらは検査で確定診断された症例を中心としたデータであり、診断検査の不要な軽症者も多く存在する可能性を考慮すると実際には重症な方の割合はもっと低くなる可能性もあるという意見もあります。(Fauci ASらの意見[N Engl J Med(The New England Journal of Medicine),2020] )
重症化する症例の多くは、発熱や咳などの症状が出現してから5から7日後ぐらいから急速に悪化することが報告されています。また、広東省CDCからの報告(参考文献(4))では125名の重症患者の1/4(26.4%)は退院し、約半数(46.4%)は改善したとのことです。
現在(2020年3月5日)までに報告されている主な症状
症状の時期 | 入院時 | 発症時 | 入院時 | 入院中 | 不明 | 届出時 |
---|---|---|---|---|---|---|
症例数 | 99例 (武漢) |
138例 (武漢) |
1099例 (中国) |
55924例 (中国) |
112例 (日本) |
|
期間 | 1月1日から1月20日 肺炎例 |
1月1日から1月28日 肺炎例 |
12月11日から1月29日 確定診断例 |
2月20日まで 確定診断例 |
2月1日から2月24日 届出例 |
|
熱 | 83% | 98.6% | 43.9% | 88.7% | 87.9% | 72% |
咳 | 82% | 59.4% | 67.8% | 67.7% | 62% | |
倦怠感 | 記載なし | 69.6% | 38.1% | 38.1% | 33% | |
下痢 | 2% | 10.1% | 3.8% | 3.7% | 17% | |
吐気/嘔吐 | 1% | 10.1/3.6% | 5% | 5% | 8% | |
参考文献 | (1) | (2) | (3) | (4) | (5) |
参考文献
- Chen Nらの報告(Lancet,2020)
- Wang Dらの報告(JAMA,2020)
- Guan WJらの報告 (N Engl J Med,2020)
- WHOと中国を含む25か国専門家による報告(2020年2月25日)(クリックするとPDFが開きます)
- 国立感染症研究所の報告(2020年2月29日)
重症例となるリスク因子
- 高齢、併存疾患がある場合が危険
- がん患者もリスクあり重症化に注意
60歳以上は重症化や死亡のリスクが高く、特に80歳以上では21.9%の方が亡くなったと中国のデータでは示されています。
併存疾患がない患者で亡くなられた方は1.4%である一方、併存疾患がある場合は、心・血管系疾患13.2%、糖尿病9.2%、高血圧8.4%、慢性呼吸器疾患8.0%と報告されています。やはりがん患者もリスクが高くなっており、7.6%の方が亡くなられたと報告されています。また、小数例の検討(がん患者16例、非がん患者1572例)では、がん患者は重症化の頻度が高く(39%対8%)、悪化までの日数(中央値)が短い(13日対43日)ことが報告されています。
参考文献
新型コロナウイルス感染症の広がりやすさ
1月末にWHO(世界保健機関)が新型コロナウイルス感染症の基本再生産数を1.4から2.5程度と推定しています。
基本再生産数とは
基本再生産数はR0とも表記され、一人の感染患者が罹患中に何人の未感染者に伝染させるかの目安で、その病原体の感染力の指標となります。この値は状況によっても大きく変わります。例えば換気の悪い空間に多数の人数がいる場合には数倍に上昇すると考えられます。例えば、ダイアモンドプリンセス号における発生当初のR0は、14.8であったと推定する報告もあります。(Rocklov Jらの報告(J Travel Med,2020))
新型コロナウイルス感染症をインフルエンザと比較すると
- 現時点では新型コロナウイルス感染症のほうが広がりやすく、亡くなる割合も高い可能性がある
身近なウイルス性呼吸器感染症である「インフルエンザ」と比較するとイメージをつかみやすいと思います。
基本再生産数
インフルエンザは1から2とされ、新型コロナウイルス感染症はインフルエンザよりもやや高い可能性が指摘されています。
亡くなる割合
インフルエンザでは致死率は0.1%以下とされます。このため、現時点の新型コロナウイルス感染症のデータは高いことが示されています。(ただし、先述のとおり、今後のデータの蓄積によって最終的な割合はもっと低くなる可能性はあります。)
参考:季節性インフルエンザで亡くなる割合について
- 北京 (2007-2013年):約0.01から0.03%(Wu Sらの報告(Influenza Other Respir Viruses,2018))
- ドイツ (2005-2012年):約0.01% (von der Beck Dらの報告(PLoS One,2017)