唐木英明(からき・ひであき) 東京大学名誉教授、公益財団法人「食の安全・安心財団」理事長
1964年東京大学農学部獣医学科卒。農学博士、獣医師。東京大学農学部助手、同助教授、テキサス大学ダラス医学研究所研究員などを経て、東京大学農学部教授、東京大学アイソトープ総合センターセンター長などを務めた。2008〜11年日本学術会議副会長。11〜13年倉敷芸術科学大学学長。著書「不安の構造―リスクを管理する方法」「牛肉安全宣言―BSE問題は終わった」など。
メルケル首相が語った「全人口の60~70%が感染する」の本当の意味
そんなことを言ったらパニックが起こるという意見もあった。しかし、それを明言したのがドイツと英国だ。
3月12日、ドイツのメルケル首相が、「治療法が見つからなければ、ドイツの全人口の60~70%が新型コロナウイルスに感染する恐れがある」と語ったことが報道された。それは、まさにこの事実を述べているのだ。ちなみに「治療法」とはワクチンを意味する。
英国のジョンソン首相も同じ日、科学顧問とともに記者会見を行い、英国内でもすでに5000〜1万人が感染している可能性があり、感染を止めるのは不可能な状況になったので、今後は感染の急速な拡大による医療崩壊が起こらないように注意しながら、集団免疫を獲得する方針であることを明らかにした。
メルケル首相は物理学の博士号を持ち、英国政府は科学顧問ポストを設置して科学アカデミーと強く連携している。ドイツと英国が、いち早く科学的根拠を取り入れた新型コロナ対策を実施したのは、そのような背景によるものと考えられる。
では日本はどうか。14日の記者会見で首相は今後の見通しについて語ることはなかった。日本が置かれている状況は、ドイツや英国とほとんど変わらない。少し違うのは、休校など、極めて厳重な対策を取っているため、感染者の増加は他国に比べてずっと緩やかなことだ。
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