高級時計界の登竜門。タグ・ホイヤーを知りたいなら

高級時計界の登竜門。タグ・ホイヤーを知りたいなら

『ロレックス』『オメガ』と並び、スイスの名門ブランドとして知られる『タグ・ホイヤー』。高級時計の登竜門ともいえる同ブランドの魅力をとことん掘り下げます。

夏目 文寛

2019.05.27

タグ・ホイヤー(TAG HEUER)
腕時計

高級時計の入り口としても押さえておきたい、名門『タグ・ホイヤー』

高級時計の本場であるスイス時計ブランドの中で、『ロレックス』や『オメガ』と並び3本の指に入る知名度を誇る『タグ・ホイヤー』。その歴史は古く、エドワード・ホイヤー氏によって1860年に創業されました。以降、クロノグラフを中心に高い技術力でスイスの時計業界をリード。1980年代にはクォーツショックによる経営難や社名変更も経験しましたが、現在まで創業当時のスピリットを受け継ぐ時計作りを続けています。

※1985年にTAGグループの資本を受け入れ、社名が『ホイヤー』から『タグ・ホイヤー』へと変更されました。この記事では1985年以前の『ホイヤー』時代の記述も『タグ・ホイヤー』で統一しています。

ここ日本では1980年代より比較的安価なクォーツ時計が人気を博したこともあり、スイス時計の入門ブランドという位置付けが拭えませんでしたが、2000年代に超複雑時計やコネクテッドウォッチなど、時計ツウをうならせる商品を連発。先進技術を開拓し続ける名門というイメージがますます高まっています。

スタイリッシュな見た目で、フォーマルスタイルにも似合うモデルが揃う

高級時計に分類される『タグ・ホイヤー』は、モータースポーツと縁が深くスポーティなデザインが特徴。立体的なインデックスや針のモデルが多いため、シャープな印象やフレッシュで若々しい雰囲気を持ち、特に20代や30代が着けるとアクティブで清々しい印象を与えられます。さらに『タグ・ホイヤー』は近年、ポリッシュとサテンの磨き分けなど大人っぽい仕上げにもこだわっており、スポーティさに色気と品格を加えた時計へと進化。スーツスタイルに合わせれば、安心感のある“デキる”ビジネスマンを演出することが可能です。

150年以上の歴史あり。『タグ・ホイヤー』のこれまでを知る

『タグ・ホイヤー』は160年近い歴史を持つ老舗ブランドです。そんな『タグ・ホイヤー』のブランドのキャラクターがわかるトピックを3つご紹介します。

トピック1創業から27年で実現した“振動ピニオン”の開発

時計ツウの中には、“『タグ・ホイヤー』といえばクロノグラフ”というイメージを持っている人も多いでしょう。創業者のエドワード・ホイヤー氏は「振動ピニオン」という機構を開発し、1887年に特許を取得しました。この「振動ピニオン」は、スタートボタンを押したときに時計として時間を刻んでいる歯車と時間を計る機構の歯車をつなぐ、クロノグラフにとって極めて重要な発明でした。このように『タグ・ホイヤー』には古くからクロノグラフのDNAが刻まれていたのです。現在でも特許取得年にちなんだ「キャリバー1887」に振動ピニオンを採用しています。

トピック2“マイクログラフ”の開発により、スポーツ界との蜜月が始まる

『タグ・ホイヤー』の時間計測への情熱はその後も衰えることはありませんでした。1916年には、1/100秒まで計測できるストップウォッチ「マイクログラフ」を世に生み出します。時間計測の分野で高い評価を得た『タグ・ホイヤー』は、1928年にはアムステルダム・オリンピックのオフィシャルタイムキーパーを務めるまでになりました。また、精密な計測が不可欠な自動車レースでも引く手あまたとなり、“レーシングウォッチ=『タグ・ホイヤー』”というイメージが定着。レース界の頂点であるF1では、フェラーリやマクラーレンなどのメーカーやアイルトン・セナ氏をサポートし、1992年から2003年までF1の公式タイムキーパーも担当しました。

トピック3名だたるブランドとの、世界初の自動巻きムーブメントの共同開発

1969年、『タグ・ホイヤー』は高い技術力で有名な『ゼニス』との激しい開発競争の末に世界初の自動巻きクロノグラフ「クロノマティック キャリバー11」を完成させます(『ブライトリング』、『ハミルトン』、ムーブメントメーカー『デュボア・デプラ』との共同開発)。この「クロノマティック」を搭載したもっとも有名なモデルといえば、角型時計の代名詞「モナコ」。スティーブ・マックィーン氏が映画『栄光のル・マン』で身に着けたことで、人気を不動のものとしました。「クロノマティック」自体はすぐに生産終了になりましたが、後世のムーブメントに大きな影響を与えたのです。

技術革新を忘れない姿勢が、腕時計初心者から玄人までを惹きつける

2016年、時計業界に衝撃が走りました。搭載すれば500万円は当たり前、1000万円超えでも驚かれない超絶機構「トゥールビヨン」が100万円台で登場したのです。

それが「タグ・ホイヤー カレラ キャリバー ホイヤー02T」でした。『タグ・ホイヤー』は製造プロセスを徹底的に見直し、かつ合理的なデザインを追求してこのバーゲンプライスを実現したのです。使っている素材にもこだわり、ケースにはグレード5のチタン、ムーブにはチタンとカーボンを採用することで、部品の多いトゥールビヨン&クロノグラフの複雑モデルにもかかわらず非常に軽量に仕上げています。優れた精度を保証するスイスクロノメーター検定協会の認定も受け、日常使いできる「トゥールビヨン」が『タグ・ホイヤー』の技術力によって史上初めて誕生したのです。

現代の最新テクノロジーの採用についても『タグ・ホイヤー』は先駆者です。前時代的ないわゆるプレステージブランドが見向きもしないなか、2015年に『タグ・ホイヤー』は、『インテル』『Google』との共同開発によってAndroidウェアOSを搭載したスマートウォッチ「タグ・ホイヤー コネクテッド」を発表。2017年には、時計本体やブレスレットを自由に組み合わせられる「タグ・ホイヤー コネクテッド モジュラー」にアップデートされ、さらに魅力が増しています。もちろん電子デバイス化されたとはいえ、デザインやケースの作り込みはスポーティかつスタイリッシュな『タグ・ホイヤー』そのもの。そのDNAは、なお健在です。

覚えておきたい『タグ・ホイヤー』3つの名作

数多くの名モデルを輩出している『タグ・ホイヤー』。ここで必ず覚えておきたい代表モデルを3本紹介します。

名作1カレラ

『タグ・ホイヤー』の代表モデルといえば「カレラ」でしょう。モータースポーツとともに歩んできた『タグ・ホイヤー』らしく、猛スピードで疾走するレース中でも視認性を確保するために大型のケースを採用。さらに耐衝撃性も備えたタフな時計として1963年に登場しました。モデル名は創業者一族である当時の社長ジャック・ホイヤー氏が、メキシコの伝説のロードレース「カレラ パンアメリカーナ」にちなんで名付けたものです。現在はオーセンティックなクロノグラフから、シンプルな3針、トゥールビヨン搭載のコンプリケーション、きらびやかなゴールドモデルまで、多種多様なラインアップを誇っています。

名作2モナコ

アイコニックな角型をしているのが「モナコ」です。前述したように、初代モデルは1969年に世界初の自動巻きクロノグラフムーブメント「キャリバー11」を搭載して登場しました。オリジナルは構造上、リューズが9時位置にセットされているのが特徴です。もちろんスティーブ・マックィーン氏が『栄光のル・マン』で着用したのも9時位置リューズモデルです。現行モデルには、3時位置リューズのモノも9時位置リューズもモノもあり、操作性に目をつむってでもオリジナルを再現した9時位置モデルを選ぶというのも一興です。

名作3アクアレーサー

『タグ・ホイヤー』のダイバーズモデルが「アクアレーサー」です。ダイバーズといえば、回転ベゼルやリューズガード、防水性を確保するための分厚いケースなど、武骨なイメージがありますが、この「アクアレーサー」は、ケースとベゼルを同配色に揃えることで主張を抑えたり、文字盤に爽やかなストライプを入れたりと都会的なムードを持つモデルが多いんです。そのためマリンルック以外のアイテムにも合わせやすく、カジュアルはもちろん、スーツにもよく似合います。なにより、『タグ・ホイヤー』の入門機としてクォーツなら20万円以下で買えるのも大きな魅力。初めての高級腕時計としても自信を持っておすすめできます。

本物のダイバーズウォッチ。タグ・ホイヤーのアクアレーサーが持つ魅力

本物のダイバーズウォッチ。タグ・ホイヤーのアクアレーサーが持つ魅力

『タグ・ホイヤー』といえば誰もが、希代の名作「カレラ」を想起します。しかし、ブランドの入門機としても人気の高い「アクアレーサー」も忘れてはいけません。

TASCLAP編集部

知れば知るほど欲しくなる。『タグ・ホイヤー』のおすすめモデル10選

次は、魅力的なモデルを多数ラインアップする『タグ・ホイヤー』の中から、今おすすめの10本をピックアップしてご紹介しましょう。

モデル1カレラ クロノグラフ

新生「カレラ」をスターダムに押し上げたのが、ベゼルにタキメーターを刻んだこのタイプ。一時期「カレラ」といえばこのフェイスが代名詞になりました。スポーティなベゼルと端正なブラックダイヤル、レッドのクロノグラフ針がレーシングムード満点。大型に見えますがケース径は41mmと程良い大きさで、腕元のちょうど良いアクセントになってくれます。

モデル2カレラ キャリバー16

大人顔の「カレラ」がこの「キャリバー16」。繊細な細いベゼルにすることで文字盤を大きく見せるやり方は、初代を彷彿とさせます。スポーティさを残しながらも主張は最低限に抑え、クロノグラフのごちゃついた印象をうまく整理。ビジネスシーンでも難なく使える1本に仕上げられています。 

タグ・ホイヤーが誇る名作。カレラの魅力とラインアップ

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高級時計の1つに数えられる『タグ・ホイヤー』。なかでも多くの男性から支持される人気モデル「カレラ」の魅力とともに、同モデルの豊富なバリエーションを公開する。

菊地 亮

モデル3モナコ クロノグラフ キャリバー11スティーブ・マックィーン

世界初の自動巻きクロノグラフを実現した歴史的な「キャリバー11」を積み、スティーブ・マックィーン氏が愛した初代「モナコ」を復刻したモデル。9時位置に配置されたリューズ、“HEUER”のみのロゴなど、当時の雰囲気を楽しめるのがポイントです。裏蓋はシースルーになっており、かの「キャリバー11」が動く様子を見ることができますよ。

モデル4アクアレーサー キャリバー5

『タグ・ホイヤー』の防水性能300mの本格ダイバーズウォッチが20万円以下で買えるという、コスパ感に優れた1本。ケースやインデックスが直線で構成されていて力強さをアピールする一方、文字盤のグレーや爽快感あるラインのギョーシェ彫りはフレッシュな印象。エネルギッシュで爽やかな20~30代にぴったりな、『タグ・ホイヤー』入門機といえます。

モデル5リンク キャリバー5

天才F1レーサー、アイルトン・セナ氏が愛した「S/elクロノグラフ」が前身となるスポーツモデルです。人間工学に基づいたS字のブレスレットを採用しているため、腕にしっかりフィット。快適で疲れにくい着け心地こそ、今モデルの特徴です。シンプルな3針モデルは、着用する人を選ばない汎用性の高さが長所。ネイビー文字盤なら、悪目立ちせずにコーデのちょっとしたポイントとしても役立ちますね。

モデル6オータヴィア ホイヤー02 クロノグラフ

「オータヴィア」は1933年に誕生したダッシュボードタイマーが起源です。1962年に回転ベゼルと耐衝撃性能を備えたクロノグラフとして復活した後、生産が中止されましたが2017年に再び復活。ヴィンテージ感溢れるフォントで数字が刻まれたアルミニウムのベゼルや、フェード加工が施された革ベルトは実に風合い豊かです。ムーブも高性能な「マニュファクチュールキャリバー02」を搭載し、語りどころも満点。時計ツウからも評価の高い1本です。

モデル7フォーミュラ1

10万円以下で買える『タグ・ホイヤー』が、こちらの「フォーミュラ1」。ただしクォーツモデルのみのラインアップとなります。とはいえ、そこは『タグ・ホイヤー』。回転ベゼルや視認性の高いインデックスによって、スポーティなデザインは“らしさ”満点。パンチングが施されたラバーベルトも通気性抜群で、本気でスポーツをする人でも快適にガンガン使い倒すことができます。

モデル8コネクテッド モジュラー41

『タグ・ホイヤー』が放つラグジュアリーなスマートウォッチ。モジュラーという名の通り、本体、ベルトなどが自由に選択できます。AndroidのウェアラブルOSを搭載し、タッチパネルでさまざまな操作が可能。スマホの通知やマップでのナビなど、最先端の便利機能が『タグ・ホイヤー』ならではの高品質なケースで体験できます。

モデル9アクアレーサー クォーツ

コスパ度抜群の「アクアレーサー」ですが、クォーツを選べばもっとお財布に優しい価格で『タグ・ホイヤー』を所有できます。防水性能は300mを確保、デザイン性も機械式モデルと変わりありません。ゼンマイの巻き上げを忘れるリスクを考えれば、むしろクォーツのほうが使い勝手がいいかもしれません。純白ダイヤルで、針やインデックスマーカーの黒とのコントラストが効いているため視認性も抜群で、日付表示も便利。シンプルで、カジュアルからビジネスまで1本でこなせるユーティリティ性もピカイチです。

モデル10モンツァ キャリバー17 クロノグラフ

1976年に登場した「モンツァ」の生誕40周年を祝った、2016年発売のアニバーサリーモデルです。オリジナルは、F1レーサーのニキ・ラウダ氏およびクレイ・レガッツォーニ氏が駆ったフェラーリが1975年に優勝したことを記念したモデル。流線型でスポーティなクッション型ケースとレーシーなタキメーター表示を備え、フェラリーレッドの挿し色もブラックに映えるスペシャルな逸品です。

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夏目 文寛

出版社勤務時にはファッション誌、モノ情報誌の編集を15年にわたって従事。各雑誌で編集長を歴任し、2017年よりフリーの編集者に。男の嗜好品に詳しく、特に腕時計は機械式の本場スイスをはじめとするヨーロッパに何度も取材に行くほど情熱を傾けている。興味のない人にもわかりやすく!がモットー。
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