●学園都市
「マルセイユ洋上学園都市」
通称は学園都市。10万学生を擁する巨大学園にして機関都市。
マルセイユ湾上に存在する人工島であり、要塞の如き防壁に囲まれている。設立は1850年(当時の名称は洋上ガクトゥーン市)。世界全土(カダス除く)から自主的に素質ある若者を集めており、優秀な碩学を世界各国へ何人も輩出してきた。
基本的な修業年数は5年。研究科に進めばさらに4年が加算される。
設立者不明、運営者不明の、極めて不可思議な洋上施設である。外部に対して完全に孤立しており、マルセイユからの物資(食料・衣料・その他)を受け取る以外での交流は殆ど行われていない。入学したが最後、学生が外に出ることができるのは卒業時のみ。
碩学輩出の結果として各国に強力なコネクションを有しており、各国政府は軽々しく学園都市に手が出せない状態となっている。更に、欧州を中心として世界の闇を暗躍する巨大組織《結社》が学園都市を運営しているというまことしやかな噂も流れている。そのことも、各国が、この謎多かれども有意義な学園都市を掌中にできない理由の大きなひとつとなっている。《結社》の影響力は強く、議会を掌握されている国もあるという。
学園中央に巨大な機関塔『ディフの塔』と不可思議な尖塔『統治塔』を有し、地下の大機関2基によって島全土の動力を賄っている。ほぼ完全な機関化(自動機械化)が成されている、世界初の自動化機械都市でもある。
カダス地方の帝国との繋がりを有しているらしく、卒業生にはカダスにおける学位が与えられる。特に成績優秀な卒業生はカダスの碩学位が与えられるという。
「全自動学習機関」
学園都市で用いられている教育/学習装置。
一般的な大教室に1基ずつ配置されており、一度に100~200人までの学生に対して基礎授業を行うことができる。この装置の発明と導入によって、学園都市は一般教員の大幅削減を実現し、装置で優秀な成績を収めた学生に対して専門の“教師”による高度な教育を行うという革新的な教育方式を成立させている。
頭部装置(ヘッドセット)を装着し、無意識に近い状態となった学生の頭脳へ知識を送り込むという、最新のメスメル学が応用された装置であり、一種の洗脳装置ではないかという疑問がフランス王国とはじめとする先進各国政府や碩学の間で取りざたされているが、公式な抗議は未だ一度も行われていない。
「全自動授業」
全自動学習機関を用いた授業。
新入生は毎週木曜日にこの授業を丸一日かけて受けることになる。
「通常授業」
自動黒板と呼ばれるメッセージ表記機能つきの機関機械によって行われる授業。授業内容が登録された機関カードを組み込むことで授業内容が時間ごとに表示されていく。
補助として記録音声の再生を伴うこともあるが、担任教師自身が『一般の学校のように』授業内容を読み聞かせることもある。後者は教師自身の趣味によるところが大きい。
「単位」
中間試験や学期末試験などの定期試験や、不定期に行われる実力試験、等々結果として加算/減算されることになる成績単位。学科によっては実技試験でも加減する。
進級に必要な単位が各学年ごとに設定されており、単位数が足りない学生は留年となってしまう。補修制度は夏季休業や冬季休業の間のみに限られており、補修授業及び再試験による単位再取得が可能となる(補修や再試験は自己申告制)。
通常授業をまっとうに受けることでも単位は得られるが、微々たるものである。しかし、一般の学生にとってはこれも進級のための命綱でもあるため、遅刻や欠席によって単位が失われるのは大きな痛手となる。
なお、単位は学園通貨と引き換えることが公式に学園校則として認められている。成績優秀者が補修授業や再試験で『稼いだ』単位で豪遊する……といった姿も、長期休業の折には珍しくもない光景である。
「学園校則」
学園都市における校則。
国家にとっての法律に相当する。違反者には単位減算や独房教室での停学などの処分が行われることになるが、罰則の中に退学の文字は存在していない。
学園憲章と呼ばれる幾つかの上位校則は、国家における憲法にあたる。
統治会は『より良い学園を形作るため』と確信する場合に限り、あらゆる校則を自在に書き換える権利を有している。学園憲章でさえも。
「学生用機関カード」
個人認証用の機関カード。
学園都市全土の公的施設、公的な機関機械を使用するのに必要となる。D級以上の優秀学生であれば、使用できる施設や機械、立ち入りできる区域などの制限が一般学生よりも緩和され、重要施設への立ち入りも可能になる。
「学園通貨」
学園都市内でやり取りされる通貨はフランス王国で使用されるフランではない。独自に生産された銀貨が用いられている。
通貨単位の呼称は特にない。銀貨何枚、といった表現となる。
校則により学園の外の国家通貨は使用できないが、カダス地方の銀貨であれば、公の場でも使用できる。ただし、落第街であれば、ドルやフラン、ポンドなどの学園外の現金が喜ばれる。
「映像ラジオ」
学園都市全域に向けて放送されている公共ラジオ放送。
近年の先進各国で放送の始まったラジオ放送と基本的には同一であるものの、篆刻動画と呼ばれるリアルタイムの映像を
音声と併せて放送する最先端技術を試験的に使用している。世界各国で未だ実用されていない技術であり、学園都市の特異かつ優れた先進性を端的に証明している。
「教師」
学園都市に存在する数少ない大人たち。
各クラスの『担任』として学活を担当する他、全自動学習機関で行われた基礎教育の結果として選出された優秀な学生たちへは直接の授業を行うこともある。
ひとりひとりがカダスの碩学位を有しており、優秀な人材。
一般的な大学とは異なり、個人的な研究を行っている者はいない。時間のすべてを学生への教育に費やす、という契約を行っているためとされる。
「優秀学生」
学園都市における成績優秀学生。
一定期間内に指定の単位数を所得できた学生に対して自動的に与えられるある種の称号であり、A級からE級までが存在する。優秀学生には、一般学生よりも上質な生活環境や学習環境が供与される。
最高位はA級だが、極めて優秀な素養ある学生に対しては単位所得実績の有無に関わらず特A級認定を行うことがある。
統治会メンバーの大半は特A級優秀学生であるという。
「異能(アート)」
別名は《ガクトゥーンの祝福》。
優秀学生に発現される特殊な能力。特定の条件によって発動する、物理法則さえ無視する超常の力である。何もないところから炎を発生させたり、手も触れずに蒸気自動車を分解したり、空中を歩行したり、等々。詳細及び原理は不明。成績優秀者の中でも選ばれた者へのみ与えられる、学園都市からの祝福であるという。
統治会メンバーは全員がこれを必ず1つ身に備えていると囁かれている。
学園に伝わる噂のひとつだが、明確な事実として認識されている。学園の公式記録にもはっきりと記載がある。
特筆すべきこととして、学生たちの多くが異能の存在を奇異に思うことがない、という不可解なものが挙げられる。学園都市に慣れた上級生だけでなく、入学して数日の新入生に至るまで、異能の存在を耳にしても目にしても……、
「異能使い/異能学生」
異能を有する学生の通称。
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