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観客が固唾を呑む試合の連続

残り0秒で果たしたリベンジ。全国高校eスポーツ選手権ロケットリーグ部門覇者は大分県立鶴崎工業高等学校「雷切」

2019年12月29日 13時00分更新

文● DENPA IS CRAZY 編集●八尋

第二回全国高校eスポーツ選手権「ロケットリーグ部門」の準決勝、決勝戦が開催

 1つの青春が終わり、新しい物語が生まれた瞬間。12月29日に東京EBIS303でサードウェーブと毎日新聞主催の第二回全国高校eスポーツ選手権「ロケットリーグ部門」の準決勝、決勝戦が開催された。

 日本全国の様々な高校がエントリーし、8月に開催されたなオンライン予選を実施。熾烈な予選大会を勝ち抜いた4校が集まり、高校生最強チームを決めるオフラインでの戦いが開催された。

 最終戦に勝ち進んだのは、佐賀県立鹿島高等学校の「OLPiXと愉快な仲間たち」、N高等学校の「Cat A PuLT」、大分県立鶴崎工業高等学校の「雷切」、釧路工業高等専門学校の「VTuberすこすこ隊ver2」の4チームだ。

 最終戦は見どころ満載だった。昨年開催された第一回全国高校eスポーツ選手権で優勝したOLPiXと愉快な仲間たちが2大会連覇という記録を残すか、昨年惜しくも準決勝という結果になってしまった雷切が今年こそ優勝を果たすのか。はたまたCat A PuLT、VTuberすこすこ隊ver2がジャイアントキリングを起こすのか。

 ハイレベルな試合の連続でドラマが生まれた。高校生の3年間という短い時間でeスポーツに力を注いできた高校生達のドラマの様子を紹介したい。

佐賀県立鹿島高等学校の「OLPiXと愉快な仲間たち」

N高等学校の「Cat A PuLT」

大分県立鶴崎工業高等学校の「雷切」

釧路工業高等専門学校の「VTuberすこすこ隊ver2」

昨年の準優勝チーム「雷切」と、新たなる風「VTuberすこすこ隊ver2」

 準決勝戦第1試合は、大分県立鶴崎工業高等学校の「雷切」VS釧路工業高等専門学校の「VTuberすこすこ隊ver2」。昨年大会でオフライン決勝出場の経験がある「雷切」と、昨年はベスト8でオンライン決勝への切符を逃した「VTuberすこすこ隊ver2」。この差が大きなアドバンテージになると考えられた。だが試合前の様子を見ていると「VTuberすこすこ隊ver2」もリラックスして試合に挑めている様子だった。

 VTuberすこすこ隊ver2は、オフライン出場の経験値をひっくり返せるかという印象で、最初のゴールを決めた。VTuberすこすこ隊ver2は最後まで攻めの姿勢を崩さなかったのだが、流れに乗ってきた「雷切」に対抗できなかった。

 結果としては「雷切」が3ゲームを先取し決勝戦に出場した。試合を振り返って「調子を出しきれなかった」と話す「VTuberすこすこ隊ver2」に対し、「思いどおりのプレイができた」と話した「雷切」。フィジカル面はもちろんだがメンタル面も大きく影響するeスポーツにおいて、序盤から流れを作っていけた「雷切」が優勢だった印象だ。

オフライン経験はないものの落ち着いてプレイしていたVTuberすこすこ隊ver2

雷切は経験から来る安定感のようなものを感じた

流れを掴んだ雷切がその勢いを生かして戦った印象だ

個人技で圧倒する「OLPiXと愉快な仲間たち」とチーム全体の連携と地力で戦う「Cat A PuLT」

 決勝戦第2試合は佐賀県立鹿島高等学校のOLPiXと愉快な仲間たちVSN高等学校のCat A PuLT。昨年の優勝チームであるOLPiXと愉快な仲間たちの実力は確かなもの。一方のCat A PuLTもこの試合に向けて大会などにも出場し、その力を高めていたチームでどちらが勝ってもおかしくない展開だった。とくにCat A PuLTは声を出したり、円陣を組んだりと試合前からテンションを上げていっており、気持ちを乗せて試合に挑んでいた印象だ。

 実際に1ゲーム目はCat A PuLTが制する結果となった。エースの個人技で戦うOLPiXと愉快な仲間たちと、メンバー全員の実力の高さで戦うCat A PuLT。これは新王者が誕生するかも!? とすら感じさせるレベルの高い戦いだった。

 しかし、1ゲーム目を落としたOLPiXと愉快な仲間たちは、ここからが強かった。とくにOLPiX08(オルピックス)選手とRon-nex(ロンネックス)選手の個人技が光り、スーパープレイの連続でゴールを重ねていった。Cat A PuLTも善戦するが、結果としてはOLPiXと愉快な仲間たちが2ゲーム、3ゲーム、4ゲームを制し決勝戦へと駒を進めた。

「OLPiXと愉快な仲間たち」はやや緊張した面持ち

「Cat A PuLT」はオフライン初出場ながら士気を上げるのは上手かった

1ゲーム目を落とした「OLPiXと愉快な仲間たち」だが、2ゲーム目からの爆発力が圧倒的だった

リベンジを果たす「雷切」か、それとも大会2連覇を達成する「OLPiXと愉快な仲間たち」か

 いよいよ全国の高校の中から最強のロケットリーグチームを決める決勝戦が行なわれた。対戦カードは昨年の決勝カードと同じく、大分県立鶴崎工業高等学校の雷切VS佐賀県立鹿島高等学校のOLPiXと愉快な仲間たち。この戦いに向けて練習を重ねてきた両チーム。雷切が昨年のリベンジを果たすのか、王者としてOLPiXと愉快な仲間たちが大会2連覇を果たすのか、観客全員が固唾を飲んで試合に注目していた。

会場の盛り上がりと、緊張感はかなりのもの

 序盤の流れを作っていったのは雷切だった。1ゲーム目の試合早々からゴールを決め、攻めの姿勢を崩さずまずは1勝。2ゲーム目では両チームともにカウンターの応酬でまったく目を離せない展開で、引き分けからの延長戦になったのだが、ここでも決定打を決めたのは雷切。優勝へリーチをかけた。

 後がないOLPiXと愉快な仲間たちだが、準決勝同様ここから温まってきたのか一気に巻き返してくる。3ゲーム目ではOLPiX08(オルピックス)選手が圧巻のハットトリックを達成し、まずは1ゲームを取り返した。そして4ゲーム目もOLPiXと愉快な仲間たちが怒涛の攻めを見せる。雷切も返していくが結果は4:2でOLPiXと愉快な仲間たちが制した。

 優勝チームを決める本当に最後の試合。リベンジに燃える雷切、一気に流れを取り戻したOLPiXと愉快な仲間たち、どちらも譲らない試合展開になった。最初の3ゴールを連続で決めた雷切に対し、負けていられないとアグレッシブな攻めで3ゴールを取り戻したOLPiXと愉快な仲間たち。そして同点のまま迎えた試合最後にドラマが起きた。

 「ロケットリーグ」では試合時間が終わって、フィールドにボールが落ちた瞬間に試合が終わるのだが、雷切はその瞬間まで気を緩めていなかった。相手ゴールに果敢に突っ込んでいったAroDra(アロドラ)選手はボールを掴み、そのまま相手チームにボールをねじ込みゴールを決めた。5ゲーム目の最後の最後、残り0秒に起きたドラマだった。このゴールには会場も大きく沸いた。あまりのドラマチックな展開に選手だけでなく、実況陣や出演者も感動のあまり涙ぐむ姿を見せてしまうほどだった。

両チームともにアグレッシブな攻めを見せた決勝戦

 この瞬間、雷切が第2回全国高校eスポーツ選手権の勝者となった。昨年のリベンジを果たしたのだ。

雷切が第1回のリベンジを果たしみごと優勝

 試合後の雷切のメンバーのインタビューでは、メンバー揃って「まさか優勝できるとは思っていなかったのでうれしい」とうれしさを隠せない最高の笑みでコメントをしてくれた。

 AroDra(アロドラ)選手は「昨年の大会では前回大会では味方を信用しきれず、自分の個人技で戦っていたのですが、それが通用しませんでした。今年の大会ではイソR(イソアール)選手をはじめ、ほかのメンバーが磨いてきた技術と努力の結果が今回の優勝に繋がりました」とそのチームワークが優勝に繋がったと話す。

 「全員が3年生で試験などで思うように練習時間が取れなかったのですが、短期集中で多くのことを学び試合に挑みました」と話したのはmcRENTO(エムシーレント)選手。

 ロケットリーグの練習に費やした時間は、短い選手でも350時間。AroDra(アロドラ)選手は2000時間近くとのことで、高校生活の中で勉学などもある中、これだけの時間をかけて本大会に挑んだその姿勢には改めてグッと来るものがあった。

優勝のガッツポーズを決める雷切のメンバー

 こうして高校生ロケットリーガー達の1年が終わった。今回の大会が最後の大会という選手も少なくなく、エースプレイヤーが抜けてしまう学校もある。まだ来年の大会については発表されていないが、もし来年第3回の全国高校eスポーツ選手権が開催され、ロケットリーグ部門があった場合はどんなストーリーが生まれるのだろうか。出場した各強豪校の選手をはじめ、今も練習に打ち込んでいるであろう全国の選手がどんな戦いを見せてくれるかが今から楽しみでしょうがない。

 なお、今回の大会のダイジェストムービーも公開中。気になる方はぜひチェックしてみてほしい。


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