渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

旋回時の物理現象の違い ~2ストと4スト~

2019年11月08日 | 公開情報


高校の時の4ストを除いて、ずっと軽いバイク
ばかりを好んで来た。50ccの車格で250km/h
出るバイクがあったら今でも欲しいと思ってい
る。
当然、軽さで選ぶとしたら、バイクは2ストエン
ジン搭載車一択になってくる。
実際に、1978年以降、私は2スト一辺倒だった。


最近、2ストマシンのパーツ供給枯渇という
情勢の関係から、長距離走行用に1977年以来
42年ぶりに4ストマシンを入手した。
小さければ小さい程良いが、パワーとの関係
から、最低ラインを50PSとした。
すると400ccのライトミドルラインになる。

この400のゼファーχは結構重たい。
よくバイクの重量自慢をする間抜けがいるが、
二輪車は軽さこそが正義だ。
このゼファーχは乾燥重量で186kgある。
KR-1のほうは軽量化もしてあり、乾燥116kg
である。かなり軽い。原付より少し重たい程度。
パワーは60PSを超えている。
ゼファーχはチューンドKR-1に比べると実に
70kg、実装だとオイル量も異なるので、χの
ほうはかなり重たくなる。

そして、ゼファーχでワインディングを走って
みて、いろいろなことに気づいた。


主たるものは「速度が落ちない」ということだ。
ブレーキングでの減速のことではない。
モーターサイクルは、旋回中にGをかける事
によって路面との摩擦で速度がどんどん落ち
ていくのだが、それの落ち幅が2スト軽量マシ
ンのKR-1よりもゼファーは圧倒的に少ないの
である。

コーナリングにおける旋回のメカニズムに則っ
て軌跡=ラインをトレースすると、2ストだろ
うが4ストだろうが同じ物理法則が働く。
慣性の法則というやつだ。
乾燥重量110kg台のKRの場合、250レーサーと
同じく、Gの摩擦や旋回フォースによってブレ
ーキ以外での減速力が強く働いて速度が落ちる。
ところが、ゼファーχの場合は車重があるので、
速度がなかなか旋回圧力では落ちないのだ。
これは、ブレーキによる制動以外のコーナリン
グフォースを利用して、奥まで高速のまま突っ
込んで、寝かせての旋回フォースで瞬間的に
微量ながら減速させてエイペックスを舐め、
そこから一気に加速していくという2スト車
独特の運動特性をゼファーχでは使えないと
いうことを意味する。
ゼファーでは、早めに減速して適正速度まで
落とさないと、同じ旋回進入速度だと2ストの
軽量マシンのように急に旋回途中で速度が落ち
ずに、落ち幅が狭いままで旋回してしまうのだ。
これは限界近くの領域で走っていた場合には
オーバースピードという結果に繋がる。
同じコーナーの中で、2ストは急減速+急加速
がセオリーパターンであり、4スト重量車は緩
減速+定速旋回+急加速という感じに明確に分
かれる。
当然にして、乗れる人間は、明瞭に乗り分けて
いる筈だ。レーシングライダーなどはそれが
できなければ話にならない。門前払い以前の
段階の初歩的なことだ。味が分からぬ者が料理
人になれる筈はない。

この差異と自己内部での新規4ストへの対策の
不明瞭さ、解決方針の未成立をゼファーχの走行
実地において私は感知した。
ゆえに、根本的に走り方を変えないとならない。
2ストも4ストも、クリッピングポイントはマシ
ンを立たせて立ち上がりながら舐めるように加
速しながら通過する。
回頭する旋回の頂点=エイペックスはクリッ
ピングポイントのかなり手前だ。


つまり、軽量車と重量車ではブレーキングから
クリッピングまでの加減速の時間と急激さが
異なり、さらに2ストと4ストのエンジンの違い
からくるライン取りの適合性の差異によって、
その現象を増幅させるという現象が現実的に
旋回中に発生するのである。
このことは、後軸のトラクションと前輪の接地
感との複合的な関係にも絡んで来て、非常に
センシティブな判断実行を乗り手に要求して
くるのである。
それを今回ゼファーχに乗ることで、実地走行
の中で看取したのだ。
コーナリングフォースの使い方を変えなければ
適正操縦で最良の走りをすることができない、
と。

二輪車のコーナリングは奥が深い。
特に、小学生でも300km/hが出せる機械任せ
の直線番長ではなく曲線番長を目指す私とし
ては、旋回行動こそが最良の二輪の楽しみで
あると同時に最大の難問なのである。




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