韓国紙「在日は日本に住みたいわけではない」 「では韓国に帰国すればいい」とネット反発
韓国の主要紙「朝鮮日報」が社説で、ヘイトスピーチをめぐる京都での裁判に触れつつ、一部過激団体により在日韓国・朝鮮人が苦しんでいると指摘した。
なかでも朝鮮総連に所属している在日朝鮮人は「孤立無援となっている」として、韓国が手を差し伸べるべきだと主張した。
「韓国以外に引き受けられる国は世界のどこにもない」
京都地裁は2013年10月7日、京都市にある朝鮮学校周辺で「在日特権を許さない市民の会(在特会)」のメンバーが「朝鮮人を日本からたたき出せ」などと叫んだ街宣活動を「著しく侮蔑的な発言を伴い、人種差別に該当する」として、在特会とメンバーに約1200万円の損害賠償を支払うよう命じた。
10月9日付の朝鮮日報電子版(日本語)は、判決を「過激な団体が作り出す嫌韓の雰囲気の中でも、日本の良識はまだ衰えていないことを示したという点で意味がある」と評価した。そして、こう続けた。
「在日韓国人・朝鮮人の3世・4世の多くは、本人が日本で暮らしたいと思ってそこに住んでいるわけではない」
「植民地時代の強制連行・徴兵政策」により日本に来た人たちの子孫という説明だ。「ありとあらゆる迫害の中で強制労働に従事し、敗戦後も日本で暮らすことになった…被害者の子孫」を、日本の過激団体が苦しめていると非難する。
苦難に陥っているのは、北朝鮮系の朝鮮総連に所属する在日朝鮮人も同じだと目を向ける。北朝鮮政府からの支援は期待できず、さりとて韓国政府も表立って助けるのは難しい。だが社説では「これらの人々をこのまま見放すのかどうか、真剣に考えるべきだ」と促したうえで、
「韓国以外に、彼らを引き受けられる国は世界のどこにもないのだ」
と強く訴えた。
インターネット掲示板では「暮らしたいと思って住んでいるわけではない」との表現に反発する意見が見られた。「外国」である日本でいやいや暮らすなら、「祖国」の韓国や北朝鮮に帰ればいい、というわけだ。そのうえ「韓国以外に引き受ける国はない」と書かれていたことから「韓国側が温かく迎えてくれるらしいから、ぜひ帰ってください」との皮肉交じりなコメントもあった。
韓国・朝鮮籍の「特別永住者」は右肩下がり
「在日韓国・朝鮮人はなぜ祖国に帰らないのか」という議論は、ネット上にしばしば登場する。2012年10月には、エジプト出身のタレント、フィフィさんがツイッターで、在日韓国・朝鮮人に限定した話でないとしつつも、在日外国人の立場から「自国から拒否されてるわけで無いならなぜ愛する母国に帰らないのか?」と問いかけていた。
在日韓国・朝鮮人の多くは「特別永住者」に該当する。この資格は、戦前から日本に住む朝鮮半島や台湾出身者などのうち1952年のサンフランシスコ平和条約で日本国籍を離脱したものの引き続き日本に住み続ける人たちとその子孫に対して特例法に基づき付与された。法務省が2013年6月14日に発表した、2012年末現在の特別永住者数のうち「韓国・朝鮮」籍は37万7350人で、前年比7882人減となっている。減少傾向は長年続いており、20年ほど前の約70万人から半数ほどになった。在日社会でも高齢化や少子化が起こり、帰化が進んだ影響も考えられよう。
戦後の1950年代を中心に在日朝鮮人の帰還事業が実施され、北朝鮮に「帰った」人は少なくない。一方で日本定住を選んだ人は、世代が進むにつれて生活基盤は完全に日本となった。日本生まれで話す言葉も日本語、家族も日本で暮らす。そんな状況で「祖国に帰れ」と言われても、韓国や北朝鮮で暮らす基盤などないというわけだ。
帰化に関しては人それぞれ事情がある。「在日」を名乗る人によるネットの書き込みをみると「親に反対されている」「自分は帰化したい」「帰化する理由が見当たらない」と、考え方はバラバラのようだ。
朝鮮日報の社説は、必ずしも韓国社会が在日朝鮮人を引き受け、「帰国」するよう促すと主張しているわけではなく、韓国人として在日に心情的に寄り添うとの意味合いにも解釈できる。ただ「日本に住みたくて住んでいるわけではない」との表現には、「それなら日本を離れればいい」とカチンときた人はいただろう。