「脳への電磁的攻撃」:禁止判決と対策サービスも

「精神に作用する電磁放射の攻撃を受けている」として訴えた裁判で、「電子ハラスメント」を禁じる命令が出された。また、対策サービスを提供する企業も出てきている。

David Hambling


Photo: U.S. Army

James Walbert氏は2008年の年末、以前の仕事仲間から、精神に作用する電磁放射の攻撃を受けているとして、これをやめさせるための裁判を起こした。

Walbert氏は、カンザス州セジウィック郡の陪審員団に対し、Jeremiah Redford氏と取り引きをめぐって食い違いが生じた結果、同氏から「放射注入」をするぞという脅しを受けたと説明した。同氏によるとその後、電気ショックの感覚、電子的に作られた音、耳の中ではじける音や鳴り響く音を感じるようになったという。

12月30日(米国時間)、裁判所はWalbert氏側に有利な判決を下し、Redford氏が「電子的な方法」による嫌がらせをWalbert氏に行なうことを禁じるという、画期的な保護命令を出した。これはまじめな話だ。

私は最近、英BBC『Radio 4』で6月20日放送の番組に参加した。番組のテーマは、『影なき狙撃者』と現実世界の関係を軽い感じで見ていき、マインドコントロールの話に現実性があるのかを検討していくというものだった。[影なき狙撃者は、邦訳早川書房刊。無意識に殺人を犯していく男性を描いた小説で、1962年に映画化。2004年には、政治に利用される形で兵士らが洗脳され記憶改変されるという形でリメイクされた(日本語版記事)]

番組で私は、いわゆるテレパシー光線銃や、脳内に直接音を発生させるシステム(日本語版記事)、「神の声」兵器(日本語版記事)など、風変わりな非殺傷兵器の概念について話をする機会を得た。

こうしたプロジェクトは、大半は研究実験か、プレゼンテーションの段階にとどまっている。しかし、法曹、政策、ビジネスの分野で、脳への電磁的な攻撃を真剣に取り上げる動きは出てきている。

Walbert氏の訴訟には、ミズーリ州下院のJim Guest議員(共和党)の支援があった。Guest議員は、RFIDチップの強制埋め込みに反対する法案など、電子ハラスメントに対処するべく提案されている立法に取り組んでいる。

ユネスコでは、電磁波がテロリストに使われる可能性を取り上げる会議が昨年開催された。また、『非殺傷兵器に関する欧州シンポジウム』では2009年に初めて、「プライバシーを侵害するような遠隔捜査と、行動に影響させる応用例」をとりあげた、非殺傷兵器の社会的意味に関するセッションが行なわれた。自分は標的になっていると信じる人たちが、少しずつ公認を得てきているのだ。

これを新しいビジネスチャンスとする人々もいる。すでに相当数の企業が進出し、「技術的監視対策」(TSCM)や、電子ハラスメントの診断調査などを提供している。

こうした企業のサービスでは、通常の盗聴器の探知に加えて、「頭痛、目への刺激、めまい、吐き気、肌荒れ、顔のむくみ、虚弱、疲労、関節や筋肉の痛み、耳鳴り」を引き起こす可能性のある、マイクロ波によるひそかな攻撃をチェックできる。

こういった症状を訴える顧客については、多くの場合その原因は、ハイテクな軍事品のような珍しいものではないだろう。しかし企業はもちろん、顧客に対してとにかく高価な保護対策を販売する。こうして、これら発展段階の技術プロジェクトへの意識は高くなっていく。これから数年間は、「電子ハラスメント」「ギャング・ストーキング」といったものを耳にする機会が増え続ける可能性が高いだろう。

[日本語版:ガリレオ-緒方亮/合原弘子]

WIRED NEWS 原文(English)

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Mac搭載ネットブック:『iPhone 3GS』で不要に

『Mac OS X』を搭載したネットブックを作成し、利用してきた筆者が、iPhone 3GSに乗り換えた理由を説明。


Brian X. Chen

私は『Mac OS X』を搭載したネットブックを作成し、利用してきたが、結局、たったの9カ月でそれを捨ててしまった(正確に言うと、Wired.com編集者のDylan Tweneyに売ったので、今ではそれを彼の子供たちが活用できる)。

これは、私とあらゆるガジェットとのつきあいにおいて、最も短い関係だ。なぜ突然の終わりが訪れたのだろうか? 奇妙なことだが、この小さくて低出力のコンピューターは、私のライフスタイルに合わなかったのだ。また、最近『iPhone 3GS』を購入したことで、このネットブックは完全に妥当性を失ってしまった。

以前お伝えした通り、このMac搭載ネットブック(台湾Micro-Star International社製の10インチ『MSI Wind』)と私は、短い蜜月期間を過ごしたものの、その後さまざまな問題が生じてきた(日本語版記事)。最も大きかったのは、Wi-Fi接続の問題と、ちょっとした衝撃でクラッシュしてしまう問題だった。

だがその後も、私はこのネットブックに、2度、3度、4度目のチャンスを与えた。上記の問題を修正し、このネットブックで使える奇妙なアプリケーションを探し続けたのだ。

まずはこれを、家で飼い始めた子猫をチェックするためのペット監視用カメラに変換(英文記事)した。また、車にiPod搭載キットを設置した時に、マニュアルが読めるように、このネットブックを使用した。これらの使用例に関して、ネットブックは本当に役に立ったものの、分かったのは、こうした用途はめったに利用する機会がないということだ(子猫は大きくなったので、もはや監視しなくてもよくなったし、iPodキットを車に設置することはそう何度もあるわけではない)。

その後、私は6月19日(米国時間)にiPhone 3GSを購入した。私は毎日の仕事の後で、ソファーに身を投げ出し、iPhoneを取り出してウェブを閲覧したり、電子メールをチェックしたり、友人とインスタント・メッセージ(IM)を楽しむようになった。

速いウェブ閲覧速度(日本語版記事)のおかげで、このiPhoneの方が、コンパニオン・コンピューターとして長い時間使うにははるかに使いやすい。また、『Push IM』機能が導入されたことで、IMからログアウトせずにアプリケーションを切り替えることが可能となった。

こうした2つの改善により、iPhone 3GSは、ちょっとコンピューターを使用したい場合の最適なガジェットとなったのだ。キーボードとトラックパッドが小さすぎて長時間利用するには大変なネットブックよりも、おそらくずっと優れている。

米Apple社最高経営責任者(CEO)のSteve Jobs氏は、2008年10月に行なわれた同社の四半期決算発表において、同社はネットブック製品を提供していないが、その部分をiPhoneが補うことができるだろうと述べた

そのときは、私はJobs氏に同意できなかった。以前のiPhoneは私にとってあまりに速度が遅いうえ、バックグラウンドで複数のアプリケーションを動かすことができない点が大きな問題だったからだ。だが、3GSと『iPhone OS 3.0』はこうした欠点をカバーしている。Apple社は、そうすることを希望するのであれば、今後もネットブック製品を提供しない方針を続けられるだろう。

iPhone 3GSよりネットブックのほうが仕事をしやすいのでは、という人もいるかもしれない。しかし正直にいうと、私は自分のネットブックで仕事をしたことはない。いちど、Mac搭載ネットブックで原稿を書き始めたことがあるのだが、30分もしないうちにあきらめた(仕事のためにはMacBook Proを使っている)。ネットブック用の奇妙なアプリはいろいろ探せるかもしれないが……何かを使うための理由をいろいろと探しているなら、結局、それを必要とはしていない、ということなのだ。

WIRED NEWS 原文(English)

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