挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ブックマーク登録する場合はログインしてください。
盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました
112/981

倉庫

 埃くさい城の倉庫。騎士団の装備もここに保管されているようだ。

 RPGとかだとこういう所で優秀な装備が手に入るんだよな。

 俺は一つ一つ確認する。

 うわ……汎用性が高いものが大半で、優秀な装備となると厳しい。


「イワタニ様の要望がまだ掴みきれていないのもありまして……申し訳ありません」


 ラフタリアは今まで使っていた剣よりもマシな魔法銀の剣がここに並んでいるが……問題はカルマーラビットソードの方が攻撃力が高いことだ。

 使いづらいらしいが……武器屋の親父に頼んでみようかなぁ。

 というか方向性を言わなかった俺が悪いな。


「気にするな。そこは妥協する」

「ありがとうございます。その代わりに素材を一式、集めさせてもらいました」


 次に色々な素材が保管されている倉庫を見せてくれる。

 そして女王は羊皮紙に文字が書き込まれた書類を俺に渡す。


「これがリストです。特注するのでしたら鍛冶師と話をしてくれればここから運ばせますので」

「ふむ……協力に感謝する」


 素材系か……。


「少し貰っても良いか?」

「どうぞ」


 俺は城に保管されている素材を少しずつ盾に吸わせて解放させる。

 ツリーが足りないものも結構あったが、また種類が増えたな。

 次の波までに全て解放するのは無理だな……。


「あと、鍛冶師に依頼すると言うが、頼みたい奴がいるんでそいつに頼みに行く」

「……そうですか。イワタニ様がそう言われるのでしたら」


 俺にとって、武器や防具を作ってくれると言う奴は武器屋の親父以外、イメージが湧かない。色々と力を貸してくれたし。

 その親父以外に武器や防具を頼むと言うのは恩を仇で返すように感じる。

 何より、アイツの腕を信用している。


 問題は波まであと少しなんだよなぁ。

 という所で気が付いた。


「他の勇者は何処へ行くんだ?」

「近隣諸国の波を鎮めに行ってもらいました」

「……はい?」


 そういえば……そんな感じの事を言っていたような。

 メルロマルクだけではなく、世界中で起こっているとかなんとか。


「どうやって参加するんだ?」

「その国の龍刻の砂時計で武器を共鳴させることによって、その地域の波に参加できます」

「待て……という事はメルロマルクの波には不参加できるのか?」

「はい。そのようです」


 おい!

 色々と指摘したい所だが、当たり前のように説明してくれた所を察するに知らない俺の方が悪いのだろうなぁ。

 事前に……遥か前に知ることが出来れば、サッサとこの国から逃亡していた。

 だが……なぁ。今は別に居心地は悪くはないし、結局は波と戦わないとダメなら……。

 というか龍刻の砂時計ってネットゲームでいう所の位置セーブとかもしてくれる装置なのかよ。

 これはもっと前に知りたかった!


「イワタニ様? その様子だと四聖の勇者以外にも勇者が居る事をご存知ないのでは?」

「はい?」


 ご存知も何も初耳な話ばかりだ!


「では説明しましょうか」


 女王の目が輝く。

 フィロリアルの女王の話をした時や、メルティが伝承の探索とかで各地を見に行ったとかの話を聞く限り、女王は伝説が好きなんだろう。


「最も有名なのは四聖勇者の伝説ですが、次に有名なのは七星勇者の伝説ですね」

「七星勇者?」

「ええ、四聖勇者と同じく七つの武器に選ばれた勇者の伝説です」


 七つもあるのか……。

 全て別系統の武器を想定すると、またゲーム度が増すな。

 RPGなんかでは後々仲間になる奴が持っていたり、手に入れる必要が出てくる。


 しかし……この世界で、伝説の武器の所持者と聞くと身構えてしまう。

 俺の知っている奴等が碌な奴等じゃないからな。


「クズや三勇教で問題が起こった我が国ですが、七星勇者に関する全権を放棄したお陰で目を瞑って貰った所もあるのですよ」

「へー……」

「事、七星勇者は四聖勇者と深い関わりがあるとも、外伝の勇者とも言われていますが――」


 女王は長々と伝説に関して話を続けていた。

 ラフタリアは四聖勇者しか知らなかったようで、うんうんと頷き。フィーロは女王の話で居眠り。リーシアはどうも知っていたようで平常心を保っている。


「じゃあ俺のように召喚された勇者が7人もいるのか?」

「いえ」

「違うのか?」

「七星勇者に関してはむしろ冒険者が憧れる職種として有名でもあります。要するに召喚に応じて勇者になるものも居れば、この世界の者がなることが出来る勇者でもあります」


 召喚限定ではなく、この世界の者もなることの出来る勇者か……。

 この世界の常識を受けている分多少はマシなのか?

 勇者と呼ばれている以上おかしい奴は選ばれないだろうし。


「一応、その伝説の武器を使って召喚は行いますが、勇者召喚が失敗した場合は選ばれた者が出現するまで、武器は一般人に触れる事が出来るよう解放されます」

「……地面に刺さった伝説の剣みたいな感じか?」

「剣は四聖の勇者の武器なので違いますが、地面に刺さっていると言うのは間違いありませんね」


 なるほど。腕の覚えのある奴なら一度は挑戦したくなるだろうな。

 もしも選ばれたら更に強くなれるし、国家の力添えも受けられる。

 憧れない理由が無いな。


「四聖の勇者よりも武勇伝の数自体は多いですよ。少しでも戦乱が起こると七星勇者は出現する可能性があるので」

「ほー……」

「今回の波が出現した後は、七星勇者も大半が出現しました」

「それだけ危機という事か」

「はい。まあ……イワタニ様は七星勇者の一人と既に出会っていますが」

「何? 誰だ」

「それは……知らない方がよろしいかと」

「話せよ。誰か気になる」

「知っても得にはなりませんよ。それにその方はもう……」

「女王」


 影が注意する様な声を漏らす。


「これは国家機密でしたね。何時漏れるか分かりませんし、漏れてしまったら戦争になりかねません。どうかご勘弁を」

「……知りたいのだが」

「私としてはその方が前のように立派になったら話したいと思っております。いずれ……話す時が来るまで待っていてください」

「名前くらいは良いだろ?」

「旧名はルージュという優秀な人物でした。過去に世界支配を目論んだシルトヴェルトに対して真っ向から衝突し、20数年前この国を始め多数の国を救った、杖の七星勇者です」

「随分と評価の高い奴だな。俺の知り合いにそんな奴いたか……?」


 二十年も前と考えると相当な年齢だ。

 俺の知り合いで出てくる奴と言えば、ババアか奴隷商、アクセサリー商辺りか。

 後半の二人は論外として、ババアは十分考えられるな。

 薬で劇的な復活を遂げて波で大暴れしていたし。

 だけど、何か違う気がする。

 ……誰だ? 本気で分からない!


「その話はいずれ」


 と言って、女王は教えてくれない。


「あの人も昔は凄かったのですよ……」


 ……この言い方だとクズがそれになるのだが……。


「リーシア、知っているか?」

「あ、はい。国王様が杖の七星勇者様ですよ」

「は?」

「今、メルロマルクや各国が存在するのも国王様のおかげなんです。パパから聞いた話では英知の賢王と呼ばれている程凄い方なんですよ」


 いやいや、あの馬鹿で愚かな権力の塊であるクズが七星勇者?

 ありえない! 杖なんて持っている所を見た事が無い。

 何が英知の賢王だ。無知の愚王の間違いだろう。


「リーシアは面白い冗談が言えるな」

「冗談では無いのですが……先程の姿もきっと何かの策略だと思います。国王様がいればメルロマルクは安泰だってママが良く話していました」

「……お前のパパとママはそんなんだから没落貴族なんだよ」

「ふぇええ……」


 話を聞く限り、俺の世界で言う有名な軍師か何かだったんじゃないか?

 馬鹿な行動をしていても、何かの罠だ。迂闊に触れないって感じで深読みされる様な……。

 まさかな。

 これはアレだ。本物は別に居るんだ。

 もしくは既に死んでいてクズはその後釜に座っているとかそんな所だろう。


「ところでそちらにいるきぐるみを着た方が新しく加入した方ですね」

「ああ、樹の所から引き取った」

「経緯は存じております。アイヴィレッド家の方でしたか」


 そんな名前だったのか。

 そういえば没落とはいえ、貴族だったもんな。


「地方の貴族の者なのを覚えております。是非イワタニ様と世界をお救いする使命を全うする事を願っていますよ」

「は、はい」


 と、挨拶染みた会話をした。

 リーシアは照れているのかは知らないが、きぐるみ姿で頷いた。

 というか、良く人間だと気付けたな。


「そういえばリーシア。お前、これからどうする?」

「どうするとは?」

「ああ、樹からは聞いていなかったのか。ラフタリアやフィーロが強い理由に俺の盾の能力があるんだ。お前はそれに該当しないからどうするかと聞いているんだ」


 成長補正という力がある事を俺は説明した。


「そんな力があるのですか? Lvを上げるだけで……強く」

「普通は強くなるんだが、お前は器用貧乏だからな、少しでも加護をつけてやりたいとは思っている」


 リーシアが身を乗り出さんばかりに俺に近づく。


「リーシア、本当に強くなりたいか?」

「はい!」


 強い意気込みを感じる良い返事だ。

 その気持ちに応えるべく、俺はハッキリと言った。


「じゃあ俺の奴隷になれ」

  • ブックマークに追加
ブックマーク登録する場合はログインしてください。
ポイントを入れて作者を応援しましょう!
評価をするにはログインしてください。

感想を書く場合はログインしてください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。