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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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カルミラ島ジンクス・躍進編

 翌日

 カルマーペングーというボスを倒し、ドロップを確認する。

 ……ペングーきぐるみ?

 なんだこれ?

 徐に取り出す。


「な、なんですかこれ?」

「なんか、きぐるみらしい」

「寝巻きですか?」


 サンタ帽のペンギンのきぐるみだ。どこかで見覚えがあるな。

 一応ステータスを確認する。


 ペングーきぐるみ

 防御力アップ 衝撃耐性(小) 水耐性(大) 闇耐性(小) HP回復(弱) 魔力上昇(中)

 自動修復機能 潜水時間増加 サイズ補正 技能補正(小) 種族変更 -魔物装備時、種族変更以外無し


 ぐ……かなりの効果が付いていて、俺の装備している蛮族の鎧+1? に負けず劣らずの性能だ。

 潜水時間増加って……泳ぎ用でもあるのか?


「なんか優秀な装備っぽい。ラフタリアこれを――」

「いやですよ! 幾らなんでもこんなのを着て戦えませんよ!」


 やはりそうだよな。

 俺もそう思う。


「じゃあフィーロ着てみたい」

「どうやって着るんだよ。服嫌いなんじゃなかったのか?」

「なんか面白そう!」


 と、フィーロがペングーきぐるみを持った瞬間、大きくなった!

 え? サイズ補正ってそういう意味? かなり優秀じゃないか!


「フィーロ着るね」


 とか言いながらフィーロはペングーきぐるみを着用した。

 えっと……フィーロの柄がペンギンカラーになってサンタ帽を被ったようにも見える。


「んー……なんか服のごわごわした感じがしないよ?」

「そ、そうなのか?」

「あ、でも何か力が入りづらい」

「じゃあやめとけ」


 多分、種族変更っていう効果が原因だな。着ている間は魔法的効果でフィロリアルじゃ無くなるから、俺の付与が掛からないんだろう。

 魔物が装備すると効果が無いとは……微妙な装備だ。


「えっとね。宿で寝る時に着たいと思ったの」

「まあ、そんな装備だよな」


 寝巻きと評するのが一番の装備だ。


「……ナオフミ様の鎧を私が着て、ナオフミ様がコレを着れば無駄がありません」

「ラフタリア……お前、俺にコレを着ろと?」


 まあ、効果だけ見ると蛮族の鎧よりも上なんだよな。

 ……。

 盾のお陰でこの島の魔物はダメージ受けないが。ラフタリア達の装備が不安だ。


「うー……ん」

「じゃ、じゃあくじでどっちが着るか決めましょうよ。フィーロの話じゃ動きは阻害されないみたいですし」

「わ、分かった」


 なんだろう。効率と見栄えを天秤に掛けた勝負が始まった気がする。


 結果。


「ごしゅじんさまかわいいー」

「くそ! 宿に戻る時は脱ぐからな!」


 こんな姿を他の冒険者に見せられるか! どうもフィーロとは装備時の形状が変わるようだ。

 単純にきぐるみだ。

 とは言いつつ……ラフタリアは俺の鎧を着て、防御力アップを図り、カルマーペングーファミリアとカルマーペングー狩りは問題なく進んだ。

 絶対にこんな姿を他の勇者には見せられない!

 ま、顔も隠れているから盾を見ないと判断できないけど。


「そういえば解体しました?」

「していないな」


 ドロップに意識を集中していてすっかり忘れていた。

 とりあえず倒したカルマーペングーを解体して盾に吸わせる。

 残りの残骸はどうするかな?

 空腹を訴えたフィーロが生で食べてる……目に悪い光景だ。


「あんまり食うなよ」


 火を起こすのが面倒だし、宿に帰れば飯がある分、料理が面倒だ。


「はーい」


 まったく。

 さて、次に湧くまでファミリアを倒して……っとカルマーペングーの死骸に背を向ける。


「ペッ――」


 パク!


「ん? なんか変な声がしなかったか?」

「そうですね。気のせいですか?」

「そう?」


 もごもごとペングーの肉を食べながらフィーロは答える。

 フィーロの方からしたと思うんだが……。


「気のせいか?」


 まあ、カルマーペングーファミリアが近くで鳴いたのだろう。

 そんな感じの声だったし。


「ゲフ」

「フィーロ、程々にして置けよ」

「うん!」


 その日も、問題なくLv上げが出来た。なんとも呆気ない結果に拍子抜けだ。

 今までが今までだったからなぁ。

 だけどここまでサクサク上がると、奴等が未だにゲーム感覚になってしまうのも納得してしまうような気がする。

 そんな日々だ。

 ああ、そう言えばカルマーペングーファミリアシールドとカルマーペングーシールドを戯れに覚醒させてみた。


 カルマーペングーシールド(覚醒) C 0/25

 能力解放済み……装備ボーナス、潜水技能2 水耐性(小) 釣り技能3 能力未解放 ペックルのステータス補正(中)

 専用効果 潜水時間向上

 熟練度 0


 カルマーペングーファミリアシールド(覚醒) 0/10 C

 能力未解放……装備ボーナス、潜水技能1 能力未解放 釣り技能2 ペックルのステータス補正(小)

 熟練度 0


 なんか……解放させると出てくる技能やステータス補正も出てくるっぽい。

 キメラヴァイパーとかはそのまま向上したのに……基準が分からない。

 つーか、ペックルってなんだ!? 絶滅しているんじゃなかったのか?

 そこであのきぐるみを思い出す。

 大方……あのきぐるみを着た時の効果向上か。


「ラフタリア……」

「な、なんですかその目は! 絶対に着ません、着ないったら――」


 俺はくじの入ったコップをラフタリアに差し出す。


「さあ、今日こそ着せてやる」


 フィーロは……うん。フィロリアルに生まれた事を感謝するんだな。

 ちなみに後で知る事なのだが、このきぐるみを着ていると本当に長いこと海に潜っていられるのが判明するのはどうでも良い事か。

 後……何故かきぐるみを大層気に入ったフィーロは補正も無いのに動きがよくなった。

 要するに……ペンギン柄で遊んでいる事があるのだった。



 そうして瞬く間にLv上げの日々は過ぎ、最終日の夕暮れ。

 活性化も沈静に向うのを証明するかのように中心にあった透明な玉は突如消失し、島から噴出していた赤い柱も消えつつあった。

 しばらくの間は活性化の維持効果はあるらしいが……。


「何だかんだで有意義な日々だったな」

「そう……ですね」


 微妙そうな顔のラフタリアが頷く。

 まあ……分からなくも無いか。

 本島で帰りの船を待っている所だが……。

 最終的にこの島でのLvアップの結果だが。


 俺 Lv73

 ラフタリア Lv75

 フィーロ Lv74


 とまあ、完全に島での上限に届かずに終わってしまった。80から入りが悪くなると言っていたが、70前後から緩やかに落ち始めたのを感じていた。


「程々には強くはなったんだぞ? 良いじゃないか」

「うん!」


 フィーロはまだ泳ぎ足りないのか海に浮かびながら頷いた。


「フィーロ、お前には言ってない」

「えー」

「話は戻すが来る前より30も上がっているんだぞ」

「そうなんですけどね……もうちょっと鍛えたかったんですよ」

「しょうがないさ」

「後……魔物が弱すぎて……」

「ああ……まあな」


 Lv70になった頃にはカルマー系のボスが雑魚と化していて、遭遇と同時に瞬殺にまで至ってしまった。

 ラフタリアやフィーロのステータスが目に見えて向上しているから良いのだけど……。

 俺も強化方法を知って、更に防御力やステータスが伸びているしなぁ。

 ちなみにまだ装備ボーナスを解放出来ていない盾が山ほどある。

 この島で効率的にLvをあげることが出来るのはとても良い。だけど、それだけでは単純な強さを得られないのはラフタリアやフィーロも感じているようだ。


 どうも……Lvは魔法的な意味合いも篭っていて、精神的な強さとは別なんだよなぁ。

 不測の事態に対応できるだけの神経を鍛えられないというか。

 これも弊害だな。

 俺の知るネットゲームのイベントとかでLvを急激に上げたプレイヤーにそういうのが山ほど居る。

 実際の腕前とLvが釣り合っていないからヘッポコだったりする。

 そうならないためにも良い頃合だったとは思う。


「おや? 盾の勇者様ではありませんか」

「……お前か」


 詐欺商が俺達の乗る船とは別にある隣の船に乗り込みながら話しかけて来た。

 貨物船か何かなのか荷物を運んでいる乗組員が見える。


「どうだ? そろそろ活性化は終わるが、稼ぎ終わったか?」

「稼ぎ終わる? ご冗談を、あの方と共に私は更なる躍進をするのですよ」

「そうか……」


 何をするつもりだ? どうも嫌な匂いが……。


「内緒ですよ。ジンクスには続きがありましてね」


 詐欺商が説明しだした。

 カルミラ島の鉱石で作られたアクセサリーは経験値アップのお守りだとして全世界に出荷される事になったそうだ。

 噂が噂を呼び、カルミラ島だけ、という制限を外して今や本土の方でも流行の兆しがあるのだと言う。


「引き時は考えた方が良いんじゃないか?」

「何を今更、大丈夫ですよ。ミラカ鉱石製のアクセサリーは飛ぶように売れております」


 ちなみに壊れやすいという特色を生かして、役目を終えると壊れる。次を買おうと言うフレーズまで追加したそうだ。

 なんか……俺は取り返しのつかない事を詐欺商に教えてしまったのではないかと不安になってくる。


「頑張りますよ! それでは盾の勇者様!」


 やがて荷物を積み終わったのか……詐欺商の乗る船は先に出発してしまった。


「まあ……気にしてもしょうがないか」


 俺は考えただけで実行に移したのはあいつ等だし。どうなろうと知ったことではない。


「俺達も船に乗るか」

「そうですね」

「乗るー!」


 そんなこんなで俺達は船に乗り、出発を待った。

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