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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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カルミラ島の日々

 とりあえず……そうして船で移動しているのだが。

 どうもフィーロが泳ぎを完全にマスターしたらしく。ペンギンのように水の中を泳いでいく。


「ごしゅじんさま」


 フィーロは俺に手綱を掴むよう水に浮いて指示する。

 ……どうも嫌な予感がする。


「船渡し、船にちゃんと掴まっていてくれ」

「は?」


 船渡しはその様子を疑問に思いながら櫂を片手に船に座る。

 まあ、何をするのか分かるよな。


「ラフタリアは吐かない様にな」

「船は大丈夫ですって!」


 なら安心だ。

 頷き、手綱を強く揺らす。


「ゴー!」


 フィーロが颯爽と泳ぎ、高速で船が移動していく。


「わ、わ、わああああ!」


 船渡しがおかしな声を上げた。

 まあ、普通に驚くよなぁ。


「異国のドフィ船のようだ!」


 なんだそれ?

 確かドフィってイルカみたいな魔物に付けられた名前だったような。

 なんとなく、どんなのかが想像出来る。

 大量のドフィを引いて、海を横断する船……そんな所だろう。

 こっちはフィーロ1匹で進んでいるのだから効率的だ。

 というか、フィーロは何処へ向っているのだろうか。いろんな意味で……。


「何処の島だ?」

「あちらです」


 船渡しの指差す島を確認して、フィーロは泳ぐ方向を変える。

 適応が早い奴。


「ごしゅじんさまー、また遊ぶ時になったらフィーロに乗って海の底に行こうよーすっごく綺麗なんだよ」

「窒息しそうだな」


 この速度で海を潜ったらどれだけ潜れるか。

 嫌だぞ。異世界に来て海で遊んでいたら溺死したなんて。


「お姉ちゃんってフィーロに負けないくらい長いこと潜れるんだよ」

「そうなのか?」

「え、ええ……潜水は得意なので」


 まあ、泳げなければ波の魔物から逃げる時に両親も海へ突き落とすなんてしないだろうしなぁ。


「なんなら海の幸を後で取って来ましょうか?」

「それも良いが……宿でよく出るだろ」

「……そうですね」


 魚介類に若干飽き気味だったりする。まあ、刺身とかの文化はこの島には無く、ムニエルっぽい料理とかが大半だけど。


「生で食べても大丈夫か?」

「さあ……」

「美味しいの?」

「フィーロに食わせてみるか」


 問題はフィーロが大丈夫でも俺達は大丈夫ではないという可能性だが。


「今度俺の世界の料理を作ってみるか」

「わーい!」

「楽しみにしていますね」

「……東の地とかにもありそうだけどなぁ」


 料理本とかをその内、探しておこうっと。そういえば料理技能もあるみたいだし、盾でも作れるんだよな。

 と、雑談をしているとあっという間に今日の目的地にしている島に付いた。

 まあ、元々見える範囲なので、そこまで時間は必要無いのだけど。


「び、びっくりした」


 船渡しが船から降りても足腰が立たないようで震えている。

 知っている船が凄い速度で目的地に行けば驚くか。

 フィーロの速度もかなりのものだったしな。



 島に到着してから俺達は気楽に狩場へ移動した。

 結果的に言えば魔物1匹単位で経験値が上昇している。もちろんミラカブレスレットを外しての話だ。

 付けるともっと増えた。

 とりあえずはLvが俺よりも低くなっているラフタリアにブレスレットを装備させて進む。


「久しぶりのナオフミ様との魔物退治ですね」

「そういえばそうだな」


 何だかんだで、教皇と戦った後は移動の連続、馬車でカルミラ島へ行く為の港までの道もフィーロが魔物を撥ねていったから戦っている訳じゃない。

 そう思うと久しぶりとも言えなくも無いか。

 というか……逃亡生活は魔物退治というか遭遇した魔物を食料にしていただけだったしなぁ。


「これからカルミラ諸島を出るまでは一緒にLv上げだ。頑張るぞ」

「はい!」

「はーい!」


 そんな雑談を交わしながら俺達は前日よりも人が増えたカルミラ島でLv上げに勤しんだ。

 さすがに島の中心にまで冒険者はあまり立ち寄らないようだ。

 まあ、普通は40が上限らしいからなぁ。選ばれた冒険者じゃないと危険か。

 稀に遭遇することがない訳じゃないけど……。


 ただ……なんていうか、欲が張りすぎて骨と化しているというか……。

 こういう所は弱肉強食なんだなと思わせる。

 一体何人の冒険者がこの島で亡くなっているのだろうか。

 俺達も同類にならない為に突っ込み過ぎないように進む……。


「てい!」

「たあああ!」


 ラフタリアに切られた魔物が一刀両断され、フィーロに蹴られた魔物はミンチみたいになって吹っ飛んだ。

 ……訂正、ラフタリアとフィーロさえ居ればかなり余裕だ。

 しかも強化された俺の前では結構な数の魔物を抱えても大丈夫だったりするから効率が良いこと。

 そうそう、シールドバッシュに関してなのだが。


「シールドバッシュ!」


 唱えると視界に盾で敵を殴れと指示された。だから盾で魔物を殴る。

 イエロービートルにぶつけて見たのだけど……バシンという良い音はした。

 が、どうもダメージは入ってないみたいだ。

 だが……動きが止まった。

 クラクラとしている様で、3秒くらい動きが悪くなった。

 混乱とかスタンという状態異常を相手に与えるスキルのようだ。

 問題は俺がダメージを与えられないという所だが……。


「虫ー」


 ボリボリと貪る音が響く。

 ……動きの停止したイエロービートルはその隙を突かれて哀れにもトドメを刺される前にフィーロに食われた。

 クールタイムは5秒。使いやすくはある。SPもそんなに使わない。

 島の中心部に近づくに連れて魔物のLvも上がり、若干ラフタリア達が苦戦しだす。


「大丈夫か?」

「問題ありません!」

「こんなのへっちゃらー」


 まあ、苦戦と言っても一撃が二撃に変わる程度だけど。

 で、今日はカルマードッグファミリアが居る島だったのだけど、一番奥に来ると、確かに居た。

 丸い球体のような……レンズ状の魔法のようなオブジェクトから全身真っ黒で羽の生えた大きな犬が現れた。

 犬種は……ゴールデンレトリバーっぽい? なんとも不恰好な魔物だ。しかし、凶悪な魔物である事は変わらないだろう。

 名前を確認するとカルマードッグと表示されている。

 これがこの島のボスか。

 カルマードッグファミリアはコイツの使い魔というポジションなのは容易く想像が出来るな。


「ツヴァイト・オーラ!」


 ラフタリアとフィーロに補助魔法を掛けて、カルマードッグに挑む。

 巨大なカルマードッグの牙が俺を噛み切らんと襲い掛かってくる。


「ふん!」


 カルマードッグの閉まろうとする口を腕で掴んで押さえつける。

 ガンと硬い音がし、俺はカルマードッグの動きを停める。


「シールドバッシュ!」


 一発、シールドバッシュをカルマードッグにかます。

 隙ができればラフタリアやフィーロも戦いやすいだろう。

 と、思ったのだけど、状態異常に耐性があるのか、カルマードッグには効果が感じられない。

 一瞬だけ、噛む力が弱まるような気もしなくも無いが立ち直りが早いようだ。

 動きも早いが、俺が押さえつけているお陰もあって、安全に戦えた。

 倒した後の経験値はかなりの物で、今までの遅れを取り戻すには十分だ。


 そんなこんなで島での日々は続いた。

 翌日はカルマースクイレルを倒した。もちろん、ファミリア込みだ。

 この時は前日の夜にチェックしていた盾に内蔵されたスキルで事なきを得た。

 ヘイトリアクションという魔物の敵愾心を俺に向けさせるスキルを覚えたのが幸いだった。

 はじめは狩場で使ったのだけど。


「ヘイトリアクション!」


 何も起こらないので首を傾げる。するとフィーロが何回か瞬きして。


「ごしゅじんさまから何かニガニガした変な感じが周りに飛んでいくよ」


 と、注意された。

 最初は何のことかと思ったのだけど、直ぐに理解した。

 その場に居た魔物が俺目掛けて群がってきたからだ。

 もちろん、冒険者が戦っているのも含めて。


 効果範囲は15メートルくらい。

 さすがに迷惑を掛けたと冒険者に謝りながら魔物を返したのだけど、俺の耐久の高さで盾の勇者とばれた。

 隠しているつもりはないが、ここまで硬い奴は俺くらいなものらしい。

 尚、ヘイトリアクションの効果は一定以上の知能を持つ魔物には効果が無いっぽい。


 同様にカルマーラビットも倒し、盾に吸わせる。

 ああ、結構なレアアイテムも所持していたのはご愛嬌だ。倒してもまた出現するので解体も込みだ。どういう原理で出現しているのだろうか? まるで次元の亀裂から出現しているかのようだ。

 で、オレイカル鉱石とか言う鉱石をドロップする。確認すると、どうも上位の武器とかの強化や精錬に必要な素材らしい。

 だから集めておいた。


 カルマードッグクロウという武器もドロップしたのでフィーロに装備させようかと取り出した。

 ……のだけど、サイズが合わなかった。しばらくカルマードッグと戦っていると、大き目のサイズを落としたので事なきを得たけど。

 どうもサイズもバラバラみたいなんだよなー……どうにかならないものか。


「ごしゅじんさまーこのツメなんか禍々しいよー」

「気にするな。別に呪われているとかじゃないだろ」

「そうだけどー……蹴るとね、黒い飛沫がでて魔物が不味くなるの。前のより敵は柔らかいけどー……」


 うーむ……闇属性とかそういう感じの武器らしいからなぁ。飯にしたい時とかは別の武器にするようにさせるか。


「ラフタリアはどうだ?」


 カルマーラビットの落としたカルマーラビットソードというのをラフタリアに使わせている。


「体がとても軽くなるのですが、どうも癖がありますね」


 ボスドロップの武器を使うとか異世界に来る前の俺だったら興奮するものだけど、どうも扱いは良くないみたいだ。

 武器屋の親父に頼めばカルマーとついたボスの素材で作ってくれそうな武器だけど。

 ま、攻撃力は期待できるから良いか。

 ブラッドクリーンコーティングは掛かっていないのであまり長いこと使えないのが短所と言えば短所だ。

 宿に泊まっている時に砥石の盾にすれば良いが、今は大量にある未解放の盾があるからな。そっちを優先しよう。

 コーティングも親父に頼めば掛けてくれそうだが……どちらにしろ次の波に備えて顔を出す必要がある。


 どちらにしても順調過ぎて拍子抜けだ。

 Lvもどんどん上がってきて、若干危機感が募る。


 一応、盾は常時解放させているが、まだ見ぬ魔物の盾を集めないと何か不備が起こって対処ができなくなってしまうのではないかという不安がある。

 注意深くしなくてはいけないが……。

 まあ、次の波を超えた時にでも知らない魔物が生息する地域へと出れば良いか……?

 女王が資金援助してくれるだろうし、金にはそこまで困らない。


 とにかく、ラフタリアやフィーロを含め、自己強化をしておかないとな。

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