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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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勇者会議【中】

「次に仲間からの指摘、問題点をそれぞれの勇者殿に伝えるでごじゃる」

「既に俺の所はラフタリアがしたな。元康はナンパ、錬は後輩育成プレイでの連携不和、樹はマッチポンプと嘘だ」


 なんていうか、俺には不要な所だけど、他の勇者の仲間からの指摘が気になる。


「じゃあ俺の所からだな」


 元康が手を上げて言い放つ。


「俺の仲間からの意見だと、錬は冷たい、樹は地味、尚文は論外だそうだ」


 こらまた淡白な……。


「錬、クールなのは良いけど、もっと人と仲良くするのを意識した方が良い。樹はもう少し勇者として前に出るべきだぞ。尚文……お前は――」

「後ろから俺に向けて魔法を放とうとする奴の意見じゃな」

「それは拙者も確認しているでごじゃる。ビッチ元姫は盾の勇者殿を目の敵にしているので、発言の意味は無いでごじゃる」

「……分かった」


 軽く流して、元康の仲間からの指摘は終了。


「次は俺か」


 錬が手を上げて話し出す。


「俺の仲間の意見だと元康、お前は何の為に戦っているんだ? ナンパが酷かったと聞いたぞ。次に樹、お前は地味。尚文は問題なかったそうだ」

「なんで尚文さんは何も無いのですか!」


 なんだよその言い方。まるで俺が何処でも問題を起こす奴みたいじゃないか。

 ……起こしているが。


「いや、あいつ等が尚文の戦い方を見て、盾の勇者様は頼りになると言ったんだ。俺の意見じゃない」

「つーか。地味って……お前さ、手抜きするのも大概にしておけよ」


 元康と錬にまで言われてるという事は日常的に手を抜いているのがバレたな。


「違いますよ! 僕は目立ちすぎないように配慮して――」

「配慮して仲間のピンチを待っていたんだな? ラフタリアが怒った理由の一つだ」

「そりゃあ酷い。ドラマの演出をしていたらラフタリアちゃんが怒るのも頷ける」


 元康が便乗して樹を指摘する。

 お前も似た様な物だがな。


「だから違いますって言ってるじゃないですか」

「だが、嘘は吐いたな」

「ああ……みたいだな」

「いい加減にしてください!」


 樹が半分キレ気味に中断させる。

 自業自得とはいえ、ぼろくそ言われてたからな。


「さて、じゃあ樹、最後はお前の番だ」

「僕ですね。元康さんは何の為に戦っているのですか? 僕の所の女性もナンパされましたよ。錬さん。アナタはなんです? ここで戦っていろと立ち去ったって……尚文さんはワガママが酷かったと聞いてます」

「自分達=正義としか思っていない連中だったからな。狩場のマナーも悪かった。影も調査済みだろ?」

「そうでごじゃるな。弓の勇者殿の仲間達は些か自己主張が激しかったでごじゃる。他冒険者に恐喝、強引に魔物を占有、等問題行動が多かったでごじゃる」

「そういえば、お前はネット用語で釣りや引き寄せをしていたんだったな。注意しろよ」


 錬が便乗して注意する。

 ああ、錬の時もしていたのか。


「なんですかそれは?」

「誰かが戦おうとしている魔物を横取りする行為、ネットゲームじゃマナー違反だ」


 元康も説明する。


「物にも依るけどな。だけどこの島の案内の時には注意されていた行いに限りなく近い……言われなかったから大丈夫じゃ、要らぬ騒ぎを起こすからやめとけ。正直、お前の正当性が損なわれる」


 俺が補足して置く。

 自分以外の勇者に指摘されたら樹も引き下がるしか無い。


「ぐ……分かりました」

「勇者を見て仲間も育つ、樹のその行いを見て過激になったんだろ」

「で、親身に注意した尚文をワガママと……最悪だな」


 樹が自分の番なのにボコボコにされている。

 ま、自業自得だけどな。


「そ、それを言ったら元康さん。アナタはなんですか! どれもナンパじゃないですか!」

「俺も思った。お前は女しかないのか? 女湯を覗くとかマンガじゃないんだぞ!」


 樹も錬も元康を憤慨するが……覗きの時は、止めなかったお前等も悪いんじゃないか?


「いやぁ。やっぱ男は女の子を追ってこそじゃないの? 俺は後悔しないぜ」

「……そこまで来ると賞賛の気持ちが出てくるな」


 ある意味すげえよ。

 本気でハーレム作りたいって意志が伝わってきて負けた気持ちになってくる。


「……不毛ですね。やめましょう」


 元康の爽やかな笑顔に俺達は冷静になって問題の指摘をやめようと決めた。

 言っても無駄だと理解したからだ。


「ではこれから本題の勇者同士による情報交換を始めるでごじゃるよ」


 影がそう進行するのだが……途端に全員黙り込む。

 秘匿癖もここに極まれりだな。


「……尚文さん。まずはアナタから話したらどうですか?」

「どうして俺が……俺はお前等のような予備知識無しでこの世界に来たんだぞ?」

「ですが、言ってはなんですがアナタの仲間はLvにしては不自然に強すぎます。アナタの持っているあの禍々しい盾に関してもです」

「そうだな、まずはその話を聞きたいな。ラフタリアって子は元より、フィーロという魔物も不自然なくらい強い」

「ああ。ラフタリアちゃんもフィーロちゃんも何か凄く頼りになる強さだった」


 ……コイツ等の目的はそれか。

 という事は、奴等にとってラフタリア達の成長とカースシリーズは知識に無いと言う事になる。

 これを簡単に話したら終わりだな。


「それを話すにしても、お前等は情報の対価を支払えるのか?」

「何?」


 これだけの材料と認識があれば幾らでも相手を交渉の場に引き釣り出せる。

 秘匿癖から教えなかった情報を洗いざらい吐かせるとするか。


「だってそうだろ? お前等は盾が弱職だからと切り捨てて俺に何も教えなかった。となれば俺が強さの秘密を教えても、自分達のは言わないかもしれない。必要な事は……分かるよな?」

「別に教えていないわけでは……」

「ヘルプを見ろ」

「まあ……確かに詳しく話しては居なかったよな」


 気不味そうに各々が答える。


「どっちにしても何も教えなかっただろ? 今ヘルプを見ろと言った自称クール。効率の良い狩場もヘルプに載っているのかな?」


 お前等は俺から情報を引き出すために顔色を窺わねばならない。なのにそんな態度では聞ける話も聞けないぞ。

 お互い様なのは事実だが、交渉するには場の空気を支配する必要がある。

 今、この場は俺から情報を聞くには、自分も話さなければならないという空気が出来つつある。

 後一押しする要素を追加すれば、行けるか?


「ああ、ちなみに影は強さの秘密を掴みきれて居ないから無理だぞ」

「そうでごじゃる。拙者等は勇者殿がそれぞれどのような手段で強くしているのかは全貌は掴みきれて居ないでごじゃる」

「お前等の秘匿癖と同じで俺も隠しているんだ。腹を割って話す時が来たんだよ」

「チッ!」


 忌々しそうに錬が舌打ちをする。


「後、お前等さ……波で一回負けている事を覚悟しろよ。下手をしたら死んでたんだぞ」

「何を言っているんですか。あれはイベント戦闘ですよ。絶対に負けるんです」

「は?」

「いや、俺達勇者とその仲間は負けたら治療院に運ばれるだけで済むんだよ。死にはしない。そういう加護があるんだ」

「その証拠に教皇の不意打ちを受けた時も僕達を治療院に運んでくれました」


 何を言っているんだ?

 コイツ等、頭大丈夫か?


「あれは拙者等が救助したんでごじゃるが……なんの事を言っているでごじゃる? 盾の勇者殿の言葉も時々わからない事があるでごじゃるが、これはどういう事でごじゃるか?」


 影が珍しく困惑した声を出している。

 俺も同意見だ。

 コイツ等、今『自分達は不死身だ。何があっても死なない』と公言した様な物だぞ。


「一応、俺がお前等の倒せなかった奴を倒したのだが……」

「「「弱職のお前(尚文さん)が倒せる訳無いだろ」」」


 ……何を言っているんだコイツ等。

 負けても治療院で復活? ゲーム感覚なのか? イベント戦闘とか本気で言っている?

 だから、負けたのに、切羽詰っていないんだ。

 弱職と罵られたのにまるで怒りが湧いてこない。

 こ、これは……。


「そんなのはどうでも良いから話を続けようぜ」


 どうでも良くはないだろ……まだゲーム感覚なのかコイツ等。

 やばい。何か非常にヤバイ。ここは早急に意識改革をするべきだ。


「お前等、ここはゲームじゃないんだぞ? 死んだら戻ってこれる訳ないだろ!」

「ですから、僕達には加護があるんですよ」

「ああ」

「そうだぜ」


 ダメだ……話が通じない……。

 俺は今、この世界に来てから起こった問題の中でも1、2を争う程の危機感を抱いていた。

 とはいえ、注意しても無駄なら、適当に話を合わせるしかない。

 コイツ等が死んでも大丈夫な様に自分を鍛えないとな……。


「はぁ……復習を兼ねて一から、ヘルプにも載っている物から説明して行こう」

「……しょうがないな」

「ええ、勇者同士で足を引っ張り合うのもなんです」

「ま、結果は変わらないか」


 半ば諦めたかのように答える連中。

 とりあえず、俺も強くなる方法を聞かないと始まらない。

 コイツ等の所為で濁されたが、俺のペースに戻すとしよう。


「ああ、嘘を吐く奴がいるからそいつが最初に情報を出し合うとしよう。嘘を吐いたらお前等も分かるし。まさか帳尻を合わせて嘘に同調するなんて事を、世界を救う正義の勇者がするはずないよな、樹」

「う、嘘なんて吐きませんよ!」

「どうだかな。嘘吐きはカッコ悪いよな、錬」

「あ、ああ」

「嘘吐きは女に嫌われるもんな、元康」

「そ、そうだな」


 こんなものか? 嘘を封じさせて話を引き出す前提を構築するのは。

 俺の中では錬はかっこ悪い事を嫌う。元康は女に良く見てもらう。樹は正義、まあ自分勝手と書いて正義だろうけど、面と向って嘘=悪の図式の存在するこの場では嘘を吐きにくい状況だ。

 ここを指摘すれば、偽りの情報を話しはしないだろう。


「じゃあ樹、お前からだぞ、初歩の初歩からで良いから話せ」

「な、なんで尚文さんが進行しているのですか?」


 不快そうに眉を寄せた樹だったが、俺達に顔を向けて話し出した。


「勇者の武器はツリーによって新しく解放されていきます」

「そうだな」

「僕のしていたディメンションウェーブというゲームでも近いシステムでしたが、その幅や変化は大きいですね」

「ん? 完全に同じじゃないのか?」

「ええ、殆ど同じですが、知らない武器も多くあります」


 そうなると完全に武器の情報を知っている訳ではないのか。

 確かに解放される能力を知っていれば、奴隷や魔物系の盾の効果を知らないはずがないんだよな。


「後は、1度変化させても前の武器が残っているという所が相違点ですかね」


 他の勇者も頷く。

 一応、違う部分もあるのか……。

 どうにも引っかかるな。


「次は俺か」


 錬が手を上げて話す。


「じゃあ樹の話の続きだ。解放するにはそれぞれ魔物や素材を吸わせると開き、装備することによって装備ボーナスを獲得できる」


 これも確かな情報だな。俺もずっとやってきている作業だ。


「ま、この装備ボーナスの制度が俺のやっていたブレイブスターオンラインと少し違うが」

「違うのか?」

「ああ、スキルの習得はスキルポイントと熟練度だった。装備しておくことで何時でも使える様になる訳じゃない」


 まあ、確かにここは違う点なのも頷けなくも無いか。

 俺がやっていたゲームでもスキルポイントがあって、それを振り分けてオリジナリティある自分のキャラクターを作成できたし。

 なんていうか、この盾はツリーと解放さえ出来れば全てのスキルを習得できるのでは無いかと思う時はある。

 しかし……ここまで相違点があるのに、コイツ等は同じゲームだと思っているのか。


「そうですよね。間違っていません」

「ああ」

「でも、全てのスキルが習得できるという事こそ、俺達は勇者なのだろう」


 ……ああ、なるほど。普通の冒険者は限られたスキルで習得するとか変換しているのか。自分達は伝説の武器の力でチートを得たと。


「次は俺だな、武器は同じ系統の武器を持つことでコピーできる。ウェポンコピーシステムがあるよな」

「は?」

「ええ、これは大きな相違点でしたが、タダで強い武器が手に入って助かりました」

「ああ、俺達は勇者だ。こういう事もある」

「みんな分かってると思うけど傭兵の国ゼルトブルの首都にある武器屋の品揃えが良い」


 元康の言葉に、さも当然の様に頷いている二人。


「なんだそれは!?」

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