新型肺炎「ウイルスはコウモリ由来」中国では食文化も
中国全土で感染拡大を続ける新型肺炎について、武漢市の医療チームは30日、新型コロナウイルスは、同じコロナウイルスであるSARS(重症急性呼吸器症候群)と同様に、コウモリが宿主の可能性が高いと発表した。最初に多数の患者が発生した華南海鮮市場で取引されていた動物は、コウモリのウイルスを媒介する中間宿主だとみられている。
30日に国際的な医学誌『ランセット』に掲載された論文によると、武漢市金銀潭医院や山東大学などの医療チームは、武漢市の9人の患者から採取したウイルスの遺伝子を解析。このうち8人は華南海鮮市場を訪れており、残る1人は市場を訪問したことはないが、発症前に近くのホテルに滞在していたという。
ウイルスの遺伝子配列はほぼ同一
医療チームは、9人すべてから10個のウイルス遺伝子サンプルを取り出すことに成功。遺伝子配列を分析した結果、99.98%以上の確率で同じだったことから、新型コロナウイルスが非常に短い期間で同一の宿主から発生し、突然変異しない状態で感染が拡大したことを意味しているという。
さらに新型ウイルスの遺伝子配列を既存のウイルスと比較した結果、コウモリに由来するふたつのSARSウイルスとの共通点が88%と高いことがわかった。これは、ヒトに感染したSARSコロナウイルスや、MERS(中東呼吸器症候群)コロナウイルスよりも割合が高いという。
ヒトの細胞に侵入するメカニズムも酷似?
ウイルス粒子の表面にあるスパイクと呼ばれるトゲ状のタンパク質を調べたところ、ヒトに感染したSARSウイルスとよく似た構造を持っていることから、ヒトの細胞に侵入する方法も似ている可能性があると指摘している。
新型コロナウイルスをめぐっては、北京大学の別の研究チームが、タイワンアマガサとタイワンコブラという2種類の毒ヘビが宿主である可能性が高いという論文を報告している。
研究チームは、コウモリが冬眠中の12月に新型肺炎が発生した時期に着目し、ウイルスの自然宿主であるコウモリを食べた別の野生動物が中間宿主としてウイルスを媒介し、華南海鮮市場を訪れた人に感染させた可能性が高いと推測している。
コウモリは縁起がいいから食べる?
2002年から2003年にかけて中国・広東省で始まり、アジアやカナダで感染が拡大したSARSも、当初はハクビシンが感染源として疑われていたが、今ではキクガシラコウモリが自然宿主であると判明。
欧米ではドラキュラの化身として嫌われることの多いコウモリだが、漢字で「蝙蝠」と書く中国では、「福に変わる」という「変福」と発音がよく似ているため、縁起がいい動物だと考えられている。また、コウモリが逆さに下がるようすから「脳が重い」として、陰干しにして粉末に飲むと良いとして、スープなどにして調理する文化もある。