感染症

新型コロナだけじゃない!「コウモリ由来のウイルス」なぜ怖いのか?

 世界各地で流行が続く新型コロナウイルスは、SARS(重症急性呼吸器症候群)と同様に、コウモリが感染していたウイルスが原因だと考えられている。米カリフォルニア大学の研究グループが、培養したコウモリの細胞を使ってウイルス感染時の免疫反応を調べた結果、素早く増殖し、感染力を高めることを発見した。

 

 新型コロナウイルスについては、未知の部分も多いが、これまでの研究で、コウモリに由来するSARSウイルスとの共通点が88%と非常に高いことがわかっている。

新型コロナウイルス以外にも…

 コウモリが感染していたウイルスが原因となった病気は、2014年〜2016年にかけて西アフリカで猛威を奮ったエボラ出血熱や、1967年にアフリカから輸入したミドリザルの解剖を行ったドイツの研究者が感染したマールブルグ病など複数あるが、なぜコウモリ由来のウイルスは感染力が高く、毒性が強いのか?

 

 この疑問に挑んだカリフォルニア大学バークレー校のカーラ・ブルック研究員らのグループは、黒オオコウモリとエジプトフルーツコウモリの細胞を培養して、ウイルスに感染したときの免疫反応について調べた。

 

 その結果、コウモリの免疫反応は非常に強く、感染しても症状が出ないことがわかった。というのも、コウモリの免疫細胞はウイルスが侵入するとインターフェロンという物質を素早く分泌して、他の細胞がウイルスに感染しないよう遮断する防御力(抗炎症作用)があることが確認された。

 強い抗ウイルス防御システムがある一方で、コウモリの細胞内でウイルスが死滅するわけではないため、宿主のコウモリから別の動物にウイルスが感染すると、高い病原性と感染性を発揮し、致死率が高くなるという。

 

 研究グループは「唯一の空飛ぶ哺乳類であるコウモリは、体のサイズが同じくらいのネズミなどのげっ歯類と比べると、エネルギー代謝率が2倍近く高い反面、細胞の老化や炎症の原因となる活性酸素を抑える生理的メカニズムがあると考えられます」と指摘したうえで、同じくらい体が小さなネズミの寿命が2年程度であるのに対して、一部のコウモリは40年近く長生きすることを挙げている。

 

 そしてコウモリ由来のウイルスは、SARSではジャコウネコ、MERSではヒトコブラクダ、マールブルグ病ではミドリザル、エボラ出血熱でゴリラやチンパンジー、ニパウイルスではブタを介して人間に到達したときには、感染力と病原性を伴って進化した可能性があると推測している。

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