4月。新しく6年2組の担任になった新米教師・星先生(妻夫木聡)が、教室に子ブタを連れて現れた。彼は食育をテーマに、子ブタを学校で育てて自分たちで食べる、という実験的な授業を計画。毎日食べ物をいただけることのありがたさと、生き物の命の大切さを、身体で子供たちに学ばせようという狙いだ。仁科教頭(大杉漣)をはじめ、同僚の教師たちは困惑気味だが、高原校長(原田美枝子)の後押しもあり、1年を通した「命の授業」が幕を開けた。
6年2組の教室では、初めて子ブタを目にした子供たちが大興奮。「最終的に食べる」という星先生の言葉はそっちのけで、彼らは子ブタに「Pちゃん」と命名。校庭の隅に勝手にPちゃんの小屋を作ってしまった。転入してきたばかりでクラスに馴染めていない花(甘利はるな)も、初めて触る子ブタのぬくもりに思わずニッコリ。子ブタの世話を通して、花は少しずつクラスのみんなと打ち解けるようになる。
毎日のエサやり、フンの始末、小屋の掃除、ブラッシング。Pちゃんが脱走するたびに各所に謝って回ったり、洋服にフンの匂いがついてイヤな顔をされたり。Pちゃんの世話は楽しいことばかりではなかったが、楽しみながら一生懸命働く6年2組の生徒たち。Pちゃんが風邪をひけば本気で心配し、夏休みの間は交代でPちゃんの世話をするために学校へ。そして台風が来た日には一丸となってPちゃんを守るために奔走するなど、Pちゃんを中心に全員が強い絆で結ばれていく6年2組。PTAの中にはこの授業の必要性を疑問視する声もあったが、一方では子供の好き嫌いがなくなったと評価する声もあり、星先生の努力も少しずつだが実を結びはじめていた。そして、秋が来るころには6年2組の生徒と星先生にとって、Pちゃんはかけがえのないクラスの一員として成長していった。
教室の壁に飾られた絵がPちゃんだらけになるほど、生徒たちの"6年生の思い出"のすべてのシーンを彩ってきたPちゃん。しかしある日、彼らは思い出してしまったのだ。1年経ったらPちゃんを食べるという星先生との約束を。そうはさせまいと、花は学校からPちゃんを連れ出して自分の手で育てようとするが、クラスメイトに見つかってしまう。「本当にPちゃんを食べるの?」。花の心からの訴えを聞いた星先生は、生徒たちとPちゃんをどうするか、真剣に話し合うことにする。
Pちゃんを食べる、食べない。星先生の問いかけは、クラスを二分した大討論会に発展。可哀そうだから食べたくない派の生徒たちと、可愛いからこそ責任をもって最期を見届けるべき派の生徒たち。"人間は食べなければ生きていけない"という大前提はクラス全員が理解している事実だ。でも他の豚肉と同じようにPちゃんを食べてしまっていいのか。食べないとしたら、自分たちが卒業した後、Pちゃんの世話は誰がみるのか。世話ができないからといって、自分たちの卒業の日をPちゃんの命の終わりの日と決めてしまうことが果たして許されるのか。全員がPちゃんを大切に思う気持ちは同じだからこそ、何度も何度もその議論は繰り返され、結論が出ないまま時間だけが過ぎていった。
卒業の日は刻一刻と近づいてくる。生徒たちのそれぞれの家庭でも、「Pちゃんを食べる・食べない」をめぐって正解のない話し合いが繰り広げられていた。生徒たちの熱い思いに、星先生が年度初めに立てた「授業計画」も少しずつ揺らぎ始める。果たして生徒たちは自分たちの思いにどう決着をつけるのか? そして星先生がたどりついた「答え」とは…?