東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

米中とコロナ 国際支援の先頭に立て

 新型コロナウイルス対応で非難合戦を続けてきた米中がやっと協力姿勢に転じた。世界的な感染拡大に歯止めをかけるのが焦眉の急だ。救える命を増やすため国際的な支援の先頭に立ってほしい。

 米ニューヨーク州のクオモ知事は四日の記者会見で「われわれに大きな変化をもたらす」と、人工呼吸器千台を寄贈した中国電子商取引大手のアリババグループなどに、率直に謝意を表明した。

 同州の感染者は米国の約四割を占め、医療現場は限界に近づいていた。知事は三万~四万台が必要と危機感をあらわにしていたが国内調達は困難だった。十分ではないが支援は助けになった。

 米国のトランプ大統領と中国の習近平国家主席の三月末の電話会談が、米中連携の動きを加速する重要な転機となったといえる。

 会談で両首脳は、新型コロナウイルスを打ち負かし、国際的な公衆衛生と繁栄の回復に向け連携することで一致したという。

 その後、中国政府は百二十カ国に医療用マスクや防護服などを援助したと強調。米国は「武漢ウイルス」と公言し中国を非難していたが、トランプ氏は会談後に「中国に敬意を払っている」とツイッターに投稿し、支援での協力姿勢を明確にした。

 両首脳の「合意」が口先だけのパフォーマンスとならず、具体的な国際、相互支援として実を結びつつあることは歓迎したい。

 米国の変化の背景には、自国の感染者数が世界最悪になったという危機感が横たわる。米国は中国を強烈に批判してきたが、国内ではトランプ氏が「ワクチンはすぐできる」などと根拠のない楽観論をふりまき感染を深刻化させた。

 一方、中国側には、世界に感染を広めたという米国発の中国批判を弱めたい思惑がある。

 その意味では、コロナ対策に限った米中連携であり、両国の覇権争いの構造は変わらないだろう。

 現に、中国紙・環球時報は首脳会談後にも「新型コロナが米国の世紀を終わらせた」と批判するコラムを掲載した。一方、トランプ氏は四月初めの会見で「国内で必要とする以上の人工呼吸器を製造し、イタリアなど世界に配る」と表明し、中国の「マスク外交」への対抗心を見せた。

 だが、今は世界的な危機である。双方とも自国優先で無用な対立を招くふるまいをすべきではない。米中は何よりも、疫病と人類の闘いで連携して国際社会を引っ張ってほしい。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報